アイカツフレンズ! 49 話『伝説の最終章』感想

残す所あと 2 話となった『アイカツフレンズ!』(の一年目)。
ラス前に描かれるのは、この世界を、物語を引っ張ってきた LMT について。

49 話 LMT(1)

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

DFC 以降の展開に沿って、LMT の「その後」について描いた今回。
ただやっぱり彼女達はこの作品において特別なキャラクターなので、エピソードも特別な意味を持つと思う。

このブログでも繰り返し書いてきたことであるが、『フレンズ!』は「フレンズ」の物語だ。"友希あいね" でも "湊みお" でもなく "友希あいねと湊みお" の 2 人で紡がれる物語だ。だからこそ、この作品が「アイドルユニットにとっての個人活動」というトピックに辿り着くのも必然であると言えるし、その語り部を LMT に託すのも『フレンズ!』らしい選択と言える。
LMT が『フレンズ!』における『神崎美月』であることは、最早いうまでもない。彼女達はこの世界・物語の原点であり、頂点であり、規範であり、理想だ。どのフレンズよりも成熟し、精錬され、絆が深い。"2 人での物語" を(分厚い冊子で何冊分も)語り終えた彼女達だからこそ、"2 人" の枠を飛び出ることが許されたんだろうな、と思う。すべてを語り終えた後に "3 人の物語" に戻ってきた Soleil と比較しても面白い。

100 話 ローラ旅立ち

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

或いは本作のプロトタイプのことを考えれば、"虹野ゆめのライバル" という脚本上の役割から脱して、一人のロックスターとしての道を歩んだ彼女のことも脳裏に浮かぶ。

カレンさんとミライさんの「その後」はそれぞれ違う。カレンさんはアイカツ!親善大使の経験から、世界中にアイカツ!の環境を整えることを決意し、ミライさんはアイドルのプロデュースに乗り出す。『アイカツ!』放送から 6 年、遂にアイカツ!NPO によって支援されるべきインフラとなった瞬間だ(?)。

49 話 カレンさん インフラ整備(1)
49 話 カレンさん インフラ整備(2)
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

"アイカツ!戦闘狂" から "博愛の天使" へとクラスチェンジしたカレンさんだが、彼女の物語が途上国のインフラ整備へ向かうのは納得だ。今まで(主にギャグ方面で)力を奮ってきた神城家パワーが、ここに来てカレンさんのキャラクターと合致した感じを受ける。

49 話 ミライさん 変装

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ミライさんについては特に濃く描かれないのは、久々に「ジョーカー」な感じだ。彼女自身に語らせるのではなく、彼女に導かれたあいねちゃんに回想させる曲線的な脚本もピッタリあってる。ミライさんがプロデュースに興味を持つにあたり、29 話が大きなウェイトを占めてるだろうことは想像に難くない。ただそれだけじゃなく、みおちゃんの影響も少なからずあったんじゃないか、とも思ったり。"友希あいね" という原石を見つけ出し、導いて上げたのは他ならぬみおちゃんだし、その姿を見て楽しそうと思ったりもしたんじゃなかろうか。あくまで個人的な妄想だけど、そういうプラスの循環があるのは『アイカツ!』らしい気がする。

『神崎美月』の新たな門出だというのに、LMT 以外ではみおちゃん一人に徹底的にフォーカスを絞るのも『フレンズ!』らしい筆の運びだ。LMT のポテンシャルを考えれば、HC や RM や他のフレンズも含めて大々的に送り出される様なお話でも違和感はない。でもそうはしなかった。LMT 以外には PP しかおらず、あいねちゃんでさえ脇でみおちゃんを支える形に終始していた。これはやっぱりみおちゃんが "LMT のファン代表" であるからかなぁ、と思う。

49 話 みおちゃん(1)
49 話 みおちゃん(2)
49 話 みおちゃん(3)
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「フレンズ」をメインとする本作において「個人活動」が大きな意味を持つというのは先述の通り。またその裏には常に「活動休止」や「解散」という言葉がちらつく。私達の世界でも、某国民的男性アイドルグループがそれを発表した時に大きな反響があったのは記憶に新しい。そういう「ファン」に対するけじめとしてライブ前のあのシーンがあったのかな、と思った。憧れの存在を前に一人の女の子に戻ってしまうのは、いつぞやの星宮いちごを思い出す。ただここで戻りきらず、相変わらずの生真面目さ・厳しさ・プロ意識が見え隠れするのが実に "湊みお" らしくて好き。というより寧ろ、こっちが(も)本来の彼女というべきか。

49 話 あいねちゃん(1)
49 話 あいねちゃん(2)
49 話 あいねちゃん(3)
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先述の通り、今回はあいねちゃんは支え役に徹していたが、そのムーブも素晴らしかった。"LMT 物語最終章" を目にしてメンタルぶれまくりなみおちゃんを、しっかり脇で支えていたのが素敵で、頼もしく、成長を確かに感じられた。こういう時に無条件で全体重を預けられるというのは、実に『夏樹みくる』的だと思う。

49 話 LMT と夕陽(1)
49 話 LMT と夕陽(2)
49 話 LMT と夕陽(3)
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そんな PP と LMT がライブ前に相対するシーンも好きだ。夕陽やそれを使った逆光というのは『フレンズ!』を象徴する演出の一つである。"ロマンス" や "青春" の文法を借りて画面の "エモさ" で殴っていくスタイルは、この一年繰り返し使われてきた。その夕陽の逆光で LMT の顔を陰らせる所まではいつも通りだが、そこで会場照明がつき、彼女達の顔を照らし出すのが "強い"。PP や HC は夕陽に照らされるだけだったが、それを塗り替えていく強さ・輝きというのも LMT は持っているのだ。あぁ、強い。

あとはやはり、「その後」を丁寧に描いて「2 年目」をしっかり見据えているのも見逃せない。2 年目に "宇宙" というワードが絡んでくることは既に判明していて、またカレンさんやあいねちゃんの夢・目標には "世界中" が絡んできている。そういった "舞台の広がり" について、唐突に切り替えず、話数を割いてシームレスに移行しようとしていることの表れが、カレンさんの NPO や HC の世界一周だったりするんだろう。また『神崎美月』ポジションのキャラクターが「世界を旅する」「アイドルをプロデュースする」といえば、どうしても「白鳥ひめ」と「神崎美月」本人が思い出される。『アイカツ! 2nd』や『星のツバサ』ではそれらを伏せ札として活用していたが、『フレンズ!』がそういう作劇を取らないのは "らしい" 気がする。これはあくまで作風の違いであって優劣や上下があるわけではないが、1 年目と 2 年目の接合点を丁寧に扱うことはここ数話徹底しており、ここで伏せなかったのも(ファンとのけじめも済ませたのも)ここ数話の展開に沿ってる。

44 話 舞人 かずね かがみ
45 話 よしつね
46 話 ミカ ミチ
47 話 ココちゃん
48 話 HC シュガーちゃん
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"一介のアイドル" を脱して、次のステージに行ったのも "らしい" 気がする。ここ数話の『フレンズ!』は、導かれる存在・向き合うべき存在・守るべき存在との付き合いを描いていた面がある。44 話では素人のメンズ 3 人に対して説得や演技指導を通し少しの成長・歩み寄りを描き、45・46 話では "子供" に向き合うことを通して自分たちのルーツを見直していた。47 話のココちゃんや 48 話の子猫のシュガーちゃんもそういう "未熟な存在" であって、それが成長したアイドルたちとの対比を生んでいた。

49 話 ミライさん(1)
49 話 カレンさん(1)
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その流れで見てみると、「学校」を作ったり、「原石」を「プロデュース」したりというのは、まさしくその極地であるように思える。冒頭でも書いたように LMT がこの世界の理想で規範であることを考えると、そこへの到達もまた必然に思えてくる。
また今回の描写は、やはり過去の前例を踏まえている気もする。「 "一年間かけて追いかけてきたもの" を超える価値観」をどう作るのか、というのは 2 年目に課される難しい課題だ。神崎美月(の座す SLQ の玉座)や白鳥ひめ(が纏う S4 の制服)を追いかけるべきものとして描くからこそその価値観は大きくなり、その価値観が大きくなるからこそ 2 年目に求められるハードルは高くなる。『2nd』ではそれまで神話的な扱いだった『マスカレード』を(WM・2wingS クラスであれば)現実的に手の届くものとし、そこを超えるという形で話を展開していった。『星ツバ』では VA という新たな価値観・SPR コーデや太陽のドレスといった物質的なトロフィーを設定し、話の軸としていた。じゃあ今回そういうものが描かれていたのかというと、そういうわけじゃない(そもそも「ジュエリングドレス」というワードはもう判明している)。

49 話 ミライさん(2)
49 話 カレンさん(2)
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でもこの一年間 DF としての役割を全うしてきた他ならぬ LMT が、「DF を超える価値観」について自分たちで見つけ、その道を歩んでいくことを決意したっていうのは、『アイカツフレンズ!』という作品において(或いはその中の全てのアイドルたちにとって)とても大きな意味を持つように思える。"DF になることが全てじゃない" "DF の上を目指すことができる" という価値観は、ともすればこの一年間の否定にも成りかねない(だからこそ従来の 2 年目作品はこの点の扱いが難しかった)が、頂点を演じきった LMT の 2 人がそれを語り、その一歩を踏み出すことで、1 年目を肯定しつつ物語を前に進めた感じが、個人的にはした。
あとはやっぱり、"解散しない" ことの強さも書いておかなければいけない。解散(活動休止・復活・活動再開)はそれだけで強いインパクトを持つし、お話を進める上での強力な燃料足り得る。でもそのカードを切らずに、"教える立場" になった上で更に "アイドル" としての LMT を続けていくことの宣言は、制作陣からこの一年間描いてきた物語と来る 2 年目に向けての強い自信を感じた。正直解散→復活をしない LMT の 2 年目での扱いって(なまじ持ってるポテンシャルと文脈が大きい / 太いので)くっそ難しいんじゃないかって思うんだけど、まぁ今までの 48 話を観てたら十二分に信頼できる気がする。

49 話 LMT(2)

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

LMT、本当にとても偉いキャラクターだと改めて思いました。『アイカツフレンズ!』における『神崎美月』をきちっと全うしてくれた。時に厳しく、時に優しく、先輩として、壁として、友達として、そしてラスボスとしてちゃんと物語を引っ張ってくれてた。その上最後に "その先" に新たな価値観があることまでも示してくれた。それでいて物語から降りることはしないとか、本当に偉い。『アイカツフレンズ!』の中心で、最前線で、土台で、しっかりと物語を支えて、進めてくれたと思います。し、そんな彼女達の門出に相応しいエピソードだったのではないでしょうか。

49 話 次回予告 PP

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

次回ついに第 50 話。"2 人組" と "けんか" というのも欠かせないトピックではあるけど、最後の最後に持ってくるのは面白い。PP に関しちゃ活動休止も 101 番勝負もけんかではなかったしね。作品全体を通してみると、けんかっぽいのは 20 話(HC)や 40 話(RM)があるけど、さてどんなお話になるのか。とても楽しみです。


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