アイカツ! 76-88 話 感想

アイカツ!』 2nd シーズン 振り返り感想 第 3 弾。
2nd 内では第 3 クール(作品全体だと 7 クール目)についての感想です。

一年作品での 3 クール目ってのは起承転結でいうところの転なので、色々と物語が動き出していくる時期だ。
大空あかりと夏樹みくるという新キャラの投入とその掘り下げ、2 人組を重視する方向性への切り替え、勝負の舞台としての「パートナーズカップ」という中間イベント、WM の本格参戦、そして AIKATSU 8 の登場と、怒涛の勢いで色んな要素が動き出す。

特に、勝負論を展開する場所としてのパートナーズカップと AIKATSU 8 の存在はでかい。競争心を燃やしたり、火花をバチバチに散らしたり、敗北の苦味を噛み締めたりっていうのは『アイカツ!』にはない。その上でどのように勝負の尊さと大切さと重量を描くのか、その解答がこの第 3 クールとその先の最終クールだ。

 

 

 

 

76 話『びっくり☆フレッシュガール!』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

「自分が幸せだと思えることを見つけられるのは才能」
2 人目の少女がとうとう表に出てくるお話。
今観ると、観てるだけで何だが泣けてくる。本当に長い時間かけて描かれた主人公だなって思う。
高等部に進学した Soleil の 3 人に、学園長がオーディションキャラバン(要するに追加合格を決める試験)の審査員をオファーする所から始まる。ここまでの物語でアイドルとしては勿論、人間としても大分成長してきた 3 人の心をなぞるかのような A パート。いちごの天真爛漫な部分も、どことなく大人びた印象を受ける。こういう所をそれっぽいセリフでそのまんま描くんじゃなく、何気ない普段の会話や所作でそれとなく感じさせるのが、本当にとても上手い。ただ、大人になったからといってあの元気のよさやパワーがなくなったわけではなく、寧ろその点に関してはあおい蘭の支えを得て、より一層効果的に発揮されてるような気さえする。
一方のあかりちゃんも、モブ以外としては初めての登場。いちごと違ってこちらは初々しさ・素人っぽさを全面に押し出した描き方をしている。本格的に登場したのは初めてということを考えると、これくらいのわざとっぽい描写は必要なんだろう。それにしても 100 話後の未来を知ってる立場で改めて観てみると、そのポンコツ具合がとても愛おしいし、またここからの成長を思い出してしまって、目頭が熱くなる。


77 話『目指してるスター☆彡』

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名曲『オリジナルスター☆彡』の概念を叩き込むお話。
まずは新主人公恒例の諸々の儀式を終わらせる(といってもこの当時ではまだ 2 例目だが)。
そんでもっていきなりのいちごとの共演。きいやセイラの言葉を受けて、いきなりゲストに呼んじゃうっていう辺りは何とも星宮いちごらしく思う。「とりあえずアピールの練習しようぜ」みたいなノリ含めて、恐らく根底には自分が美月にしてもらった経験があるんだろうなぁ。
特質すべきなのはやはり、"自分だけの光" に目を向けるところだろう。星宮いちごに憧れるのはいいけれど、星宮いちごになることは不可能であるということ。そして、そもそもいちごがオーディションキャラバンで感じ取った光は、「星宮いちごのモノマネ」から生まれたものではなく『大空あかり』のものであったということ。この辺のお話に時間を割いて丁寧に描いてもらえるのは、未来の主人公の特権ともいえる。大事なのは、このお話の時点では、まだあかりは己自身の光を見つけられてない所だ。というか自覚すらしていない。でもいちごから言われて、自分にも "それ" があることを知り、追い求める決意をした。その決意の表れこそがあの鋏であるわけだ。今にして思えば、"ステージを目一杯楽しむ" ことであおいや美月や織姫の目を惹いたいちごと、ガムシャラにやる姿が "なんだか目が離せない" となったあかりでは、持ってる光が違うんだろうなっていうのは、この時点でわかるわけだ。


78 話『ミラクルはじまる!』

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物語の穴を埋める、最後のピース 夏樹みくる 衝撃のデビュー回。
お話の要素としては二つ。
まずは冒頭で前回のあかりちゃんの後始末。ボサボサ具合がかわいい。
そしてあかりの話題をフックにして美月が登場し、前回のいちごの答え合わせが行われる。視聴者的には今のいちごとかつての美月が重なるのは明白なんだけど、当のいちご本人はその辺に無自覚なのが何ともいちごらしい。そして、あかりのプロデュースに悩むいちごに呼応するかのように、美月もまた真っ白な原石を連れてくる。それこそが『アイカツ!』 4 強最後の一人であり、神崎美月の相方にして WM の片割れ 夏樹みくるである。圧倒的に「アイドル」である美月に対して、物凄く「一般人」の空気を漂わせるみくる。この組み合わせはやっぱり面白いよなぁと思ってしまう。美月とも、いちごとも、セイラとも異なる光がみくるにはある。
そしてもう一つの大きな要素は、パートナーズカップという、わかりやすい中間イベントの出現だ。2 人組ユニットで覇を競うっていう WM にお誂え向きのイベントなわけだけど、かと言って過度にバチバチすることはないんだろうな、という予測は今までのお話からつく。バチバチを全面に出すような感じじゃなく、仲間でありライバルであるという関係性の中で、支え合い・助け合いながら、競い合い・高め合っていく感じだ。まぁ実際のお話は観てのお楽しみなんだけど。


79 話『Yes! ベストパートナー』

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ユリカのパートナーを巡ってのアレコレのお話。なんだけど、それ以外にも色々詰め込まれたお話でもある。
2nd シーズン全体での立ち位置でいえば、物語の方向性を変えるためのお話だろう。即ち、これを機にメイン軸では 2 人 1 組でいくよっていう宣言みたいなもんだ。勿論それ以外のお話ではソロだったり、或いは 3 人以上のお話もあるし、何なら Soleil vs WM も控えているけど、最終的にメイン軸のお話は 2 人組に落ち着く。そのための出発点みたいなお話がこの回だ。ちょうど 1st に於ける Tristar 編と役割が近い。ただ、あちらは STAR☆ANIS 編終了以降はまたソロのお話に戻っていたけども。
それを推し進めるべく、作中では色んな組み合わせのコンビが描かれる。声質やダンスやフィーリング何かを確認するにあたって、近い未来で組むであろう組み合わせが暗示されていたり。例の蘭そらもここに伏線があったり。未来の 2wingS もだが、プロデューサーズに対する描写も貪欲に組み込んでいく。ただ、この辺りの描写って 101 話までの流れを知っているからこそわかるのであって、初見であれば "匂わせ" にはなってもそれ以上の意味は持ちづらいし、そこまで過積載とも思えないのかもしれない。実際、放送当時は「そういうことなんかな」とは思っても、逆にそれ以上は思わなかった記憶があるし。
そしてユリカ様である。というかかえでちゃんのイケメン度合いにやられてしまうところだ。成長の余地がないからこういうふうな役回りしか貰えないけど、逆にこういうメンターのような役割ならめちゃくちゃかっこよくこなせてしまうのがかえでだ。あと、1st の美月が拭えきれなかった泥(Tristar の去就)をここできちんとフォローしたっていうのも大きい。タイミング的にも WM 登場直後だし、遅くはないだろう。
冒頭、WM の登場で SL と DA がヤバイかも……とかいいながら、物語がそういう方向に行くことはない。むしろ主人公のいちごが示してるように、「一緒にアイカツ!するのが楽しい」という感じで進んでいく。流石にこの時点では、もう既に作風も 2nd の方向性も固まってるだろうし。


80 話『アイカツ!ブートキャンプ』

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トンチキ全振りのお話かと思いきや、王道正道の成長ストーリー。
何とかチャンスを掴んで SL への入学を果たしたあかりちゃんだったが、元々落ちこぼれスペックだったので、普段のレッスンでも遅れを取ることに。この辺の泥にまみれて砂を噛む苦々しい感じは、いちご世代にはなかったテイストで、個人的にはぐっと引き込まれる。そんな現状を打破するために、アイカツ!ブートキャンプに参加して っていうお話だ。ここでもアイカツ!らしいフィジカル至上主義が顔を出す。
このお話はいちごの言葉を受けて、あかりが視野を広げるっていうのが一番大切なポイントだ。描き方は大分違うけど、教訓の内容としては 5 話『ラン!ランウェイ!』と同じ内容だ。それをファッションショーで学ぶのか、それとも落ちこぼれを対象とした無人島でのトレーニング中に学ぶのかっていうが、そのまんまいちごとあかりの才能の差なんだろう。
いちごとあかりのやり取りも十二分にエモいんだが、個人的にはあかりと周りのモブドル達との会話がとても好きだ。日々のレッスンで自分と周りの実力差を痛感する度に、顔が落ちてしまい、視野が狭くなっていたあかり。だけどここにいるのは、自分と同じ(或いはステージ経験がないという点では自分以下)のアイドルの卵が沢山いて、自分が決して一人じゃないということを知る。まぁ下のレベルになればなるほど人数が多くなるっていうのは当然のことなんだけど(寧ろ美月のように頂点にこそ孤独がある)、当の本人にはそんなことを考えてる余裕なんてないわけで。でもその孤独感を、同じく底辺で孤独なモブドル達との言葉で払拭していくっていう流れは、とても "優しい世界" を感じられて、大好きなシーンだ。ペッパー軍曹の言葉で語られるキャンプ参加時のいちごは、その圧倒的バイタリティで周囲を引っ張っていったんだろう。あかりにそんなパワーはないが、どこか目が離せず、不思議と周囲に可愛がられる魅力がある。そういう、いちごとはどこか違うが、どこか似ている "スターとしての魅力" というのが描かれているお話であるともいえる。


81 話『ビビビッ☆パートナー』

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パートナーズカップ編も大詰め、いよいよ大会本番を迎えるお話である。
A パートで描かれるのは各ユニット毎の準備の様子。レッスンしたり、調査をしたり、話し合いをしたり、コミュニケーションを取ったりとその様子は種々様々。静止画ダイジェストじゃなく、全ての組み合わせをきちんと描いてくれているのが嬉しい。
その流れを受けての B パートは、いよいよ本命 WM の登場である。ここではその結成秘話が回想で描かれるわけだが、美月が SL 時代から目をつけていたと知って少し驚愕。ということは SLQC の頃には、既に来る日に備えて裏でみくるを鍛えていたのかな……。DA のアドバイザー就任はタイミングが重なったことによる偶然だったっぽいし、DA でプロデュースに目覚めて→みくる育成 ではなく、みくる育成の為に DA で育成プロセスも学んだ(体験した)というのが正しい流れか(ある意味インターンに近い?重役だったけど)。『神崎美月』という物語を語る上での『夏樹みくる』の役割というのが、アイカツ!の原点たる「観ている人を喜ばすにはどうすればいいのか」、即ち "ファンのため" の精神を思い出させる役である。逆にこういうことでさえ忘れていたってことは相当追い込まれていた時期だと思うし、ということは STAR☆ANIS 期間中~SLQC 前の超多忙期だったりするんだろうか。その流れであのマスカレードのステージ、そして自らの開幕記念ステージと続けたのであれば、相当かっこいいな、神崎美月…………。
最後に大会そのものが始まる。今にして思えば、この時点からマスカレードをじわじわ押し出して来てるし、そういう構想だったんだろうというのがわかる。あとは若干、いちごとセイラの "息の合う感じ" を全面に出しすぎている印象もうける。そういうのを何気ないやり取りや仕草で表現するのがこれまでの『アイカツ!』だった気がするし、いちセイの 2 人に関しても "正反対だけどどこか似ている" という面が今まで描けていたと思うので、別に今更それっぽいセリフを入れなくてもいいんじゃないかと思う。まぁ、この辺に関しては女児アニらしく、わかりやすさを優先したということなんだと思うけど。


82 話『めざせ☆最高のパートナー』

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パートナーズカップ編 最終話。
「足を引っ張らないように」と思いつめて視野が狭まっていたいちごとセイラだったが、自分達以外のステージ(ダイジェスト)を観て、顔を上げる。『あかり GENERATION』以降だったら、この辺のステージも話数割いてやったのかな、と思わなくない。逆に、いちご世代は勝負のコア部分以外を圧縮し、それ以外のエピソードと描写に話数を割く作りをしている。閑話休題として、「足を引っ張らないように」とか「最高のパートナー」とかこの辺りの言い回しは、やっぱり耳につく。この辺をもっと意識させず、自然と描けていればよかったと思うんだけど、マイナスな方に印象づいちゃってる気がする。ゴリ押しとかいう声が聞こえるのもこの辺が原因だろう。寧ろこれまではいい感じのバランスで SL と DA の交流が図れていただけに、もったいない。
本編の方はというと、いちごもセイラも勝負の悔しさを噛み締めつつ、ステージの楽しさを実感。過度に勝負心を表さず、それ以上に "楽しむこと" や "ファン" を大切にする辺りは完全に『アイカツ!』の文脈だ。
結局 WM の勝ちで大会は幕を下ろすわけだが、以前言われてたような「SL も DA も厳しい立場になる」なんてことはない。寧ろ「みんな凄いパフォーマンスをやった!アイカツ界も益々盛り上がる!」みたいな流れになる。これは作風だし、この方向性のおかげでいいお話が沢山生まれているのも事実だけど、一方でちょっと寂しくもある。結局、勝負論をきちんと扱えた作品は今現在にいたるまでないわけだし。
(『スターズ!』は中途半端すぎる。特に『星のツバサ』。)


83 話『おとめ RAINBOW!』

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「周りのことをちゃんと考えて、努力家で、優しくて、らぶゆーで」
おとめちゃんの星座 PR & オリジンを掘り下げる回。
2nd の目玉の一つだった星座 PR だが、その扱われ方は 1st の PR と比べると大分様相が異なってる。1st で観られたような、"何らかの課題克服に向けて頑張りその途中でデザイナーに認められる" というようなエピソードはなく、基本的に振り返ったり・見つめ直したり・思い出したりっていうテイストのお話が多い。ていうかぶっちゃけブランドやドレスといったものが、直接エピソードに関与しないお話の方が多い(1st の時点で皆デザイナーから認められたと考えれば当たり前だけど)。唯一ブランド要素がガッツリ関わってくるのがそらだけど、彼女のキャラクターを考えればそれは当然なわけで。
そんな流れの中でのおとめ星座回であるわけだが、今回も HAPPY RAINBOW に対する思いとかそういうのが掘り下げられるわけではない。その代わり、マリアを聞き手役に迎えて、自身のオリジンを回想で話していく。"未来向きの今" の話ではない、完全に過去のことを話すということが『アイカツ!』では特に珍しいということは今までの感想にも書いてきたが、今回もその特別なお話というわけだ。このようなバディのどちらかを掘り下げる話っていうのをパートナーズカップ前に全組分やるってのは、やっぱ話数的に厳しかったんだろうか。この後に『幻想曲』があることを考えても、この辺はまとめて 2 人組を描くという期間なんだろう。
肝心の本編の内容は、マリアちゃんが言ってくれた通り「おとめちゃんがそうやっておとめちゃんになった」プロセスがしっかりと語られていて、とても良かったです。


84 話『割いてミラクル!』

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みくるちゃんの星座 PR 入手回。
ViVid Kiss に対する思い ってーのはあんまし描かれない(ひなきの初 PR の方が描写が厚い)。ただ、初のソロステージ・ミラクルフラワー・PR 入手・WM の仕事 というマルチタスクに必死に取り組む姿っていうのは、結構 1st の PR 回っぽい作りだ。新しい学びとかがあるわけじゃなく、ただファン(= みくるの場合はお客さんも→今回は KAYOKO)の笑顔のために頑張るっていう、由緒正しき『アイカツ!』。その結果として KAYOKO に認められるところまで含めて、懐かしい雰囲気すら感じる。
このマルチタスクに対して、何らかの工夫とか、策とか、周囲の協力を得るとかじゃなくて、ただ只管に頑張るっていう脳筋な解決法を採用しているのは、恐らく美月の影響なんだろうなと思う。寧ろハードスケジュールの合間に自分で仕事詰めちゃうような人だからな……。
そしていよいよ出てくる、"マスカレード超え" という目標。9 月までに ていうのが何ともいい難い"販促アニメの空気" を醸し出しているが、もうちょいオブラートに包めなかったんだろうか(或いはみくるの事情が判明してからタイムリミットを設けるとか)。何にせよ、いちご世代の終焉を感じさせるお話でもある。


85 話『月の砂漠の幻想曲』

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蘭ちゃんを主役にした、演技のお話。数あるお芝居の要素の中から殺陣にスポットライトを当てた回。
殺陣はリアルに、でも殺陣は痛快に ていう二律背反を堂々と言ってのけるのが、とてもお仕事アニメらしくて好き。リアル(現実)ではなくリアリティ(現実性、現実っぽさ)を確保した上で、どう "演出" を乗っけるか、プロらしさが感じられる部分でとっても好きだ。
そういうプロの仕事を学ぶ蘭に対して、プロのデザイナー・風沢そらはどう応えるのか。その解答としての「剣士に憧れるお姫様」ってのは中々可愛らしく、それでいて的確な答えな気がする。
このお話も劇中劇にはそこまで尺を割いてない(というかオーディションだから劇中劇ですらない)。映画・ドラマ・舞台を題材としたお話であっても、ちゃんとエピソードを作ることが出来るという好例。まぁ、『アイカツ!』の場合は、しおんちゃんで何話も作ってるんだけど。殺陣という一要素に注目して話を作ったり、この辺もどことなく 1st から続く伝統的な『アイカツ!』のお話っぽい空気がある。


86 話『マイ ディア アイドル!』

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らいちにスポットを当てた、いわゆるサブキャラ回に当たるお話。
イベントの中心にいるのはあおいだけど、星宮家でのいちごとらいちのやり取りも尺多めに描かれるし、ステージパートもあおいソロではなくユリカまでの 5 人で『fashion check !』のリメイクだし。
主に描かれるのは、らいちがあおいのことを大好きだということだ。何と言っても「Go Go あおい大作戦!」がマラソンなのがミソ。確かにあおいちゃんは、(アイドルに関しては幅広く興味を持っているがその中でも)特にお約束とか伝統とかそういった方面が好きそうだもんな。また、それがフィジカル至上主義の『アイカツ!』にドンピシャなのが面白い。
"あおい推しのドルオタ" って面だけじゃなく、きちんと "星宮いちごの弟" かつ "星宮家の長男" ていう部分も描かれていたのがとてもいい。特にいちごとの独特な距離感・姉弟感が好きで、セリフだけじゃなく絵やコンテや演出を駆使して描き出している。それに単なる弟ってだけじゃなく、成長も感じられるのも見逃せないポイントだ。『アイカツ!』は言わずもがなアイドルの作品なので、アイドルでないらいちの出番は限られている。ただそれは画面上に描かれないというだけであって、成長してないわけではないのだ。そして恐らく、彼がここまで頑張ってお店のお手伝いや部活のキャプテンを務めてこられたのは、いちごやあおいの姿を観ていたからだろう。これは今回のお話にはっきりと描かれてるわけではないが、この作品はこれまで 80 話以上かけて、そういう部分を視聴者に想像させられるだけの物語と描写を積み上げてきた。そういう想像ができるだけの解像度がある。今まで "ファンのため" を大事にしてきたこの作品が、その "ファン" に与えてきた影響、それを "ファン代表" であるらいちにスポットをあてて描く。このお話はそういう回なんだと思う。
後、この回で大切な要素として「AIKATSU 8」の発表というものがある。言わずもがな、これは筐体要素であり、終盤のお話に必要なものである。まぁ、Tristar 編からユニット重視のお話へと丁寧に繋げた結果の STAR☆ANIS と比べると、些か唐突な感じは否めないが(選挙戦も個人戦だし)。とはいえ、ある意味ここで頂点に立つ人間を 4 人に絞るわけだから、必要な展開ではある。


87 話『ソレイユ☆ライジング!』

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『ソレイユ☆ライジング!』っていう感じの回(了)。
対決がメインの 2nd シーズンだけど、バチバチ感は捨てて、優しい世界の中で切磋琢磨し高め合う方向性を採用した。それでも対決がメインであることは変わらないので、勝負の場は用意してあげなきゃいけないし、お話の方向性として(トゥインクルスターカップへ繋げるため)そういう空気感も保っておかなきゃいけない。て時に頼りになるのは、やっぱり我らがグレートマザー・神崎美月だ。本当、狂言回しとしても優秀だよなぁ。
Soleil vs WM っていうのは、ある種の儀式でもあるんだろう。我らが最強の Soleil に WM がここで勝つことでその格を上げて、AIKATSU 8 とその先にある最終戦の価値も引き上げる。これはそれだけ美月の目指すモノが高いってことの意味でもあるし、そっくりそのままマスカレードの格を指し示してるのと同義だ。
Soleil が WM 対策として行ったのは、相互の一日マネージャーによって "今" のお互いを把握し合うこと。ここでも抜け目なく "星宮いちごの天才性" を描いている。まぁ Soleil メインの話なんだから当然といえば当然か。それでもやっぱり、前回らいちの前で見せたお姉ちゃんらしい姿とは一風違ってて面白い。
そしてこのバトンを受け取るのが最強候補 WM。バチバチ感がないっていい続けてきたけど、その中でも勝負が纏うワクワク感をちゃんと描けてるのは流石だと思います。というかその為の美月と WM って感じがする。


88 話『伝説をつむぐ場所』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

「伝説は 1 人では作れない」
ライバルやパートナーがいて初めて高みへ望めるということ。
かつてのマスカレードは、お互いが最高のパートナーだったからこそ伝説を作れた。ならそれ以上にいくにはどうすればいいのか?マスカレードを越えるにはマスカレードに足りなかったものが必要になるわけだけど、果たしてそんなものが存在するのか?っていうのの答えがこのお話でズバリ描かれる。即ち、共に競い合い、高め合えるライバルの存在だ。
今回の対決ライブを経て、WM はもう一つ上のステージに辿り着いた。恐らく Soleil も一つの成長を経ただろうが、それよりも更に一段高いステージだ。でも、美月が目指すのはその更に上であり、そこまで引き上げてくれる翼が必要になるわけだけど。
しかしまぁ、ここまで修羅の如く "上" を目指し続ける美月さんは恐ろしい。だからこそ、それが成された時に燃え尽きかけてしまうわけだけど。この辺の文脈を踏まえて『フレンズ!』 41-42 話なんかを観ると、一層あのお話がエモくなる。神崎美月と夏樹みくる、神城カレンと明日香ミライ…………尊いですね。 

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