劇場版アイカツ! 感想

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

「観てくださった方が素敵な明日を迎えられるようなステージに」

アイカツ!』 1 話から始まった星宮いちごと神崎美月の物語にエンドマークを打つ作品。
それでいて、次なる世代である大空あかりへバトンを渡す作品。
アイカツ!』に於ける『アイドル』とはなんぞや ってのを、真正面からこれでもかと描いた作品。

これまで作品を、物語を、世界を引っ張ってくれた神崎美月に対する、星宮いちごからの精一杯の贈り物。
或いは、そこには制作陣からの思いも込められてるかもしれない。

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今尚『アイカツ!シリーズ』史に強く刻まれる名作『劇場版アイカツ!』の感想です。

 

 

 

いつもと違って、先にどうでもいいところ書いておきます。

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流石は劇場版というだけあって、作画がとてもハイカロリーだった。
キャラの顔が崩れることはなく、大きくも小さくも動き、ショットサイズやアングル等の種類もとても豊富だった。その中でも個人的にとても気に入ったのが、細かい所の芝居だ。普段なら省略されてしまいそうな部分を敢えて力を入れて描くことで、画面の情報量を上げる。そうすることでキャラの解像度が増し、より物語が実在性を帯びてくる。これが例えばディズニーやジブリの作品であれば、多すぎる情報量を削減するという作業も必要になってくるが、日本でよくある TV アニメの劇場化作品くらいならば、まぁ基本的に作画を盛って盛ってナンボの世界だ。だから、例えば倒れそうなパフェを支えるあおいちゃんとか、ヘリから降りてきたユリカ様が後ろ手でフックを外すところとか、そういうのが細かく挟まるだけでこっちの気分も上がってくる。

 

 

そんでもって本題。

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本作のエピソード的なテーマは至ってシンプルで、"星宮いちごと神崎美月の関係性" に他ならない。勿論あかりちゃんも重大なキーパーソンではある。『アイカツ!』の物語全体を観た時、或いは大空あかりの人生について考えた時に、あの場にあかりちゃんが居たということは、本当にとてもとても大きな意味を持っている。だけども、あくまでこの映画一本にフォーカスを当てた場合、彼女は橋渡しをしたに過ぎず(それでもとても大きな役割なんだが)、やっぱり作品の中心にあるのは星宮いちごと神崎美月の感情であるわけだ。

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しかし、作中には美月さんに纏わるアレコレ以外にも、"リラフェアリーコーデが間に合うか否か" というもう一つのドラマが存在している。上述の通り、本作のテーマがいちごと美月の 2 人の感情についてであるなら、このドラマは省略してもいいものである。しかしそこで敢えて 2 人の感情から外れたドラマを用意する事で、それ以外のキャラクター達の活躍する場を確保した という構造的な分析ができる。これが意外と大切な事で、こうすることで 2 人(+1 人) のエピソードを邪魔せずにお祭り的な空気感を描くことに成功している。
(とはいえ、この "オールスター要素の捌き方" を参考にして『オンパレード!』をやれっていっても難しかっただろう。なにせキャラの総数が違いすぎるからだ。やはり、実際にそうだったように、本題を処理しながらオールスター要素を絡ませていく方針しかなかったように思う。)

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当然ながら、これら 2 つのドラマは完全に独立してるモノではなく、『輝きのエチュード』という同じゴールを目指している。この点も大切で、結局この映画の全てはあのステージに詰まっているのだ。ゲストキャラの花音さんの存在も、『輝きのエチュード』の作詞のやり直しも、天羽先生の思いの詰まった刺繍も、ユリカやマリアが届けてくれたドレスも、あかりが走り回ったのも、美月が覚悟を決めたのも。 

基本的にステージ前の描写は説得力を作り上げていくものに対して、ステージ後の描写はその補完として使われるので(※)、ステージ前描写の少ない LMT はその少ない中に "強い絵" を持ってくる。

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これは『アイカツ!シリーズ』が普段から用いてきた文法で、結局はここに回帰する。それまでの約 60 分の全ての描写が、『輝きのエチュード』のステージを、星宮いちごの神崎美月に対する "恋みたいな気持ち" を、支えてくれている。

普段と変わらないことを、見事に劇場版仕様にスケールアップして見せていて、本当に凄いことだと思う。

 

 

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そして、『神崎美月』について である。
本作に於いて最も比重が大きいのがいちごちゃんと美月さんの感情ならば、美月さんは本作の "もう一人の主人公" であるといっても過言ではない。ていうか本作のみならず、いちごちゃんが主人公を務めた『1st - 2nd シーズン』にまで拡張してもいいだろう。そんだけ美月さんの担っていた役割というのは大きなものだった。

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これまでの 100 話に及ぶ物語の中で、『神崎美月』というアイドルは常に頂点に立ち、皆を支え、引っ張り、規範を示し、立ちはだかり、そして孤独であった。いちごとのライブでの共演に始まり、フレッシュガールズカップ、Tristar オーディション、STAR☆ANIS、スターライトクイーンカップ、パートナーズカップ、Soleil 対 WM の対決ライブ、そして AIKATSU 8 とトゥインクルスターカップと、節目節目で作品を引っ張ってきたのは常に美月さんであり、ぶっちゃけ物語構造として美月依存が激しかったというのがある。そんな役回りだから常に負けることが許されず、完璧で居続けなければいけなかった。

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制作側もそれには自覚的であり、だからこそ彼女が完全無欠・絶対無敵・完璧超人なヒロインでは "ない" ということは度々示されてきた。例えば過労で倒れたり、寂しさから見送りに行けないと言ってみたり。しかし、そういう "ただの人間" "ただの少女" であることを示す描写がある度に、その都度立ち直ってしまい、見事に『神崎美月』に戻ってしまうのが美月さんなのであった。

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『神崎美月』を務めることの重圧、負担、疲労、責任。本作品では、他ならぬ美月さんから初めてそのことが吐露される。ともすれば、みくるちゃんはそれらを分け合うことの出来るパートナーだったのかもしれない。しかし、そんなみくるちゃんでさえ "次" を見つけてしまい、新たなる輝きを求め飛び立っていった。ていうかその "旅立ち" の後押しをしてしまったのが、他ならぬ美月さんだ。「アイドルは観ている人を元気にしたり、笑顔にしたり、夢を見せたりできる」ってのは『アイカツ!シリーズ』で(勿論この映画でも)常に変わらず描かれていることだけど、誰よりも『アイドル』である美月さんは、その自身の輝きでもって自身のかけがえのない半身を失ってしまったのだ。 

彼女の本質が「道を極めること」である以上、そこに考えが至るのは逃れられない運命なのかもしれない。 そんな彼女の立ち位置は、どことなく救済前の神崎美月やエルザ フォルテを思い出させるけど、2 人と決定的に違うのは彼女が既に「出会っている」というところだろう。

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ちょっと未来に目を向けると、LMT が思い出される。
WM と LMT の決定的な違いは、"2 人がいつ出会ったか" という点だと思う。
美月さんもみくるさんと SLQ になった直後等に出会えていれば、『神崎美月』として確たる存在になる前に出会えていれば、或いは星宮いちごより先に出会えていれば、人間として・少女としての人格を有したままで『神崎美月』でいられた世界があったのかもしれない。勿論これはただの妄想でしかないけれど。

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『神崎美月』でいることに疲れた美月さんは、その思いをいちごちゃんにぶつける。それをすぐあおい・蘭の 2 人に相談できるのが、そのまんま "神崎美月と星宮いちごの違い" だろう。そしてそれは、いちごちゃんが『神崎美月』と同じ轍を踏むことはない ということの暗示でもある。

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それはそうと、ここの「奪われたいの」という発言は、まー、重い。
『神崎美月』を倒しうる存在として星宮いちごを選んだこともそうだし、その事を隠さず伝えてることも。

パーソナルな部分から発せられた思いが、アイドル(或いは歌・ダンス・演技・トーク等)というフィルターを通すことで、パブリックな力を得て世界に響いてゆくというのは『アイカツ!シリーズ』がずっと描いてきたアイドルの営みであろう(その極めつけが彼の名曲『輝きのエチュード』であるのはいわずもがな)。

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その思いを受け取ったいちごちゃんの出した答えこそが、『輝きのエチュード』だ。万余の観衆を前にして、神崎美月たった一人へ向けた思いを、高らかに歌い上げる。これまでこのブログに何回も書いてきた、パーソナルな思いをパブリックなメッセージへと変容させる、アイドルの力がこれでもかと描かれるステージだ。

そして今度は、いちごちゃんの思いが燃え尽きていた美月さんの心に火を灯す。かつて美月さんの歌がいちごちゃんを目覚めさせたように(或いはみくるちゃんを旅立たせたように)、いちごちゃんの歌とダンスとドレスと思いと輝きが、美月さんを突き動かす。

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ここではパブリックとパーソナルの 2 面に於ける "勝負" が描かれる。
パブリックな面としては、アイカツ!ランキングの変動だ。それは、いちごちゃんが『輝きのエチュード』に込めた美月一人に向けたメッセージが、ステージというフィルターを通すことで見事に "公" に届いたという証拠でもある。
パーソナルな "勝負" というのは、勿論、美月さんの心を動かしたことだ。或いはそれは美月さんというより『神崎美月』に対する勝利と言っても良いのかもしれない。『神崎美月』として下した「アイドルを辞める」という決意をぶち破って、ステージに引きずり出した事。そして『神崎美月』という呪縛から解き放ち、復帰を決意させたこと。それは、1 話で魅せられ、3 話で知り、16-17 話以降常に負けてきたいちごちゃんが、2 年以上かけて漸く手にすることの出来た完全なる勝利だと思う。

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この 2 面の "勝負" といのはトゥインクルスターカップ(TSC)から続いてるものでもある。TSC では、ポイント勝負というパブリックな戦いと、「アイカツ!の未来」に関して TSC のその更に "先" を見据えていたか否かというパーソナルな戦いがあり、その両方で確かにいちごちゃんは "勝って" いた。しかし一方で、アイカツ!ランキングは不動のままであったり、"その先" についても「いちごに期待ね」と言わせるに留まりそれ以上の衝撃を与えられたわけではかったり、その "勝利" が "完全勝利" であったとは言い難い。その辺りを踏まえて改めて『いちごまつり』を観てみると、今回のソレは TSC の延長戦とも言えるのかもしれない。

 

 「アイドルの笑顔でお腹は一杯にはならないけど今日のステージで心の中が少し暖かくなって、
皆の今日が、明日が、少しでも素敵になったら良いな、そう信じて歌います」

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『輝きのエチュード』の前の MC。ここまでの展開で、このステージに対する観客(それは作中の人達でもあり且つ私達自身も含まれる)のボルテージは最高潮に達しており、そういった場面で発せられる、いちごちゃんの言葉である。或いはこれは "主人公星宮いちご" としての最後の見せ場とも言える。自然な喋りでありながら、どこか天然のような面白さもありながら、でもそれを一つのエンタメとして魅せられるスキルも持ちながら。その上で『アイドル』に対する圧倒的な正解(の一つ)をぶつけてくる。この時のいちごちゃんは本当に『アイカツ!シリーズのアイドル』として完成されているのだが、それは同時に『星宮いちごの物語』の終焉が近いことを告げてもいる。"成長物語としてのアイカツ!の主人公" として語ることの出来る物語には、もう余白が残されていないのだ。そこから感じられる寂しさが、映画そのもののクライマックスとシンクロすることで、観客の『輝きのエチュード』に対する感情を更に盛り立てていく。

 

 

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そして、満を持して披露されるのが『輝きのエチュード』のステージだ。
曲調を考えたら当たり前だが、とても抑えられたカメラワークで、しっとりと歌を聴かせ、じっくりと表情を魅せる為の動きとなっている。

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これは、この長い長い "物語(それは『星宮いちご物語』でもありこの映画自体でもある)" を締める為のエンディングの役割も果たしており、これまでの道のりを私達が各々で回想する時間にもなっている。

幸運なのは私達が「神の視点」を得ていることだ。私達は、ステージというフィルターを通したパフォーマンスだけでなく、フィルターを通る前のいちごちゃんの感情を、思いを、物語を知っている。私達一人ひとりが持つ、それまで『アイカツ!』を観てきた時間や経験、或いはその中で感じた思いや感情等が、この歌をより深く心に刺さるものにしている。

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そして最後の最後にアピール。普段のステージとは演出やタイミングを変えることで、更なる特別感を出していることは言うまでもない。余韻を強く残すことで、"終わった" という印象もより強く感じさせる。

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ステージ後の余韻が残り歓声が響き渡る中で、美月さんの独白が挟まる。そこからの一転攻勢。あかりちゃんが最後のトドメを刺すことで、BGM が流れ、アンコールの声が響き渡り、観客(私達も作中の人達も)の心は再び燃え上がる。この辺の、『輝きのエチュード』ステージ前からここに至るまでの一連の展開に見られる感情のコントロールは、本当に凄まじいものがある。本作は幾度となく観ているが、その度にまんまと感情が突き動かされていく。

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ここで瀬名くんが挟まるっていうのも、最高にかっこいいタイミングだ。ここまで頑張ったあかりちゃんへのご褒美でもあるし、何より最高のクライマックスなだけにめちゃくちゃ印象に残る。少ない出番で、最高のパフォーマンスを発揮している。

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そして最後に繰り出されるのが、3 人による『Let's アイカツ!』。
『あかり GENERATION』を代表する曲であり、映画の番宣回である 112 話でいちごちゃんが披露した曲でもあるコレを、ここにぶち込んでくるっていうのが、由緒正しき世代交代を感じられる。

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カメラワークは結構平凡だったりする。パンもズームもトラックもドリーも割と普通だ。しかし、この直前に徹底的に抑えられた『輝きのエチュード』のステージを観ているので、そのギャップで結構動いているようにも見える。この辺りの 2 ステージに渡る緩急は、観ていて結構楽しい。

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また、初手アピールという構成も面白い。『輝きのエチュード』とは正反対の演出とタイミングだが、カメラワーク同様、そのギャップが観ていて楽しい。

 

 

この 2 つのステージを以て、『星宮いちごの物語』は幕を閉じる。

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勿論、彼女の人生が終わったわけじゃないし、彼女が引退したわけでもない。
彼女の活躍は『あかり GENERATION』や『ねらわれた魔法のアイカツ!カード』、『星のツバサ』、そして『アイカツオンパレード!』でも描かれている。でもそこで描かれるのは『アイカツ!』の 1 キャラクターとしての姿であり、主人公 星宮いちごではないのだ。

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唯一の例外といえるのが『アイカツ!』 125 話だろう。今振り返ると、本作で対『神崎美月』に関して決着を付けられた為、改めて目線を Soleil に戻してエンドマークを打ち直す というような役割があのお話にはあったようにも思えてくる。本作に於ける Soleil は "アイドル星宮いちごの足場を支える存在" として描かれていて、特に強いドラマ性を帯びているわけではない(逆に言えば『神崎美月』と決着をつけるには Soleil さえも横に置かなければいけなかった)。だからといって決して Soleil を蔑ろにしていたわけではなく、彼女たちがいるからこそいちごちゃんは『星宮いちご』でいられる というのは先述した通りだ。だからこそ、本作に於いても一番最後にいちごちゃんが帰ってくる場所は、Soleil になっているのだ。

思えば本当に長い道のりであった。神崎美月は常に最強で、かつ規範であり、星宮いちごは導かれる様に正しく成長していった。『アイカツ!』の持つ正の推進力は、いちごちゃんの情動主義とバイタリティが為せる技であったのは確かだが、その方向性を決定づけるのに『神崎美月』という目印があったのもまた事実だ。

本作はそんな目印を下ろす為の壮大な物語であった。
アイカツ!』初の劇場作品として、また星宮いちごの最後の物語としてこのテーマを選んだ制作側からは、美月さんに対する(それこそいちごちゃんのに匹敵するような)多大な思いが感じられる。

 

 

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本当に、本当に、本当にいい作品だったと思います。
めちゃくちゃ面白く、そしてめちゃくちゃ感動しました。