アイカツフレンズ! 61 話『心の扉をあけて』感想

ソルベット王国編、完!
という感じではありませんが、とりあえず一段落・アリシア攻略戦終了、といった感じだろうか。
どんよりと暗雲が立ち込め、冷気が肌を刺す……そんなソルベット編特有の空気を逆用した展開か。

 

61 話 アリシア 箱

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

『ジュエル』開始時点から描かれてきた、アリシアさんと "天岩戸" のイメージ。
今回はいよいよその "岩戸" が開かれるお話なわけだけど、ここで "女神" たるアリシアさん自身に踊らせるのが、まぁなんとも捻った『フレンズ!』らしい展開というか。"踊り子" の踊りで "岩戸" が開いて "女神" が外に出てくるというわけではなく、"女神" 自身が踊って、その後で "岩戸" が開く、という構造だもんな、今回のお話。その前段階の「5 人(ひびき・PP・LMT)のステージでブリザードを吹き飛ばす」っていうのは、逆に "天岩戸" そのものなので、それを一段噛ませる所なんかも、まぁ捻りに捻った作りだ。

 

53 話 ドッキリ看板

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今回みおちゃんが立案したのは、まんま 53 話のドッキリのスケールアップ ver で、その辺は『フレンズ!』お得意の対比描写だろう(53 話はひびきメインエピ)。53 話は 1 年目で築き上げた各フレンズの "2 人" の絆をしっかり描いて確認したエピソード(であり、ひびきさんが初めてアリシアさんに寄り添った回)であったが、それに対して、国を挙げてお膳立てをし "2 人" を結びつける というのが今回のお話だ(っていいながら再結成はまだなんだけど)。
立案者がみおちゃんていうのは意外であり納得でもあり。他の候補者としては 53 話と同じくひびきさんか、"友達" 案件なのであいねちゃんか(ミライさんはこういう直接的な役割はせず、あるならヒントを与える役なイメージ)。ただ(先週描かれたように) "大人" の領域に入り込めない "幼い" あいねちゃんならこういう案にはならなそうだし、やはり彼女より "少し大人" で、かつアイドルとしても格上なみおちゃんの方が自然か。先週先々週とあれだけかっこよく啖呵を切ったんだからひびきさんでも良かった気はするが、まぁそこは主人公特権か。或いは、みおちゃんがひびきさんから吸収した部分もあるってことか。あの子のアイドルとしてのポテンシャルの高さを思えば、まぁない話ではない。

"ドッキリ" や "騙す" という点には結構賛否がありそうな感じがする。
国を、笑顔を、父と母を、そしてアリシアさんの心を覆っていた、すべての元凶たる "ブリザード" を、反転し・利用して解決の手段とした展開は、個人的には大好きで(中身が壮大な茶番だったとしても)。

61 話 ソルベット王国民 凍る
61 話 PP LMT ひびき
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ただその為に国民も、騎士団や大臣たちも、シャルルくんも、そしてひびきさん達も凍った、ていうのはちと悪趣味がすぎる気がしないでもない。"ブリザード" が遠因で彼女は実の母を失い、その結果としてアイカツ!を "箱" に封じ込めたわけで。シャルルくんやひびきさんが凍ったと知った時の彼女、割と絶望感半端なかったんじゃなかろうか。(なので正直、私は作中のリアリティラインも考慮するとアリシアさんをポンコツ扱いにはできない。この状況は作中世界では相当キツイ気がする。)

61 話 アリシア 走る

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でも。
そんな中であっても。例えかつて封印したものであっても。皆を救えるのならば。
ステージに立てるだけの "強さ" を持ってるのが、アリシア シャーロットという少女なのだろう。

61 話 アリシア 拳
61 話 アリシア 口元
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冒頭の "岩戸" の話にも繋がるが、あくまで国の為に、皆の為にステージにたったアリシアさんが、その後で己の気持ちに素直になるという流れが、個人的には大好き。"王女" と "アイドル"、どちらも彼女を構成する大切な要素で、それらは切り離すことも否定することもできない。だからその 2 つをきちんと繋げる流れであったのがとてもよかった。(設定が違えばどちらかを選ぶ、というような話の展開もできただろうが、ここ数話で明らかになったアリシアさんの "重さ" には、それは似合わないだろう。)
「ひびきと再びアイカツ!をしたい」という気持ちと同じくらい「国民に笑顔を取り戻したい」という思いも大切なはずなわけで。そこにちゃんとラインが引かれたのは、とても良かったと思う。国のことを思って思いを封印していきた彼女の 5 年間も報われたような気がする。

97 話 エルザ VA
61 話 アリシア ソルベット王国民
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この辺の作り上げ方は "王女" という属性を持つアリシアさんならではという感じだが、やっぱどうしても同じ王族であるエルザ様を思い出してしまうわけで。己の野望に邁進し最後は切り捨てる所までいったのに、結果的に全員ついてきたという彼女の圧倒的なカリスマと、誇りと優しさを以て皆に寄り添い続けてきたからこそ、最終的に送り出される形になったアリシアさんの気高さと。同じ "王女" でもかなり違いがあるのが面白いですね(キャラデザ・CV 発表時はひびきさんばかり言われてたのも懐かしい)。

61 話 ひびき 抱きしめる

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あとはやっぱりひびきさんの変化・成長の大切な要素で。「君にふさわしいフレンズになった私を見てくれ!」と一方的に言い続けてきた彼女が、アリシアさんや国民達の顔を見て、その思いに気付いたというのが印象深い。最後の抱擁にしても、自分から抱きしめに行くのではなく、手を差し伸べて・受け止めたというのがとてもいい。彼女も彼女とて、きちんと成長しているのだ。

61 話 アリシア 日本へ

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アリシアさんのアイカツ!リハビリ」や「ジュエル集め」といった次のクエストが判明したのは、まぁガッチリ展開を組み上げる『フレンズ!』らしさでもあるんだが、なんか RPG 的な(クエスト先で次のクエストを拾う)展開の仕方でもあって、ちょっと面白かった。まぁでも先が見えたのは安心か、ブリザード問題をぶん投げられても困るし。
アリシアエピの次の展開が、「ひびきに追いつくため」に PP から学びを得るっていうのも『フレンズ!』らしい。ひびきさんは「トモダチカラを学ぶため」に PP へ近づき、へっぽこフレンズから見事に成長を果たしたのと合わせて考えると、まぁこの構図は「人間として成長した湊みお」「アイドルとして成長した友希あいね」という 1 年目 PP の構図と相似なわけだ。
『フレンズ!』は本当にこういうことするの好きなんだなぁ。(私も好き。)

ひびきさんのアリシアさんに対する接し方は、どこか初期みおを思い出すものがある。

アイカツフレンズ! 53 話『ひびきのショータイム!』感想 - アニメ雑感記

これまでの 5 話で描かれてた通り、ひびきさんはキリッとかっこいい所がある反面、対アリシアになると途端にチョロさを露呈していたし、ミライさんというよりはみおちゃんに近い所があるんだろう。
一方のアリシアさんは、その容姿や出自からいってもカレンさんがやったような王道お姫様っぽいのに、あいねちゃんに重ねられていたってことは、内側に似ているものを持っているんだろうか。こういった PP や LMT を反射板としてキャラの内面を匂わす描き方は実に『フレンズ!』っぽい描写だと思う。

アイカツフレンズ! 56 話『君だって My Star』感想 - アニメ雑感記
61 話 LMT PP
61 話 LMT アイビリーブ
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ひびきさんとみおちゃんの重ね合わせは 53 話の人間関係不器用っぽさなどでも示されていたし、PP と アイビリーブ の重ね合わせでいえば 56 話でまんまやってたことだ。そこでも 「ひびき - みお」 と 「アリシア - あいね」 という組み合わせだったことを考えると、まぁ意図的なんだろうなって思う。流石に主人公フレンズと同じくらいの尺を取ることは無理だろうが、それでも彼女達の今後の成長がとても楽しみ。
逆に PP は徐々にですが、LMT のように "導く側" へのステップを上がってる感じがありますね。

 

ソルベット編でずっと継続してきた描写も健在で。

58 話 アリシア 物憂げ
61 話 アリシア 笑顔
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アリシアさんの顔にかかる明暗であったり、

58 話 ひびき アリシア
61 話 ひびき アリシア
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ひびきさんとアリシアさんの距離であったり(拒絶の画角から "境界線" の内側へ)、

61 話 曇天
61 話 天使の梯子
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ずっと続いてきた曇天から天使の梯子が降りてきたり。

60 話 アリシアとソフィー 写真
61 話 アリシアとソフィー 写真
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ベタではありますが、こういうレイアウトや描写の差で魅せてくれるのはとても好きです。

 
あとはやっぱり欠かせないのがステージについて。

61 話 アリシア ステージ(1)

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新曲『あるがまま』ですが、まぁなんというか "表現力の暴力" という感じ。『ジュエリングチェンジ』はその性質上、どうしても暗め・寒色系のステージとの相性がいいんだけど(それ故にあいねちゃんは少し損してる感じある)、そこに透明感のある "氷" や "冷気" を合わせるとあんなことになるんですね……凄い……。

61 話 アリシア ステージ(2)
61 話 アリシア ステージ(3)
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周囲の暗さとドレスの輝きとでコントラストを出したり、周囲の光り物とドレスの輝きを呼応させたりするのは他のステージにもあるけど、そこに氷の透き通った感じや冷気の霞がかった感じが加わり、更にアリシアさんのオーラに含まれる(ダイヤモンドダストのような)空気中の光の粒も相まって、ただ只管に美しい。

61 話 アリシア ステージ(4)
61 話 アリシア ステージ(5)
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サビの荘厳なメロディが更に "寒さ" を強調してて、オーロラとか、雪とか、ダイヤモンドダストとか、ああいう厳しさを含んだ美しさがある感じ。

61 話 アリシア ステージ(4)
61 話 アリシア ステージ(5)
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アウトロだと更にスポットも加わって、ドレスやオーラや冷気といった一つ一つの光るパーツが更に輝きを増すんだから、もうただただ圧倒される。『チュチュ・バレリーナ』の逆光演出とか、『The only sun light』で太陽のドレスが顕現した時の炎とかと同じくらいの衝撃でした。お話の文脈とか関係なしに、純粋な "表現力" で脳をぶん殴られた感じ(勿論文脈自体もエモいんですが)。

 

とまぁ、アリシアさんのアイドル復帰・ひびきさんの成長・新曲お披露目・"ジュエル" に関する設定開示・次のクエストの提示 とボリューム満点なソルベット編のとりあえず一段落エピソードでした。流石に全部まるっと解決!というわけにはいきませんでしたし、少々モヤる所もありましたが、温めた熱量をきちんと消化(昇華)仕切れたかな、と思います。

61 話 次回予告 カエル
61 話 次回予告 HC RM わかば
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次回は久々日本居残り組の出番!次回予告や公式サイトのあらすじから既に偏差値吹っ飛ばしてそうなニオイがプンプンしてきますが、さてはて。ブリザードのせいで出番を奪われた 4 人の可愛い姿が楽しみです。

追記 19/06/14

・その 1 ―― ジュエルについて

59 話 回想 ジュエル
61 話 回想 ジュエル(1)
61 話 回想 ジュエル(2)
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筐体のことは全くわからないので、あくまでアニメ本編の描写を拾ってきただけなんですが、結局の所ジュエルは何個あるんだろう? 59 話の最後にひびきさんがアリシアさんに語った時の回想では 6 つの軌道が描かれていた。今回新たに描かれた回想では、アリシアさんが宝箱を開けた直後では 11 個の軌跡が、その次の打ち上げ花火のようなショットでは 20 の軌跡が確認できる。まぁ全てはバンダイ神の思し召しのままなんだけど。

 

・その 2 ―― アイドル・アリシア シャーロットの実力

58 話 PP  ステージ後
59 話 ミライ  ステージ後
60 話 ひびき ステージ後
61 話 アリシア  ステージ後
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アイカツ!ブランクのあるアリシアさんは、今のままではひびきさんに釣り合わないので、PP について実力アップを図る、と。「君にふさわしいフレンズになる」として努力を重ねた結果がこれって考えると、ひびきさんは泣いてもいいような気がする。

というのは置いといて。
超美麗なステージングや、普段からにじみ出ている強キャラオーラ、そして "あの" 天翔ひびきの相方で、LMT のかつてのライバルだったということを踏まえると、アリシアさんもまた強いアイドルだって考えるほうが自然だろう。と同時に 5 年のブランクがあることも事実で、それをステージ後の描写の差で描いたのかな?と思った。余裕綽々な PP・ミライさん・ひびきさんに対して、頬を赤らめ汗をかき肩で息をするアリシアさんの比較はとてもわかりやすい。

26 話 リリィ 体育座り

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ゴシックで、氷属性で、体力はないが、パフォーマンスの実力はあるっていうと彼女を思い出しますね。