アイカツオンパレード! 23 話『スターズ!オンパレード!』感想

『オンパレード!』 23 話は星々が煌めく四ツ星学園から。

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ドラマの作り方って視点からすると、良くも悪くも『スターズ!』らしさがありました。
火力の高い各要素を並べるも、その接続の悪さがザラつくというか。
そのザラつきに気を取られるか、火力の高さに焼かれるか。
視聴者によって印象が変わりそうという点まで含めて。

 

 

 

いいお話を作る為には、いいエピソードとそれを支える描写が必要である。 いいエピソードには一部例外を除いて(※)ある程度の起伏が必要であり、その起伏にこそドラマが生まれる。

※『アイカツ!』 24 話『エンジョイ♪オフタイム』

※『フレンズ!』 12 話『トマト、どーんとコイ☆』など

アイカツオンパレード! 22 話『全員集合!オンパレード!』感想 - アニメ雑感記
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勿論『スターズ!』のお話の全部が全部そうだというわけではないが、しかし個人的には『スターズ!』の各エピソード間の接合部分には、余りいい印象はない。有り体にいえば、一つ一つのエピソード(或いはそこに含まれる一つ一つの要素)の関係性・連続性が弱く、全体で大きく連動して物語を推し進めるというダイナミズムが感じられなかった という記憶がある(一年目で追いかけてたハズの S4 という価値観を『星のツバサ』でぶん投げたというのがその最たる例)。反面、いい所も勿論あって、それが各エピソード・各要素の単発火力の高さだと思っている。つまり、一つ一つの細かなエピソード・描写を積み重ねていって感情を高めていくのは苦手だが、その代わりに一回一回で感情を燃やし切る という感じだ。というか因果関係でいえば、恐らく逆なんだと思う。即ち、単発火力の高さを重要視する余りそこまでの接続が疎かになってしまった、という推測だ。

(この辺の『スターズ!』評も、いつか振り返り感想とかでまとめられたらいいなぁ。)

 

さて。今回のお話を観てみると、個人的には先述した通りの印象が詰まったお話に思えた。

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単発火力の高さはやはり特筆すべきものだろう。ゆめちゃんのハンドマッサージから始まり、5 人での星印やいつぞやを思い出させる美組のショー、エルザの "変化" (ヒカルくんとの会話はまんまひめの代役で笑った)、そして舞台上から客席の方を映した例のアングルのショット等々 所々に武器は揃っている。『スターズ!』本編と違って、"一度終わった物語" であるので先のことを考えず引用しまくれるのはやっぱり強い。連続性が弱いと言っても、100 話分の歴史はあるのだ。

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「みんなで輝く」という言葉それ自体は、正直空疎に響く。私は『星のツバサ』でそれを描ききれたとは思えなかったからだ。とはいえ、それは『星のツバサ』の問題であり『オンパレード!』の問題ではないので、今回それを指摘するのは適当ではないと思う。寧ろ "オンパレゆめ" は "星ツバゆめ" 以上にメンターとして後輩(らき)を引っ張っていく姿が見られたと思うし、(ステージ戦士ではなく皆を導いていく立場としての) S4 としての格や頼もしさが『スターズ!』以上に感じられていたことを考えると、今回の「みんなで輝く」という言葉も悪くなかったように思う。

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組別で何かする時は、当然の如くダイジェストで処理されがちだが、今回に関してはそれで良かったと思う。この 3 話に於いては、舞台上よりも舞台裏のらきちゃんの頑張りに比重が置かれているため、舞台上の描写がある程度犠牲になるのは仕方ない。寧ろ変に舞台上を重視して、また虚無を生成されたほうがしんどかった。

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最後のらきちゃんの表情を見ても、めちゃくちゃ気合を入れて描かれてるのがわかる。こういう抑えるべきポイントで、出来得る限り高火力の作画・演出を用意する所なんかは、とても『スターズ!』らしいと思う。

 

だからこそ、この表情に辿り着くまでのドラマの作り方に引っかかってしまう。ザラつきを覚えてしまう。

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らきちゃんに連絡つかなかったのはいいとして、なぜもっと手紙に詳細を書かなかったのかとか、他の 25 代目やゆめとも連絡が取れなかったのかとか。この手の手紙でよくある「必ず間に合わせます」的なことも書いてなかった。恐らくあこちゃんのセリフとの兼ね合いのような気がするが、ひめ先輩がそんな詰めの甘いことを本当にするのかというのを強く感じる。

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ひめ合流後の、「コラボステージなら他の学校の生徒もみんなで一緒に輝ける」という真昼ちゃんのセリフもなんだかあべこべだ。その前に『正義のキモチ』やってるやんけ、とか思ってしまう。舞組のステージには凛ちゃんだって登壇していた。続けて小春ちゃんが「イベントのこと凄く真剣に考えてくれていた」というが、セトリで他にもコラボがあることを把握してるであろうひめ先輩が、間に合わない危険性を犯してまで新たにコラボをぶち込むことが、当事者目線で「イベントのことを真剣に考えていた」となるロジックに疑問を抱いてしまう。勿論、そのコラボ相手が美月であるということを考えれば、そのリスクは十分に許容しうると思うが、この時点ではまだ美月は壇上に上がってないわけで。なんというか、この辺のセリフ運びの雑さも凄く『スターズ!』らしさ感じてしまった。

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ゆめちゃんは「ひめ先輩はステージに穴を空けるようなこと、絶対にしない」と言っていたけど、らきちゃんが頑張って曲順変更しなければ穴は空いていたわけで。というかぶっちゃけ今までの諸々を考えると、『正義のキモチ』の代わりにひめの代役として NVA 勢の誰かを歌わせたほうがすんなり行くんだよな、多分。ひめちゃんがそのくらいの根回しをしていないってのも不思議だし(悩んでいた・何度も断られたということから昨日今日の話ではない)。ただそうするとらきちゃんの活躍が丸っきり消えてしまう為、今回のような構成になったんだと思いますが。

追記 20/03/16

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美月が断り続け、ひめが悩み続けた数日ってのは、前回らきちゃんが調子こいてた ~ ステージ作ってたくらいの期間だろう。そんで美月が SL のステージに立ったのを確認して、ひめが再度交渉に動いたという形だろうか。こういう要素の連動性ある拾い方はいい意味で『スターズ!』らしくなくて、良かった。

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『スタートライン!』なんていう自分のフィールドに引きずり込もうとせず、美月の持ち歌を選んでおけば、自分一人の練習で済むわけだし、今回みたくギリギリにならなかっただろうなと思う。まぁ、メタからいえば『アイカツ!』曲なんて出来るわけないんですが。

 

 

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ステージは『アイカツ☆ステップ!』『正義のキモチ』『スタートライン!』。
『正義のキモチ』がある分、前回に比べるとそこまで "『スターズ!』尽くし" という感じはしない。
やっぱりバランス的にも NVA のステージが入ってた方が良さそうに見える。

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アイカツ☆ステップ!』に関しては一つだけ。
『スターズ!』 100 話では途中で過去回想 & モノローグが入ってた為、そこをカットしてのステージ。とはいっても 1 番サビ→C メロ→大サビ の部分から C メロを抜いただけなので、見た目上の変化はないんだけど。
『正義のキモチ』については割愛。

 

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そして白鳥ひめ & 神崎美月による新規コラボ『スタートライン!』。
正直、美月・エルザ・ひびきよりも美月・ひめ・カレンの方が強そうなので、ここにカレンさんいて欲しかったなっていう気持ちは割とある。後は途中の描写からひめ & エルザの可能性も少し考えた。(結局、今回のエルザの発言が次回以降の伏線なのか、『スターズ!』の振り返り的なセリフだったのかはわからない。)

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ステージ自体はワンポイントエフェクトが追加されたぐらいで、後は 99 話の ゆめ vs ひめ と余り変わらず。
美月さんとひめ先輩が一緒のステージにいるっていうのは確かに強い絵面なんだけど、個人的には上述の 99 話のことを思い出して、懐かしさを感じた。

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ただ、あの時のゆめちゃんと違い美月さんの方がロングドレスではない為、ステージ全体から感じられる "圧" のようなものはあの時ほどではなかった。それでも一定以上の存在感を感じてしまうのが『神崎美月』の持つ文脈なんだろうけど。

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あと特筆すべきなのは、るかさんの歌い方だろうか。『スタートライン!』の以前の歌い方は声量でぶん殴るような感じだったが、今回は優しく・大人っぽくという感じだった( "強く優しく美しく" ?)。個人的に以前の歌い方は大好きだった。しかし、今回の新しい歌い方も、ひめがあれから過ごした時間の長さや、隣に立つのがゆめでなく美月であることなんかを考えると、とても適していた様に思う。負けなしの覇道を歩んだ先で、自身の後継者に刺され、敗北を知り、そこからまた新たに歩んだ先にいるのが、『オンパレード!』の白鳥ひめなわけだし。『スターズ!』のキャラクターということを考えると、"負け" の重みは他作品以上のものだろう(ましてやそれまでその世界の頂点に居続けたキャラクターだ)。

 

 

 

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というわけで、『オンパレード!』 23 話でした。
前書きの繰り返しになりますが、『スターズ!』の良い面も悪い面も存分に出たお話だったと思います。全体の完成度は前回の方が高いと思いますが、一方で新規ステージのインパクトは今回の方がありましたし、この関係性はそのまんま『アイカツ!』と『スターズ!』に対する個人的な印象と一致していて面白かったです。

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そんな流れでの『フレンズ!』回になるわけですが、カエル顔作画と公式サイトの "カエルが大量発生" という文言に既に一抹以上の不安が。ただ、脚本は久尾さんなので、久尾さんを信じて一週間待ちたいと思います。