アイカツフレンズ! 28 話『ひとりでもフレンズ』感想

27 話 Pure Palette

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

アイカツフレンズ! 28 話。

この半年の物語の着地点となるお話。
OP・ED は既に変わっているけれど、話的にはここが一つの大きな区切りとなるお話。
第 2 クールの終わりとも、第 3 クールの始まりとも取れるかな。

長い『アイカツ!シリーズ』の歴史の中で、ユニットというのは沢山描かれてきた。ただその中でも、「ユニットの結論」を描いたものは少なく、"続けること" を選んだ Soleil・"やめること" を選んだ WM・"もう一度" を選んだ Tristar くらいだ。それだけ「ユニットの結論」というのは大きなトピックで、扱うにはそれ相応の大きな文脈や、積み上げられた描写、思いなどが必要となる。今回 PP とこのエピソードがぶち当たったのは、『フレンズ!』が「フレンズ」を中心として "2 人" を徹底的に描いてきて、その中心に『Pure Palette』がいたからだろう。彼女らは "主人公フレンズ" としてある種の "特権"、或いは "呪い" に立ち向かうこととなる。

というわけで、PP は歩みを止めることを選んだ。"2 人" から "1 人" と "1 人" になることを選んだ。無論、「解散ではなく活動休止」であるから、メタ的に言えば「主人公フレンズ」だから、彼女らが本当にバラバラになるということはないだろう。でも PP としての、或いは "友希あいねと湊みお" としての 1 話から続いてきた歩みが止まることは事実だし、それは『アイカツフレンズ!』というタイトルを持つこの作品にとってはショッキングなことだ。

この回の前半、これから先を暗示するかのように、PP は「みおちゃんの風邪」をきっかけに一度歩みを止め、あいねちゃんにもみおちゃんにも色々考える時間が与えられる。

28 話 みお(1)
28 話 あいね(1)
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「自分がもっとしっかりしていたら」という思いは同じなのに、どこかすれ違ってしまう様子がとても心苦しい。でもこの苦しさは、今までの描写が嘘でなかったことの証でもあるんだけど。みおちゃんが快復した後、あいねちゃんも撮影や取材をみおちゃんと同じ様にしっかりこなしていたことで成長を感じるんだけど、それもこれまでの描写の積み重ねを感じられるもので、それが止まってしまうことへの痛みにもなる。

28 話 Reflect Moon
28 話 Honey Cat
28 話 かがみくん
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彼女らを取り巻く周囲の状況もまた、同じように作用する。勝者となった RM はメディアに引っ張りだこで、画面の向こう側の存在で、今回 PP と絡むことはない遠い存在だ。HC は「敗者の代表」として、或いは PP にとっての「敗者の先輩」として、一足先に次の段階へ駆け出している。かがみくんも同様、まだメイクアップアーティストとしては駆け出しですらないが、でも確実に夢への階段を登り始めたことがわかる。周りは皆次の段階へ進んでいて、自分達は?という思いを強めてしまう。PP が足を止めているから、相対的に皆の進む速さが大きく見える。

28 話 LMTとみおちゃん

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今回ステージに立つのは LMT だ。そして彼女達もまた、RM 同様に PP と一切絡まない。ただその圧倒的な実力をステージ上で見せつけ、みおちゃんとあいねちゃんはそれを遠くの席から見ることしか出来ない。今回ステージに上がることを許されなかった PP は、BrFC での HC とダブる「敗者」ではあるけど、彼女らが「チャレンジャー」としての思いを声高に叫んだのと違って、PP の 2 人は静かにライブ会場から去るだけだ。

28 話 観覧車

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かつてプロポーズをした思い出の場所である観覧車もまた、遥か向こうにある。その前には断絶の川が流れていて、PP は近付くのを許されない。これは今回の彼女達というよりは、この少し先、活動休止した後で "あの日" を思う姿の暗示でもあるように感じた。

11 話 汽笛
28 話 汽笛
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あの日と同じように汽笛が響く。けどそれは 2 人の幸せを大海原の彼方まで運んでくれる様な響きではなく、"あの日" と "今" とを断絶する響きだ。進行方向も "あの日" とは逆で、断絶の川を登ってゆく。

27 話で RM は、「お互いに信じ」「思い切って」本音をぶつけ合った。今、HC やかがみくんは「思い切って」「今までとは違う」ことをやろうとしている。遥か遠くに輝く LMT を眺める前に、一度自分達自身を見つめ直すことを PP は決めた。

28 話 大人ズ

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こういう時の大人って辛いよな〜、という描写が更にグサグサくる。別に見守るしかないというわけではない(事実たまきさんは引き止めたと言ってる)が、結局最終的に決めるのは本人達であり、そこに干渉することは出来ない。ケンさんのいう通り、"大人達" はいくつもの "前例" を知っているというのも、苦味マシマシという感じだ。そして我々視聴者もまた、作中の "大人達" 同様画面のこちら側から見守るしかないので、物語のザラつきは最高潮に達する。

"2 人組のユニット" を「フレンズ」と名付けてタイトルにまで冠した以上、こういう話は避けることは出来なかっただろう。そしてその苦味もまたどう料理しても除ききれるものじゃない。ならばと、今までの自分達が描写してきたものを活かし、積み上げてきたものに敬意を表する形で、苦味を表現した。この試みは『アイカツ!』とも『スターズ!』とも違う、"2 人" であることを描いてきた『フレンズ!』ならではの苦味を生み出せていたと思う。
ただ、当然ながらこのまま苦いお話じゃ、いくらなんでも救われない。いやまぁ、勿論そういうお話もないことはないが、『アイカツ!』の名を冠するならそれは違うだろう。だからこの苦味をどのような輝きに昇華させるのか、これから先の展開が凄く気になるお話でした。

28 話 みお(2)
28 話 あいね(2)
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胃が痛いね……。