アイカツフレンズ! 60 話『アイカツ!禁止令!?』感想
訂正 19/06/12
騎士団長の名前を間違えていましたので訂正しました。
誤) スノーデン → 正) スノーダン
少々情報量が多かったので、自分の中でまとめて消化するのに時間がかかりました。
気づけば『ジュエル』も 10 話目な『アイカツフレンズ!』 60 話。
1 クール目が 12 話までなのか 13 話までなのかはわかりませんが、アリシアさんのアイカツ!復帰とアイビリーブ再結成・エピローグ等をあわせたら、まぁぴったしな感じか。
お話の中心はサブタイにもある「アイカツ!禁止令」……というよりも、それを介して見えてくるアリシアさんのアイカツ!への思いや、祖国への思い、そしてその "核" を描くことにあったように思える。
アリシアさんがそれなりの "重さ" を持っていたことは、例えば 58 話で描かれた事情などからもわかっていた。そもそも "あの" ひびきさんの引力に負けず、一定の距離を保ち続けられてることからも、相応の重量が必要になるわけで。今回のお話では、いよいよその最も大切なカードが明かされることとなった。
『シリーズ』の中で明確に "人の死" を描いたのは、今までなかったと思う。それどころか故人の引用すら殆どなかったのではないか。それだけに、(回想中とはいえ)はっきりとその瞬間を描いたのには驚いた。アリシアさんを縛る "重さ" としてはこれ以上ないものだろう。
アリシアの帰国・レオ王の罹患・ソフィー王妃の崩御 の正確な時系列がわからないのであれだけど、まぁソフィー王妃も娘に "呪い" を残したくてああいう言葉をいったわけじゃなかったんだろう。あの言葉が "呪い" になってしまったのは、ひとえにアリシアさんの思いの強さ故なんだろうなぁ。祖国を大切に思う気持ちや己の血に対する誇り、そして亡き愛する母(ソフィー シャーロット王妃)への思い等。
ひびきさんがその思いを燃焼させ推進力を得ていたのに対し、アリシアさんはその思いに寄り添う形を取るというのは、先週も描かれた 2 人の差異だ。だからこそ彼女は楽しかった「アイドル」としての日々、自身にとっての最大の武器であるドレス、そして何よりひびきさんとの "これから" をも箱にしまいこんだ。いわば、半ば強制的に、でも自分の意志で "大人" にならざるを得なかったのが、王女・アリシア シャーロットの持つ真実であった。
アリシアさんの優しさが本物であることは、前回と今回のソルベット王国民の反応を見ればわかる。国家に守られるべき "子供" である国民達は、「アイカツ!をやらない」という抵抗を見せるし、権力者(であり武力をもつ = "大人")側である騎士団は「ステージの封鎖」という実力行使を行う。"子供" 相手であればそれこそ言葉遊びなんかで対処できるが、"大人" が相手となると話は違ってくる。
まだまだ幼い PP には手に負えないから "大人" であるたまきさんが出てくる展開は結構好き(すぐに役割を終えたけど)。PP にしても、"幼い" あいねちゃんと、彼女より少し "大人" なみおちゃんとでリアクションに差があるのも好き。
繰り返しになるが、今回スノーダンが行ったステージ封鎖と、前回子どもたちが見せたアイカツ!自粛は、どちらも「アリシア様を悲しませたくない」という同じ意味を持つ行為だ。それだけ彼女が愛され、必要とされてることの証になるし、またそれが善意からくる負の循環(= アリシアの為を思う→笑顔を生み出すアイカツ!を封じる→笑顔がなくなる)を生み出してしまう。これは妄想だけど、恐らく似たような感じでソルベット王国は国体を保ってきたのだろう。アリシアさんが国民を、国民がアリシアさんを互いに思いやることで結束を固め、寒さに抗ってきたのではないか。でもそれは硬直を生み、ジリ貧の消耗戦を展開するしかなくなっていたのではないか。『ジュエル』が始まった当初からアリシアさんの周囲にはブリザードが吹き荒れて閉塞感が漂っていたが、今回や前回の描写を見ると、その実情は想像以上の重さを持っているように感じた。
ソルベット編の中ボスとして、露骨な "嫌な大人" を演じてくれたスノーダン騎士団長は、立派だと思う。 敬愛し、守るべき主君の為ならば、自分の愛すべき娘たちからも石を投げられるのも厭わない。そして最後はその主君に怒られる。メイン視聴者層に対してはきちんとヘイトを集められる役割を担ってたんだろうが、おっさんの目には中々かわいそうに映った……。幸運だったのは、彼の心にもきちんとアイカツ!が届き、きちんと「胸がポカポカ」したところだ。万事解決の中で悪役ムーブをし続けるのはいくらなんでも辛すぎるので、みんなと一緒に幸福を分かち合えたのはよかった。
またこの時 "子供" の代表であり、かつ彼の本当の子供である三姉妹が、希望を見せてくれるのがいい。"子供" は守られるべきか弱い存在だが、守られるだけの存在ではない。「胸がポカポカする」というのは素朴で簡素な表現だが、それは嘘偽りないシューネちゃん自身の言葉である証で、それ故に芯を捉えていて、心に届く。やっぱり "子供" がいる理由っていうのはこういう所にあると思うんだよなぁ。それは、強制的に "大人" になる前の("子供" であった・王女でなくアイドルだった)アリシアさんもそういう存在だったということだ。それこそ今の PP のように。
"子供" といえば、忘れちゃいけないのがシャルルくんだ。58 話で有能っぷりをこれでもかと見せて「君が跡継ぎで良くない?」とか思われてたが、やはり彼も "子供" で、守られるべき幼さを持っている。
寧ろ母親の亡き骸の上で泣いていた姿を思うと、また姉が自らの思いを押し殺して奉公してるのを見たとすると、彼は彼なりに努力を重ねてあそこまで聡明になったのではないだろうか、とすら思えてくる(ちょっと思い入れ強すぎるか?でも見るからにいい子だからしかたない)。その優しさは姉譲りなんだろうなぁ。シャーロット姉弟がひたすらに尊い。
また、彼がスーパーマンではない所もやっぱり大好きなポイントで。"子供" としてできることは限られているんだけど、その範囲内で最善を尽くそうとしているのがわかる(ステージ作りの手伝い、鍵探し)。彼もまた、アリシアさんと同様に、急速に "大人" になろうとしている "子供" なのだ。
ソルベット編の中心は当然ながらアリシアさんで、今までも、そして今回もその表情が細かく丁寧に作画されてるのが嬉しい。今までは遠い国の、吹雪の中の、お城の中のお姫様というだけだったからなぁ。PP という暖かな光で熱が灯り、ミライさんという楔が打ち込まれてヒビの入った、ソルベットを覆う氷。それをひびきさんの炎が溶かしていくのが今回のお話だったわけだが、それに呼応してアリシアさんの表情も少しずつ和らいでいくわけで。そこを丁寧にスケッチすることでお話の説得力やテンションも増していく感じだ。
本筋と違う所でいえば、ソルベット編はカレンさんの行っているアイカツ! NPO の一つのモデルケースという側面も持っていて。アイカツ!を知らない人たちにアイカツ!を普及させていく具体的な行動が描かれているのが、結構楽しい。「なんか凄いことをやってる」というのを「なんか凄い」で終わらせず、お話に組み込むことで具体的に描いていくっていうのは、『フレンズ!』らしいクレバーな構成だ。『ジュエル』におけるカレンさんの凄みに、具体的な説得力が伴う感じ(DA アドバイザー神崎美月や、白鳥ひめが世界中を回ったことは伏せ札としての属性が強すぎてふわふわしていた)。
後これはどうでもいいことですけど、神城家のお嬢様があそこで取り出すのが "おこたとみかん(とすごろく)" という THE 庶民なアイテムなのがいいですね。あの場におけるアプローチとしては満点だとは思うんですが、あれはミライさんの影響なのか、あいねちゃんの影響なのか。妄想するだけでもちょっと楽しい。
というわけで、ソルベット編も佳境に入り、だいぶ雰囲気も温まってきたわけですが。
それでも全てを覆い尽くし、凍えさせてしまうのがブリザードなわけで。
次回はいよいよ アイカツ! vs 天候 となってしまうのか。アイカツ!はどこまで奇跡を起こせるのか。
(神城マネーが火を噴くのか)
とても楽しみです。
どうでもいいけど、ああいう状況下で「アイカツ!しよう!」と鬼のようにメッセージ届いてたら、そら辟易するわな(それも時差無視で鬼送信疑惑)。そんな中で届いた 53 話のようなひびきさんの変化。"いつもとは違う" 自分の好物を(かなり唐突に)聞いてきたメッセージを目にした時、アリシアさんは何を思ったのだろうか。53 話のアレは「相手のことを知ろう」という、フレンズ文法の基本の基のような内容だったが、今回明らかになったアリシアさんの事情を踏まえて見ると、また違った景色が見えてくる。
その "普通の" "子供のような" やりとりは、彼女にとって(例え一抹だったとはいえ)救いになったのではないだろうか。まぁ同時に再び心をアイカツ!に焦げ付かせる火種にもなったわけだけど。