アイカツオンパレード! 22 話『全員集合!オンパレード!』感想

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

アイカツオンパレード! 22 話。いいお話だったと思います。面白かったです。

らきちゃんの転がし方、美月さんやあかりちゃんの使い方、タイトルやタイトルコールの回収 etc...
色んな要素を 20 分の中で破綻しない様に詰めて、その上で質も高くて、本当にいいお話でした。
アイカツ!』を知り尽くしている大知さんだからこそ成し得た脚本だったと思います。

なんだけども。
アイカツオンパレード!』という一本の作品で観た場合、どうしてもひっかかってしまって。ドラマの作り方、その為の準備として、ここ数話は果たして虚無っていてよかったのか と改めて疑問に思いました。

 

 

 

いいお話を作る為には、いいエピソードとそれを支える描写が必要である。
いいエピソードには一部例外を除いて(※)ある程度の起伏が必要であり、その起伏にこそドラマが生まれる。
※『アイカツ!』 24 話『エンジョイ♪オフタイム』
※『フレンズ!』 12 話『トマト、どーんとコイ☆』など

その起伏の描き方は様々であり、初めてやる分野のお仕事(芝居やバラエティ等)に対する戸惑いや適応であったり、自身のキャラクターを揺さぶる出来事であったり、ドレスが届かなかったり、或いはオーディションやライブに望む過程で何かあったり といった具合だ。

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ただこれは一話単位で観た場合の話であり、1 年毎・1 シーズン毎に観た場合は話が違ってくる。その場合、一年通しての物語が平坦にならないよう起伏を起こす役割を担ってきたのが、神崎美月や "あの力" 、エルザ フォルテ、ブリザードなどだ。これらの人物や現象を中心として、だいたいクール単位で何かしらのイベントが起き、それに向けて物語全体が動いて行く というのが『ジュエル』までの『アイカツ!シリーズ』作品の基本構造だった。

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さて、『オンパレード!』に於いてはこれまでも書いてきたとおり、"オールスター" "姫石らきの物語" "なんちゃって SF" が作品の主たる三要素となっていた。この中で "オールスター" はエピソードに付随するものではなく、その場その場の描写やセッティングに関わるものである。また "なんちゃって SF" に関しても、世界線の移動や統合そのものがメインに据えられることはなく、基本的にエピソードを転がす為の舞台設定装置として使われてきた感じだ。ということで、何だかんだいってもやはり『オンパレード!』の中心にあったのは、 "姫石らきの物語" に関連するエピソードなんだと思う。

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では、この "姫石らきの物語" に於ける起伏や、或いはそれを起こしてきたものは何かって話だ。一つの候補として、先述の "なんちゃって SF" ≒ 姫石さあや にはその雰囲気があった。しかし、20 話を過ぎた現時点でかつてのブリザードや "力" のように正面から向き合うような展開にはなっていない為、やっぱり "なんちゃって SF" は(アイカツシステムのような)便利な道具の枠を出てない気がする。

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じゃあ何が起伏を起こしてきたかって話だが、そこはやはり「ドレスデザイン」ということになるんだろう。「自分だけの PR ドレスをデザインする為」に色んな世界で色んなアイドルのドレスを観てきて、ツバサに叱られ、いちごに導かれ、エルザの逆鱗に触れ、アリシアと PP に背中を押されたのだ。そしてその過程を経る中で、周りのアイドルに感謝の気持ちを伝えたいと思ったし、ファンを笑顔にするアイドルの力を目の当たりにし、自分もそうなりたいと思ったわけだ。

とはいえリルリボンストーリーを完成させた今、物語は「デザイン」から大分離れたところまで進んできてしまったし、そちらの文脈から波乱を起こすことは中々難しい。反面、「アイドル」と物語の距離は縮まっており、こちらの方向に沿った形であればエピソードを作りやすいし、実際に今回もそうであった。

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今回のドラマの起点となったのは、観ての通り美月さんである。上述の通り物語全体が「アイドル」の文脈に寄ってる現状を考えれば、『アイカツ!シリーズ』の原点ともいえ、アイドル of the アイドル である彼女にその役割を担わせることは正しい采配だと思う。思うんだけど、なんか事ここに至って未だ美月依存から抜け出せないのか……という思いも出てきてしまった。これはもう完全にただの視聴者である私個人の思いであり、制作陣や作品には全く関係ないことではあるんだが、そういう役目から解放してあげる為の 100 話やいちごまつりだったと思っているので、そこに引き戻されてしまうと胸が辛くなってしまう。

 

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改めてお話全体を見渡してみると、今回のお話は本当によく出来ていると実感する。
作品タイトルやタイトルコールの回収は鮮やかだったし、SL・四ツ星・SH に焦点を当てるという今後のガイドラインも示した。恐らくそれぞれ 1 話ずつ割いていって、25 話でおしまい という構成なんだろう。ここで注目すべきは、分けられてるのが学園単位 = 作品単位 であり、世代単位ではないという点だ。即ちいちごちゃんとあかりちゃんで 2 話使うことができず、SL という括りを 1 話で捌かなければならないということだ。そこで、いちごでもあかりでもなく美月に白羽の矢を立てるというのは、やっぱり上手いと思う。

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『1st-2nd シーズン』でもなく『あかり GENERATION』でもなく、『アイカツ!』全体を描くのであれば、逆説的にいちご・あかりどちらかに肩入れすることはできない。美月さんは放っておくといちごちゃんを求めて深夜徘徊しちゃうわけだけど、今回そのライン(美月 - いちご)を描かず、らきちゃんのお叱り係に終始させたのはそういうことだろう。また Soleil・Tristar・ぽわプリの 3 ユニットを描いたことで傾きかけた重心を、ラストのあかりちゃんで一気に引き戻すのも同じ狙いだ。そのままマスカレードまで巻き込んで描くことで、『アイカツ!』を何とか 20 分で表現できたのは、やっぱり脚本 大知慶一郎だからこそ成し得た技だろう。

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細かな引用も、また上手い。手作りステージはブートキャンプを思わせるし、最後のあかりちゃんの表情は、173 話で WM の復活を目にした時のいちごちゃんの表情そのものだ。無闇矢鱈と引っ張ってくるのではなく、コア部分のみを的確に引っ張れるからこそ、最後の『SHINING LINE*』を綺麗に響かせる引用となっている。

 

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だからこそ、今までのお話との大きすぎるギャップを感じてしまう。
この一話で本当にぐぐぐっと物語全体が進んだわけだが、なんというか、もう少し上手くペース配分出来なかったんだろうかと思ってしまう。らきちゃんの調子こきムーブからお叱りを食らうっていう流れは、ツバサっちやエルザ様にやられた時と同じ展開なので、まぁそれ自体は一つの形としてありだと思う。なんだけど、そこまでの持って行き方は前例 2 つと比べるとかなり急で雑に感じた。

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ツバサっちの時はそれまでの世界線移動のお話全体を受けての流れだったし、エルザ様の時はいちごちゃんや天羽さんとのお話を受けての流れだった。それを踏まえると今回のは、様々な虚無フェスを受けての展開ということになるんだろう。だけど、世界線移動の時は乱入ムーブを、パクリデザインの時はデザイン画を描く様子をずっと繰り返し描写してきたのに対し、今回の "イベント開催" に関しては「いつかやりたい」→「きっとできる」という心理だけが描かれ、イベントの運営や企画に触れた描写は虚無フェス中にはなかった。 

彼女らが作中のファンの事を考え、ファンに喜んでもらう為に一生懸命やっているということは真実だったと思う。そう感じられるだけの描写・エピソードだった。

アイカツオンパレード! 15 話『ぽわ☆フワ♪ドリーミン』感想 - アニメ雑感記

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唯一の例外がサンメガミ回だろう。"ファン" を意識した描写は随所に観られて、ぽわプリ / フワドリ の分離式で文脈をしっかり引っ張った所から、お祭り要素をサンメガミで確保する所まで、全体がしっかり練られていた構成だったと思う。バレンタイン・ロコドル・運動会 と同じ様なイベント回を繰り返すのなら、その過程でイベントの企画や運営についてらきちゃんが色々学んで行く様子を、サンメガミ回の時のように入れられなかったのかと思ってしまう。そういうのがなく、ただひたすらにお祭りに注力してきた結果のしわ寄せが、今回の美月さんと大知さん(と前回のペンネと野村さん)に来てしまったとしか思えなかった。

今回が本当にいいお話だっただけに、今までの虚無が本当に惜しく感じてしまう。

 

 

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ステージは『カレンダーガール』『Take Me Higher』『ダイヤモンドハッピー』の 3 曲。
『カレンダーガール』は 178 話から、『Take Me Higher』は 150 話から持ってきていて、『ダイヤモンドハッピー』は いちご + PP の 3 人による新規コラボステージだ。
選曲そのものはいちご世代に寄っており、演者も半分がいちご世代。『カレンダーガール』の代わりに 152 話の『LPC(6 人 ver.)』とか出来ればよかったんだろうけど、あかりちゃんが中期の髪型だったもんな。

残りはかえでちゃん。やっぱり『放課後ポニーテール』が一番ありそうかな?

アイカツオンパレード! 21 話『走れ!アイカツ!大運動フェス!』感想 - アニメ雑感記

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 『Take Me Higher』は被り許容で入れてきた。名誉ぽわプリはシチュエーションを作るのが難しかったか……そうじゃなくても隙のない構成だっただけに、入れるのが難しいというのもあるか。

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そして久々の新規ステージ & コラボステージ『ダイヤモンドハッピー』。
『正義のキモチ』の時もそうだったけど、PP は 2 人いるから後ろに置いておく分には使い勝手が良さそう。PP と他主人公との共演でいうと、残りはらきちゃんとあかりちゃん。らきちゃんとは OP で共演してると考えると残りはあかりちゃんだが、SL が今回で締めと考えると望み薄そう(最後に全主人公でやるだろうが)。

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新規ステージに関してはどうしてもエフェクト量を観てしまうんだけど、まぁそれなりに自重していたなという印象(『ジュエル』でぶっ壊された基準)。頭サビは盛り盛りの盛り盛りで「流石にうるさすぎるやろ……」と思ったが、A メロ始まって以降は振りエフェクトは(ワンポイントの物を除いて)なくなっていて、それはよかった。サビで復活するかな?と警戒したけど、意外にもサビ以降も復活せず、我慢が効いていました。

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その反動ってわけじゃないだろうが、オーラエフェクトはビカビカのキラキラ。個人的にはもうちょい間引いて、ジュエル系の輝きも抑えた方がもっとダイハピっぽさが出たと思う。

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カメラワークは従来のものを踏襲した部分あり、新しく変えた部分もあり。ただ個人的には新しいカメラワークには余り惹かれなかったなぁ。どうしても 151 話の緩急の効いたやつが好きだったというのがあるので。1 人 1 人をガンガン寄って撮りながら、パンしまくり・トラックしまくりで、引きで撮る時は徹底的に引いてダイナミックに会場を見せて……みたいなの。まぁ 151 話の会場と今回の会場は大きく違うわけだし、そういうダイナミックな引き絵が使いづらいという制約はあったわけだけど。

追記 20/03/10

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こういうアングルの切り取り方・こういうショットを入れるタイミング・ショットサイズでの緩急の付け方 等が抜群に上手いのが 151 話 ver. の『ダイヤモンドハッピー』だと思います。凄く個人的な言い方をするなら、MAD 動画で思わず使いたくなるようなショットが沢山あるステージというか。

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後、アニメ本編からははみ出すが、木戸衣吹と松永あかねが『ダイヤモンドハッピー』を歌ったというのは、中々に意味が大きい。まぁ『カレンダーガール』や『SHINING LINE*』でもよかったのでは感はあるけど。

追記 20/03/10

今回は『星宮いちご』のお話を丸々一話ガッツリやった上で 3 曲まとめたステージパートという構成だったので、いってしまえば『オンパレード!』以前の馴染み深いリズムだったように思う。

アイカツオンパレード! 7 話『かがやく三つの太陽』感想 - アニメ雑感記
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今回も 7 話と同じく、B パートの一箇所にステージをまとめた構成だった。やっぱり、

A パートで問題発生→CM→B パートで頑張る→ステージ→締め

という構成は馴染み深いし、テンポがいいように感じる(今回は頑張る所まで A パートだったが)。

追記 20/03/10

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今回のイベントやらきちゃんに対するコメントじゃなくて、SL のステージング評に終止する虹野ゆめ、根っからのアイカツ!戦闘民族である。流石は白鳥の血を引く者だ。

 

 

 

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というわけで、22 話の感想でした。

いいお話だったからこそ、今までのアレコレが今まで以上に気になるようになったという感じです。
とはいえ、いいお話であったこと自体は確かなので、残りの四ツ星・SH でも期待したい所です。

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NVA は次回に(どのくらいかはともかく)出番があることが確定してるけど、果たして DA の運命や如何に。

追記 20/03/10
まさかこういう展開になるとは思っていませんでした。