劇場版アイカツプラネット! / アイカツ! 10th STORY 感想
先日ようやく『劇場版アイカツプラネット!』(同時上映『アイカツ! 10th STORY』)を観てきました。
当初は『プラネット!』と『10th STORY』で別々の感想記事を書こうかと思っていたのですが、
この内容だと流石にまとめざるを得ませんでした。
一言で言うなら、やりたいこと・伝えたいことは十二分に伝わってきた映画だったと思います。
一方で面白かったかと言われると、正直自分の中でハードルを上げすぎていた部分がありました。
部分部分で惹かれる要素はありました。
しかし、どうしてもその背景にあるであろう大人の事情を透視してしまい、
複雑な感情に追いやられてしまった、というのが素直な感想です。
いや、勝手に色々妄想してたこちらが完全に悪いのですが。
というわけなので今回の感想は作品の内容そのものよりも、
それ以外の部分についての言及が多くなると思います。
ぶっちゃけネガ多めです。
公開からそれなりに経っているので大丈夫かとは思いますが、
未視聴かつ今後視聴予定のある方はこの先ネタバレがあるので自己責任でお願いします。
それと当然ながらスクショ等もありません。
一応 TV 版『プラネット!』の感想記事も載せておきます。
鑑賞終了直後にまず抱いた感想としては、
『プラネット!』は『ねらわれた魔法のアイカツ!カード』を思い出す作品だったなぁ、ということ。
『10th STORY』は『アイカツ!シリーズ』の葬式・卒業・エンドマークの為の下準備かな、ということ。
でした。
まぁとにかく『プラネット!』の話が薄い。
『あかり GEN』『スターズ!』一年目に於けるドラマ回や、『オンパレード!』の虚無フェスのような薄さ。
『劇場版アイカツプラネット!』の立ち位置
物語の大筋は、舞桜ちゃんが今までのアイカツを支えてくれたファンや仲間に対する "感謝" を伝えるために、感謝祭を企画・開催するという流れ。
なんだけど、そこには特にこれといったドラマが生じない。
感謝祭の準備でなにかしら躓いたりするわけではない。テーマも特に難航せずすんなり決まり、「アイカツ!の花」も前触れ無く登場。開催中に裏でトラブルが発生(明咲さんの遅刻でスケジュール崩壊等)したりするわけでもなし。ただただイベント(というか生放送番組)の内容をカメラ追っていくという、劇中劇をそのまま映すスタイルだ。こういった理由と映画というメディア選択が合わさったことにより、『ねらわれた魔法のアイカツ!カード』を思い出した。
成長物語である『アイカツ!シリーズ』に於いて、一度幕を閉じた物語の主人公を再び舞台の上に上げるのはとても難しい。なぜなら(らきとノエルを除いた)今までの主人公は TV 放送で成長を一通り描ききっており、そこには "成長の余白" が残されてないからだ。その為、基本的には主人公の座を降りてメンター役につくか(『あかり GEN』のいちご、『オンパレード!』の歴代主人公)、番外編として "成長しきった姿" を描いていくしかない(『ねらわれた魔法のアイカツ!カード』)。そういう意味で本作は『魔法のアイカツ!カード』とそれなりに近い位置にある作品に思えた。
こういったことを踏まえると、本作の内容がある程度薄くなってしまうのは仕方なく思える。しかし、今回はどうしてもそれで済ませたくないと思ってしまった。何故なら本作では同時上映が存在し、その内容や周囲の状況からそちらの方がメインであるように思えてしまったからだ。上映時間に於ける尺の配分や、映画館の上映スケジュールでの名義等では、一応『プラネット!』の方が主のように扱われているのに。
先程あえて挙げなかったが、成長を語り終えた主人公が紡ぐことの出来るお話がもう一つある。それが "終わり" の物語であり、『アイカツ!シリーズ』の様に学園モノ要素を含む場合、言うまでもなく「卒業」はそれを語りうる舞台となる。
「卒業」という強力なトピックを扱ってること、春に本命の新作映画があること、『プラネット!』→『10th』という上映順、『プラネット!』側の内容 etc... この辺りを総合すると、やっぱり『プラネット!』がおまけで『10th』がメインに思えてきてしまう。ぶっちゃけ『プラネット!』の名前を掲げるのであれば、『10th』の尺をもっと削ってその分を『プラネット!』に回し、もっとドラマを太らせて欲しかった。どうせ『10th』は春の方が本番なのに……。
物語の起伏
ファンが欲しいからオーディションに応募したが、ファンは既にいて、ファンの力で合格出来たというお話。 アイドルとファンのいい関係・好循環っていうのも、今後ずっと『シリーズ』につきまとう概念。
アイカツ! 1-12 話 感想 - アニメ雑感記
アイドルはファンに夢を与える存在だけど、時にはファンの声がアイドルに力を与えることもあるという、『シリーズ』で繰り返し描かれる好循環。
アイカツ! 13-25 話 感想 - アニメ雑感記
ファンへの感謝の思いを伝えるはずがファンから感謝し返される という構図は、『アイカツ!シリーズ』が描き続けてきた "アイドルが生み出す好循環" あり、文脈的にもかなり強いテーマのはずだ。その為、もっと時間を使って丁寧にドラマを作っていれば、もっと濃い内容のお話が出来てもおかしくなかったはずである。
『プラネット!』の劇場化そのものは嬉しかった。しかし、せっかくの作品タイトルを掲げた劇場化がこういう内容で終わってしまったのは、本当に残念だった。
もっと舞桜ちゃんが準備段階などで四苦八苦するところを見てみたかった。
それが本編での成長描写に合わないというのであれば、『フレンズ!』 36 話の様に本番中のトラブルに完璧に対応しきるお話でもよい(てか本編終了後という時系列を考えればそちらの方が自然)。それが舞桜ちゃんのキャラに合わないというのならば、仲間に頼るという展開でも良かったと思う(「感謝」にも繋げやすい)。
そういう意味でいうと、ドレシア探しのパートはひょっとしたら本作のドラマ的山場だったのかもしれない。とはいえ実際の描写は、『フレンズ!』文脈を引用してダイジェストでサクッと済ませてしまっていたので、あまり響くものではなかったが。というかああいう文脈の引用の仕方なら明咲さんより栞ちゃんの方があってる気がするんだよな……。
なんにせよ、もしかしたら『プラネット!』の最後になるかもしれない映像作品がこういう形になってしまったというのは、個人的にはとても残念だった。
致死量超えの可愛さの乱舞とか、そういう面ではよかったのだけど。
『10th STORY』について
『10th』については特に言いたいことはなし。
上で繰り返したように本番は来春で、今回はあくまで下ごしらえのような作品だろうし。
公開から既にそれなりの時間が経っていて、その内容や今後の動きについて情報が出ている状態だった、というのは大きく影響してるかもしれない。一応ネタバレは踏まない様に気をつけていたが、十二分に予測出来る内容だったし。最速だったら感慨も違ってたかも?
何にしても春の新作の内容次第といったところ。
雑感
以下、鑑賞中に思ったことをつらつらと。
・プラネット!
冒頭でモブスタッフが映ったり、その音声が環境音として聞こえたりしたのはとても良かった。
『プラネット!』本編における社会との繋がりは、学校や街中のファンくらいしかなかったので。
それだけにいざ感謝祭が始まってしまうと、結局 "いつものメンバー" に戻ってしまうのが惜しかった。
もっと多くのスタッフの存在や息遣いを感じたかった。実写ならではの生っぽさを活かして欲しかった。
逆にそれを活かしきれていたのがファッションショーのシーン。この辺の手練手管は流石といったもの。
エンディングでメイキングを流せるのも実写の強み & 『プラネット!』らしさを感じられてよかった。
隙あらば『アイカツ!シリーズ』の文脈で殴ってくる構成。
リアル斧から始まり、パラシュート、丸太渡り、崖登り などなど。
斧使うときに手袋付けてたところなんかはとても良かった。実写しぐさ。
終盤、「ミスティカルケリュネイア」を連呼するのはちょっと面白かった。
「特別なグレードアップグリッター」とかを思い出す。
栞 / シオリの個別パートはプラネット内でのミュージカルシーンだったんだろうけど、3DCG ステージが用意されていた LOVERY MARRON の 2 人に対して、シオリちゃんの活躍少なくない?劇中作をそのまま見せる構成を取っておいて、尺の配分が露骨に違うのは……。少し寂しかった(追いきれてないだけかも)。
・10th STORY
タイトルコール、サブタイ画面、劇伴、フィッティングシーン、ED、格言、
劇場、パラシュート、穏やか、血を吸うわよ などなど
とりあえずお約束はワンセット詰め込んで、懐かしさで殴っていくスタイル。
まぁトピックがトピックなだけに、これは正しい采配だと思う。
ステージが『星空のフロア』だったのはちょっとわからず。
内容的に Soleil or いちご世代に全振りかと思ったので。
ただ春新作であかり達にそこまで光が当たらないであろうと推測すると、ここであかりのステージを一旦消化しておくのも効率的なのかもしれない。最大の目的は 178 話から地続きであることのアピールだと思うけど。
面白かったのはいちご世代が中心となるお話なのに、美月さんが全く絡んでこないところ。
『神崎美月』依存からの脱却をなし得てる、何よりの証拠。
"お約束" をきちんと描くことで "変わってない" ことをアピールした上で、
あおいちゃんの告白を泣かずに受け止めるおとめちゃん、
かえでちゃんの奇襲に完璧に応じているユリカ様などなど、
サラッと "変化(成長)" も変えているところがとてもいい。「卒業」というトピックとの親和性も高い。
『星空のフロア』のステージは『アイカツ!』ステージらしさの強い、エフェクト少なめのカメラアングルやカッティングで勝負していくタイプ。ただ、サビ以降に振りやステップに合わせたワンポイントエフェクトが追加されたりしていて、『スターズ!』以降の影響をほのかに感じたり。
『アイカツ!』放送当初よりもカメラの動き方が大きくなっていた気がしたが、多分気の所為。
或いはユニットステージなので、キャラの切替が多くなったことでそういう印象が強くなったのかも。
まとめ
というわけで『劇場版アイカツプラネット!』及び同時上映『アイカツ! 10th STORY』の感想でした。
虚無みの強い『プラネット!』と、春の前振りの『10th』という組み合わせで、
個人的は非常にモヤモヤしてしまう劇場化でした。
『10th』が前振りになるのは仕方ないにしろ、『プラネット!』はもっとドラマ強く描いて欲しかったなぁ。
まぁ "学園モノにとっての終わり" である卒業に手を付けたということは "そういうこと" だと思うので、
しっかり成仏させてくれることを願いつつ、覚悟を決めながら春を待ちたいと思います。
『プラネット!』はこれで最後になるのかなぁ……。