アイカツプラネット!(TV 版)全体感想

既に劇場版が公開されていますが、あくまで TV 版の感想ですのであしからず。

 

というわけでお久しぶりです。
『プラネット!』は最初の数話は録画で追えてたのですが、諸事情で途中から積んでしまい、
結局観終わらないまま・感想も書けないまま、一年くらい放置することになってしまいました。

そこに、劇場版公開に合わせてツイキャスで一挙放送を行うということを知ったので、
それに便乗する形でなんとか観ることが叶いました。
劇場版の感想に関しては、近い内に独立した記事として書きたいと思います。

それと今回の記事に関しては、いつもと違って本編中の画像はありません。
ツイキャスアーカイブで視聴してた都合上、スクショ撮りにくかったので。

 

 

 

「なりたい私」というテーマを表現するために

本作品の最大の特徴はなにか?と考えると、やはり "テーマがしっかりしてる(わかりやすい)" 点だと思う。
「なりたい私へ、ミラーイン☆」のキャッチコピーが表す通りの、自己表現に関するお話。
「なりたい私」になるにはどうするべきか、或いは「なりたい私」とは "どんな私" なのか。
その為の物語構成、そして半実写というメディア選択であったように感じた(筐体都合も勿論あるだろうが)。

 

 

抱えている問題は色々あるけど、一言でいうならどちらも "自分" というものを如何に出していくか という点が問われ続けることとなる。まさしく、『オリジナルスター☆彡』の物語だ。

アイカツ! 102-114 話 感想 - アニメ雑感記

何度か書いてきた事だが、メインである 3 人共に明確な欠点(克服すべき課題・成長の余白)があるというのは大きな特徴だと思う。

アイカツ! 166-178 話 感想 - アニメ雑感記

別に似たようなお話が今までもなかったわけじゃない。
藤堂ユリカや北大路さくらなんかはその最たる例だと思う。ただ、ユリカ様やさくらちゃんのお話はあくまで「サブキャラクターの 1 トピック」でしかなかった。
「自己表現」 にまつわるお話 ということで言えば、『あかり GENERATION』の前半なんかも近いお話のように思う。メインキャラクターの氷上スミレ・新条ひなきは共に「自己表現」にまつわる課題を抱えていたし、そもそも(102 話時点では既に乗り越えていたとはいえ)主人公の大空あかり自身が同様の課題を有していた。メインキャラクター 3 人が同じような欠点・課題を持っていたんだから、物語全体がそういう方向性になるのも当然のことであった

では『プラネット!』と『あかり GEN』の違いは何かというと、具象的か抽象的かという点だと思う。良く言えば『プラネット!』の方がわかりやすく、メッセージをストレートに描く作風であり、悪く言うと陳腐だということだ。「なりたい私」になれる夢の世界をプラネット空間に託し、そこに繋がる世界を実写で撮ることで、より現実世界に近しい所で・より説得力を持たせる作品作りにしたということだ。この辺の評価は個人の好みに左右される部分だと思う。個人的にはどちらもロジックが通ってる(と感じた)ので、どちらも好き。

 

その具象性を生み出している最大の要因は何かと言ったら、やはり実写パートの存在だろう。もっと言うと、実写とアニメの併用 ―― 実写だけでもアニメだけでもなく、両者を使うことで "もう一つの世界" を身近に感じてもらう為の方策というべきか。

作中世界における「アイカツプラネット」はヴァーチャル世界だと思われる。が、作中の描写を見る限りでは単なる VR 空間のような扱われ方はされていない。プラネット内でのトレーニングや食事は現実世界に影響を及ぼしてるように見えるし、ドレシアは独自の生態系のもとで暮らしている。プラネット内に移動する際、VR ゴーグルやその他 SF 作品で見られるような身体接続系のデバイスは使わず、「ミラーイン☆」の掛け声の下でアバターと一体化するような描写がなされる。というか、作中で VR かどうかも明言されてはいない(はず。プレス等では一応「仮想世界」というワードは出ているが)。そう考えるとやはりバリバリの VR 空間というよりは、身近にあるもう一つの世界(「なりたい私になれる場所」)としての役割を担わせたのだと思う。だからこそ「現実 = 実写」とは異なる「プラネット = アニメ」という構造が必要だったのだろう。

先述の通り、アニメだけであっても同様のトピックのお話は描ける というのは、過去作が証明してることだ。ではなぜ実写を混ぜる必要があったのかというと、やはり作品の一番大きなテーマとして掲げたかったからではないだろうか。その為にメディア選択の所から手を入れ、従来の作品から座組を大きく変えることで、よりテーマを語りやすくしたかったんだと思う。

 

メディア選択の話でいうと、各話に於ける実写とアニメの割り振り方も面白かった。視聴前は「A パートは実写で B パートにアニメ & ステージかな」という雑な割り振りを予想をしていたが、実際は実写で撮るべき所・アニメで描くべき所をしっかり考えた上でお話を作っていた印象を受けた。実写からアニメ、2D から 3D への移行もかなりシームレスであり、これもまた物語の具象性を高めるのに寄与していた。それと作画部分のクォリティも比較的高品質で安定していたように思う。やはり半分しか尺がなかったからだろうか?

メイクやおしゃれ(服のリアル販促)等のターゲット層の好奇心を直撃しそうなものを、より現実味を帯びた状態で描けるのは実写ならではの強みだと思った。

 

逆にというか、やはりというか、実写部分のクォリティは厳しい物があった。
正直、演者の演技力は仕方ないと思う。寧ろ演技慣れしてない中でよく頑張ってたと思う。

個人的にはそれ以上に演出面が気になってしまった。
特に気になったのがトレーニングシーン。厳しい表現をすると、"お遊戯" のように見えてしまう時があった。ランニングにしろ筋トレにしろ、生身の人間が動くことの "熱量" のようなものが中々伝わってこなかった。

現役アイドルもいて厳しかったかもしれないが、もっと "汗" が見える(物理的に見えずともそういう強度だとわかる)運動であれば、かなり印象が違ったように思う。逆に舞桜のダンスシーンなんかは、伊達花彩さんの動きのキレと表情が相まって、そういう "熱量" が伝わるいいシーンだったと思う。『アイカツ!』だからといってただ走らせるだけではなく、もっとリアルアイドルに即した画を作ってもよかったのではないか。

演技練習やボルダリングのシーン等は、『シリーズ』文脈上の "とんちき" なシーンだとわかるので、別にアレでもいいと思う。ただ真剣にトレーニングするシーンでは、その真剣さがより伝わる様に撮って欲しかったと感じた。アニメとは違って人間の動きに誤魔化しが効かない以上、そういったシーンの扱い方はアニメ以上に大切だと思う。

とはいえ同情できないわけではない。恐らく予算はそこまでではなかっただろうし、メインキャストはほとんど演技未経験、更に実写だけでは完結しないという作品の性質、そして何と言っても今以上に感染対策を徹底しなければならなかった撮影現場等々、普通のテレビドラマや特撮作品等と比べて余りにも特殊な要素が多いからだ。まぁそれでもやはり一人の視聴者としては、せっかく実写を取り入れるのであれば、もっとクォリティの高い映像を観たかったというのが本音である。

そんな中でも、秋元才加の演技力だけは流石と言わざるを得なかった。
大きな声やアクションの要求が少ない役柄だったが、だからこそ彼女が一人いるだけで全体の演技が締まって見えた。また、"アイドル" の文脈にまつわるセリフを彼女に割り振っていたのは、これ以上なく効果的だったように感じた。流石に言葉の重みが違った。

実写パートの話でいうと、同級生のアイドルオタク 3 人組の存在もよかった。
アイドルファンかつ、クラスメートかつ、幼なじみでもあるといういささか過積載気味な属性ではあったが、彼らがいた事で舞桜と世間の接点が確保されて、より立体的に世界を描けていた。

 

 

ストーリーについて

ストーリーの中心は「なりたい私」に対して、それをどう実現させるのかということ。
或いは、それ以前の問題として「なりたい私」とは "どんな私" なのかということ。
やっぱり『オリジナルスター☆彡』の精神を感じるし、この辺からも『あかり GEN』との類似性を感じる。

キャラクター配置は『シリーズ』の中でも類を見ないほど特殊だ。本来『神崎美月』を担うはずの「ハナ」の "中の人" が失踪し、ズブの素人であった舞桜ちゃんが務めるという形。初手から物語の天井を支えるメンターがいないというぶっ飛んだ構図だ。ハナの見た目は星宮・白鳥・神城の流れをくむ金髪ロングという " 強い" ビジュアルなのだが、それでいて中身がへっぽこというギャップも面白い。

『神崎美月』不在の作品といえば『2nd シーズン』があるが、あちらはいちごが既に主人公として一人で物語を引っ張っていけるだけの実力と格を手にしていた。それに対し本作の 1 話時点での舞桜ちゃんは、ダンス以外ただの素人。『神崎美月』の本来の中身不在 & 素人が代理で演じるって構図は、まぁ攻めてるなと思う。(最後に決断したのは舞桜自身とはいえ)巻き込まれてアイドルになった、というとあいねちゃんとも同じ括りと言えるか。

 

『神崎美月』不在で始まる物語であるが、1 クール目は先輩アイドル達にお仕事を教わりつつキャリアを積んでいく、というオーソドックスな作りになっている。全体の構図は歪なのにお話の中身は王道の "アイカツ!" というのも面白い。そんな中で『神崎美月』の代理を担っているのが愛弓 / キューピットである。ステージやお仕事、立ち居振る舞いでアイドルとしての実力・格の高さを見せて、『プラネット!』に於けるてっぺん・最前線を舞桜ちゃん(と視聴者)に示してくれる。特に 5・6 話はその実力・格にスポットが当たり、ここで作品をぐっと引き締めてくれる。

前半の山場となるのは、当然ながら舞桜ちゃんの「ハナ」バレだ。
ファンを第一に考えること、いずみさん(= 信頼できる大人)からのフォロー、ポイント返上という公へのケジメ等々、抑えるべきところはきちんと抑えていた印象を受けた。いずみさんから「舞桜ハナから離れるであろう明咲ハナのファン」への言及があったのも個人的には高ポイント。『アイカツ!シリーズ』の作風上、そこを深掘りすることはかなり難しいが、だからといって無責任に流さず、きちんと言及するのはかなりフェアな作りだと思う。少なくとも、ようわからんうちに Tristar を離脱してた紫吹や神崎よりは遥かにマシだろう。

 

2 クール目で満を持しての明咲投入、バトルの空気を一気に加速。この辺の運び方も王道らしさを感じる。
同時にこれまで『神崎美月』的役割を担ってきた愛弓 / キューピットが明咲ガチ勢になるのが面白い。1 クール目でも薄っすら匂わせていたが、その感情爆弾を 2 クール目で一気に炸裂させた形だ。その結果、視線が全部明咲さんの方を向いてしまうので、1 クール目の様な物語全体を動かすようなことはできなくなる。なのでその役割を明咲さんにバトンタッチし、明咲さんが舞桜ちゃんの勝負心を焚き付けていく。

アイカツ!』や『スターズ!』は "勝ち負け" に関する描写を重要視してたように思う。勝負について嘘偽りなく誠実に描くからこそ、そこから滲み出る価値観というものを感じさせる、そういう作風だったように思う。

アイカツフレンズ! 1 年目(1-50 話) 感想 - アニメ雑感記

"勝ち負けを超えた価値観" に説得力を持たすには、その前提となる "勝ち負け" そのものの重さが大切だからだ。ちゃちな勝負をやって「勝ち負けだけが全てじゃない」とか言われても「何いってんだこいつ」となってしまうし。

アイカツフレンズ! 1 年目(1-50 話) 感想 - アニメ雑感記

バトル要素、勝負の熱量、勝ち負けの重み のようなものをしっかり描けていたか、と言われると正直苦しい。ハナ vs ルリは大胆にバッサリカットされたし、杏 / アンはそもそもバトル展開についていけなかった。明咲 / ローズを中心に愛弓 / キューピットや響子 / ビートを交えて、全体のムードを高めていこうとする努力は感じられた。しかし、それでも熱を帯びてるのはあくまで上述の 3 人だけであり、作品全体に普及したようには感じられなかった(逆にこの 3 人の描写はよかった)。こうなってしまった要因はやはり尺の短さにあるだろう。 4 クールあった過去作と比べるとどうしても積み重ねが少なく、クライマックスの火力でも最後まで燃焼しきれていなかったように思う。尺問題はどうしようもないし、その中でやれる努力は最大限してると感じたが、やっぱりどうしても最後の盛り上がりに勿体なさを感じざるを得ない。

ただし、本作のテーマはあくまで「なりたい私」になることであり、バトルはそれを描く為の手段の一つでしかないことは留意しなければならない。

 

 

キャラクターについて

各キャラ別の感想をそれぞれ少しずつ書いていきたいと思います。

 

舞桜 / ハナ

我らが主人公。
(ピュアパレットは 2 人で一代と数えて)『ドリームストーリー』のノエルちゃんも含めると実に七代目。
ストーリーのところでも書いたが、強そうな金髪ロングなのに中身がへっぽこというギャップが面白可愛い。

「トップアイドルの中身を演じる」という中々に深い業を背負わせられたキャラクターだったが、それでも作品が重く暗くならなかったのは、キャスト或いはキャラクターのもつ明るさやパワー、爽やかさが為せる技。

成長の仕方としては「とりあえずやってみよう」という感じで比較的自分から挑戦していくタイプ。ただし、いちごやらきの様な「情動主義者」というほどではない。

アイドルとしての特徴では、やや抜けてるところや親しみやすさ等を伴う可愛さ。
バレエ経験者という設定からくるダンスのキレが強み(伊達さんの動きが凄い)。

作中の実写シーンや MV 等での口パクが余り上手じゃないのは皆共通だが、その殆どは口パクのタイミングがあってなかったり、声量に対して口が開いてなかったりするもの。それに対して伊達さんの場合、ダンスも、声量も、口の開き具合も、全てが大きいが故にアンバランスに映ってしまうという奇跡(そのパワフルさこそが魅力とも言えるが)。流石に現役アイドルなだけあって、ダンスと歌をあわせたパフォーマンスは圧巻でした。

明るく可愛く魅力たっぷりな、いい主人公だったと思います。

 

栞 / シオリ

霧矢・七倉の系譜を受け継ぐ、由緒正しき(?)幼なじみキャラ。

2 人同様、序盤は参謀ポジションを務めるが、2 人と違って最初はアイドルでもアイドル志望でもない。
舞桜ちゃんのサポートをする形で徐々にアイカツ!魂を煮立たせていき、見事にアイドルデビューを果たし、ラストバトルに向けて最後の椅子を賭けて主人公と勝負する、という親友キャラのお手本のようなストーリーを歩んだキャラクター。
他のキャラクター達が既にアバターを持ってる or 持ってた状態なのに対し、1 から新しいアバター(= なりたい私)を作っていく様子がとてもよかった。そういう意味では、舞桜 / ハナとは違った意味で『アイカツプラネット!』の物語を表現しているキャラクターである。

 

るり / ルリ

楽しさ担当、ブランド持ちのキャラクター。

何事に対しても自然に楽しみを見いだせる、というのは星宮いちごに通ずる才能。
トンチキ話を全面的に担当するのかと思いきや、ビート戦のような熱さも持ち合わせている。ただそのビート戦が盛り上がったのも、普段のトンチキをしっかり描いていたからこそ、上手くギャップが働いたのだろう。
25 話にもあったが、とにかくるり語が強烈だった。演技する側も大変だったろうなぁ……。正直最初のほうはそうでもなかったのだが、7 話を境にるり語の乱用が加速した印象がある。もうちょい抑えてもよかったのでは?と思わないこともない。

従来の『アイカツ!シリーズ』作品同様に 4 クールあれば、唯一のブランド持ちとしてのエピソードがもっと観られたのかなぁ、と思うと少し残念である。

 

響子 / ビート

「なりたい私」というテーマに最も沿った活躍をしたキャラクター。

栞ちゃんとは違って物語開始時点でそれなりのキャリアを積んでいる為、ゴリゴリの成長物語ではない。
その代わり、"中身の公表" という一大イベントを持ってくることで、個別のシナリオを厚くしている。主人公舞桜にも共通する問題という点で、キャラ配置に無駄のない印象を受ける。

こういう点からメイン 4 人の中だとメンター的役割を任されることも多い。わかりやすく "強い" キャラだ。
……だからこそ他キャラクターの成長のバロメーター、踏み台にされてしまうことが多く、そこが辛かった。

作品のメインテーマを体現しつつ、負ける役割(成長物語たる『アイカツ!』には必要不可欠)も担うという、影の MVP とも言っていいキャラクターだった。リアルとアバターのビジュアル面でのギャップというのも、実写・アニメ混合作品である本作の強みを最大限活かしたキャラクター造形と言える。そういう意味でも本作を象徴するキャラクターの一人であると言える。

 

紗良 / サラ

時には頼れるお姉さん、時にはドレスに狂う危ない人。ってな感じの幅広いキャラクター。
既に「なりたい私」になった人でもある。そういう意味ではキャリアだけでなくキャラクターとしても先輩。

コンテンツの性質上、どうしてもドレス関係のお話はドレシア → プラネット世界に傾いてしまうが、バランスを取るための現実側の重しであるともいえる。
反面、天羽・瀬名・蜂谷と違ってゴリゴリ作業してるシーンを描けなかったのは実写のマイナス面だろう。

とはいえ作中での存在感はそれなりにあった。ドレス相談の時は基本的に的確なアドバイスを出すし、メイン回では狂ったところを見せてくれたし、栞ちゃんのメンターにもなってくれたりしていた。基本的にメイン勢の脇を支えながら、時に飛び道具的に物語にアクセントを加える、中々いいキャラクターだったように思う。

これは明咲さんにも通ずることだが、ドレシアと再会した時の雰囲気がとても好き。
かつての戦友とも相棒とも言える存在。何気ない描写だが、あの世界でアイドルとドレシアが切っても切り離せない関係性なんだなってことがよく伝わってくるシーンだと思う。

 

愛弓 / キューピット

前半は物語を引っ張り、後半は明咲への巨大感情を燃え上がらせる人。

アバターの雰囲気的にほんわかかわいい系のキャラ化と思いきや、中身は熱いアイカツ!戦士というギャップがとても好き。本作の設定や「なりたい私」というテーマから考えると、アイカツ!戦士がほんわかかわいいアバターを選んだという順序になるはずなので、それはそれで可愛さが増す。

前半クールでは彼女の実力・格の高さが表現される機会が多い。作中の扱いに描写がきちんと伴っているのはとても大切なことであり、おかげで視聴していて自然とリスペクトすることが出来た。明咲ハナ登場以前もトップだったということにも説得力が出て、納得しやすい。

後半クールでは復活したライバルに熱い視線を向けながら、勝負心をメラメラと燃やし続けて "来る日" を待ち望む感じに。まさしく、内側に秘めていたアイカツ!戦士の顔が表に出てきた感じだった。舞桜ちゃんを焚きつける役割は明咲さんが担当する為、前半以上にバトルに燃える・上を目指す印象が強くなった感じ。

総じて『プラネット!』のお話を引っ張っていたキャラクターだったな、という印象。
思えば 1 話から既にメタ戦略っぽいセリフあったんですよね。流石はアイカツ!戦士。

 

杏 / アン

末っ子で、ブリっ子で、かわいいを煮詰めたようなキャラ。
かと言って天羽まどかっぽいかっていうとそんなことはない。この辺不思議(分析しきれてない)。
既に視聴者の 99 割が言ってるだろうが、「なりたい自分になれる場所」で愛弓 / キューピットと身長差が逆転してるというのが、なんとも可愛らしい。

個別回は、ドレシア攻略回が 1 話に、キューピット vs ローズにチャチャを入れるのが 1 話。
正直、このキャラに関しては尺が足りてなかったなと思う。
物語全体がバトル路線に進んでいる時でも、敢えてその路線から外れ、独自路線でいいお話を紡ぐということは可能である(e.g. 早乙女あこ)。だから、例え勝負の場に立てずとも(寧ろ立てないからこそ)、自分だけの光を見つけ、魅力的なキャラに育て上げることは可能だと思う。そういう点から考えると、愛弓 / キューピットへの巨大好き好き感情から "もう一歩先" が描かれなかった彼女は、とてももったいなく感じた。
一応最後に「ちゃん付け」という変化はあったものの、あれは愛弓側からのアプローチによるもので、杏ちゃんが積極的に動いて何か成長を得たという感じには見えなかったし。

正確には動いてはいた、がその方向性は間違っていた。
流石にステージ前に(個人的感情に基づいて)それを妨害する行為が正解だとは思えないし。

彼女が "可愛さ" を振り回すだけでなく、色んな感情を知って学んで、その上で "可愛さ" に戻ってくる、みたいな成長 / 変化を観てみたかったなぁと思ってしまう。

 

明咲 / ローズ

『プラネット!』に於ける、バトル方面のメンター。自由人タイプでギフテッド型の天才。
立ち位置が立ち位置なだけにどうしても美月さんと比較して観てしまうが、中々に面白い描かれ方をしてる。

これまでの 100 話に及ぶ物語の中で、『神崎美月』というアイドルは常に頂点に立ち、皆を支え、引っ張り、規範を示し、立ちはだかり、そして孤独であった。

劇場版アイカツ! 感想 - アニメ雑感記

人格と実力を兼ね揃えた『神崎美月』に物語上の負担を全て押し付けてしまう、というのは『1st シーズン』の持つ明確な欠点であり、『2nd』から劇場版までのいちごのストーリーが『神崎美月』の解放に終始してしまった最たる要因でもある。そして『あかり GEN』から『オンパレード!』に到るまで、『神崎美月』の存在(或いは不在)は各作品の物語構造に大きな影響を及ぼしていた。

明咲さんにどこか抜けてる部分があり、かつ無責任に逃げ出したという瑕疵を持たせたのは、その神性が過度に高まらない様にする為の方策に見えた。『神崎美月』の悲劇から得た教訓を活かし、あえて "完璧超人" にしなかった感じだ。

上では瑕疵と書いたが、物語が進むと明咲さんは寧ろ被害者側で、責任はいずみさん側にあることがわかる。多忙さからの逃避や約束の反故等、どことなく明咲さんには同情の余地を感じる。この辺の描写はある意味、美月さんのソレに近い(47 話・99 話・100 話・劇場版で『神崎美月』の重みが垣間見える点)。美月さんと明確に違うのは、やはり "本編中でその神性を高める描写をしていない" という点だろう。その為『1st』に於ける美月さんの様に物語が過度に依存してる印象は受けず、寧ろ明咲さんのキャラ導入にサラッと消化してる感じにも思える。この辺は舞桜ハナがそれ以前にきちんとケジメを済ませていたからかな、とも思う。

お話の中では主に舞桜ちゃんを焚きつけるのが役割。事ある毎にシュバッてきて、勝負ムードを煽っていく。中々に美味しい役割だったように思う。

紗良さんの項目の繰り返しになるが、ローズとしてドレシアに再会するところがとても好き。
外見が変わっても魂は繋がっている、アイドルとドレシアはソウルメイトなんだなって感じたシーンだった。

 

綿貫いずみ

メインキャラではないけど、『プラネット!』の物語とは切っても切り離せない人物なので。

織姫学園長やたまきさんと同じ様な「頼れる大人」という立ち位置であるが、一方で全ての元凶でもある人。
明咲さんに重荷を背負わせず、彼女に割り振ったのはとてもいい采配だったように思う。繰り返しになるが、これも『神崎美月』依存の物語から得た教訓だろう(あるいはエルザ フォルテから得た教訓とも言えるかも)。まぁその影響で視聴後に「結構やばい人だな」という印象になってしまうのは仕方ない。

先述したが、このキャラクターに、「アイドル」という文化に於いて最強の文脈を持つ秋元才加さんをキャスティングしたというのが、『プラネット!』最大のファインプレーだろう。演技でもセリフでも、常に一定以上の "重み" を作品に与えてくれていた。

本編中(23 話まで)では映されなかったが、25 話でチラと映った、画角外で振りコピをしてる姿が素敵でした。

 

 

 

ステージについて

そこまで見返してるわけでもなくかつスクショも撮れてないので、ざっくりとした印象だけ書いておきます。

オーラの表現は周囲にパーティクルが浮かんでいるタイプ。『星のツバサ』以降に観られるやつ。
『スターズ!』で登場し『フレンズ!』以降お馴染みとなった、振りに合わせたエフェクトの数々も健在。
ただし『ジュエル』の時みたいな "何でもかんでも光らせる" ってのはなかった。
『オンパレード!』で新規制作されたステージ類と大体同じくらいのエフェクト量だったかなという印象。

そしてスペシャルアピールの代わりに導入されたのがドレシアチャンス。
ドレシアがぶつかる所はほぼ見た目の変化がなく、その点はスペシャルアピールに比べて寂しい。
その代わり、勝ったほうにはお着替えがある為、ステージ全体で見た時に華がなくなったとは感じない。
ただまぁ、やっぱり負けた方のドレスがそのままってのが少し寂しかった。
パッと見でわかりやすくはあるんだけど。

 

総じて可もなく不可もなくといった感じのステージでした。
個人的な好みだとエフェクトはもうちょい少ない方が好きなのですが、まぁそこは『スターズ!』からの流れをみても予想できた範囲内だったので、そこまで気にはならず。
後はやはりもっとソロやユニットを観たかったという思いはあります。
お話的に余裕がなかったかというと、全然そうは見えなかったのが余計に。
紗良さんのお話とか、ソロで 1 話・シオリとユニットで 1 話、みたいに出来た気がするしなぁ。
筐体都合もあるんだと思いますが、この辺は残念なポイントでした。

 

 

 

まとめ

全体的に観てかなりよく出来ていた作品だったと思います。
テーマ選択、テーマに沿った描写、メディア選択(実写の必要性)、お話の連動性、お話の横幅 etc...
個人的にはどの点をとってもかなり納得できましたし、純粋に物語を楽しむこともできました。

ただやっぱり気になってしまうのは、2 クールという短さ……。
2 クールだからこそ完成度を高められたという見方も出来ますが、それでもあと 2 クール観たかった……。
特に杏ちゃん周りのお話や、いずみさんが『ハナ』に込めた思い、明咲や紗良の以前のアイカツ!などなど。
もっと掘れそうな鉱脈がいくつも見えてるだけに、本当に残念に思ってしまいます。
(最もリアルタイムで観れてなかった私にこういうことを言う資格はないのですが)

 

あとはやっぱり触れておかなければいけないのが、キャスト陣について。
25 話の内容や公式 Youtube チャンネルでの活動等をみても、実写展開と合わせてキャスト陣の "リアルアイカツ!" も推し進めたかったんだろうな、というのは見て取れる。

とはいえ、だ。
現実的に斜陽気味、だけどそれなりの知名度とそこそこの歴史を有するコンテンツが、
その命運を賭けたといってもいい大転換のタイミングだったわけで、
いくらなんでもキャストに負担掛け過ぎではないか?と思わなくもなかった。
(諸星すみれさんや美山加恋さんのような子役出身者ならともかく、演技未経験の方々にかける負担か?)

ただ実際に世に出てきた様々な映像や文章に目を通す限りだと、キャストの方々は一生懸命頑張って & 楽しんで取り組まれていたようだったので、だとすればただの一介の視聴者には何もいう資格はない。

個人的に作品を評価する際には、作品外のことはなるべく含めたくない派である。
だが本作に関しては、出来るだけリアルアイカツ!にも触れるべき作品だったのかもしれない。
それだけ 25 話のあの内容にナンバリングを付けて他のお話と並べた、という意味は大きい気がする。
(私自身は積極的に現場に行くタイプのオタクではないが)それでももし当初の計画通り "リアルアイカツ!" に注力した展開がされていたなら、どの様な景色が観られたのだろうか、というのはどうしても思ってしまう。
(そもそもそういう計画が当初あったというのが妄想でしかないのだが。)

 

ともあれ、『アイカツプラネット!』とても良い作品だったと思います。
完成度が高く、かつお話も面白く、とても楽しめました。

冒頭にも書きましたが、劇場版の感想に関しては後日また別に書きたいと思います。