Web アニメ アイカツオンパレード! 6 話『花咲くステージ 後編』 & 全体感想

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

遂にやってきましたドリームスクールグランプリの決勝ステージ。

それぞれの学園の思いとプライドを背負い、代表同士が火花を散らす(?)。
ノエルとあかりにとっては、"約束" 叶う念願のステージだったり。

 

そんなこんなな、Web アニメ『アイカツオンパレード!』の最終話です。
ついでに全体の感想も書きます。

何だかんだで配信日から一ヶ月経ちそうなのは内緒。

 

 

一言でいえば過積載。
まぁ何度もいうように設定と尺を考えたらしゃあないところはあるんですが。
にしても、同日公開の 5 話がかなり要素を絞って狭く濃く深く描いていたので、
それと比較すると消化不良な感じが否めませんでした。

とはいえ、(これまた何度もいうように)約 10 分という尺によく収めたなぁ、とも思います。

 

 

 

つーこって本題。

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ステージ開始前のあれこれ絡みがあり、新曲『In Bloom』のステージがあり、その後のオーディエンスのリアクション、結果発表、優勝者のスピーチ、舞台上での絡みがあってイベント自体は終了。
シチュエーションをその後の打ち上げに移して、敗者組の描写や、いちあかの絡み、音城姉妹、らきノエ等を描いて終了 という流れ。

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

大きなイベントの後始末をしなくちゃいけないので、拾わなきゃいけない要素が多く出てくるのは仕方ない。そんな過積載な中でも、抑えるべき所(ノエルの顔・セイラの涙・あかりの言葉 etc)にはしっかりリソース(尺 or 演出)を注いでいるし、何だかんだ厳しい制約の下でやれることをやってる感じは伝わってきた。

そうはいってもやはり、全体的に消化不良な感じは否めない。そもそもの話として、"学園対抗" を押し出していたはずなのにその雰囲気(各学園の色・或いはそれらがぶつかる様子)が全くといっていいほど感じられなかった点が厳しい。とはいえそんなもんは一朝一夕で描けるものではなく、というか『アイカツ!シリーズ』はそういう展開を描くのが苦手である嫌いがあるので(SL と DA の差異・四ツ星と VA の差異 等)、それをこの特別編のレギュレーション下でやれっていうほうが酷なのかもしれない。 

逆に というか、相変わらず「ドリアカを背負って」という言葉は空々しく聞こえてしまう。尺やらなんやら考えれば仕方ないことではあるんだけど、やはりノエルちゃんが普段 DA でどう過ごしているのか という点が抜け落ちてる以上、この部分に重みを出すのは難しい。

Web アニメ アイカツオンパレード! 5 話『花咲くステージ 前編』感想 - アニメ雑感記

そこで大切になってくるのが、やはり「音城ノエルにとっての DA」という部分だったんだろうなぁ、と今更ながら思う。5 つの学校全てを描写することなんて出来ないのだから、せめて主人公たるノエルちゃんとその足場である DA の繋がりは、やっぱりもっと欲しかった。

 

ってことで大切になってくるのは、やはりどれだけしっかりと『音城ノエルの物語』を描くことが出来るか という点だ(らきちゃんの前例を考えれば記憶なくなるかもしれないけど)。

Web アニメ アイカツオンパレード! 1 話『ノエルドリーム 前編』感想 - アニメ雑感記

話を少し変えて。この Web アニメに対して個人的に最も期待していたのは(上に引用してる様に)如何に『音城ノエルの物語』を描くことが出来るか という点だった。そういう意味で言えば、1 話から常にセイラを絡ませ続けて、かつ 5 話でじっくりあかりちゃんとのお話をやってくれたのは良かったと思う。

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

欲を言えば星宮姉弟との絡みももう少し観たかった。まぁ、らいちくんが出番をほぼ貰えないっていうのは 1 話で危惧していた通りだったのでまだ納得いくんだけど、比較的動かしやすそうないちごちゃんとの絡みが少なかったのは少し残念だった。

『あかり GENERATION』によって作られた「星宮いちごを遥か彼方の "てっぺん" として動かさないことで生じる、そこに至るまでの空白部分」という物語世界の構造を、今回のお話(ひいては『ドリームストーリー』自体)は上手く利用したしたと思う。

Web アニメ アイカツオンパレード! 5 話『花咲くステージ 前編』感想 - アニメ雑感記

(これは本来 5 話の感想で書くべきだった事だけど)いちごちゃんとの絡みが少なくなった一つの要因として、あかり - ノエル間の距離がはっきりして、ノエルちゃんの『アイカツ!』世界に於ける立ち位置がしっかりした(そしてそれが『2nd』時のソレと少し変わった)ということがあるのかもしれない。

"音城ノエル" を置き去りにした『アイカツ!』には一つの歪み(というには少々言葉が強すぎるけど)が生じていた。それはノエルちゃんとあかりちゃんの(アイドルとしての)距離感であったり、年下のまど凛世代が上がってきていたり、といった部分だ。

Web アニメ アイカツオンパレード! 2 話『ノエルドリーム 後編』感想 - アニメ雑感記

アイカツ!』 100 話では、同じ様に "次世代の可能性" みたいな感じで扱われていたノエルちゃんとあかりちゃん。それがいつの間にかとんでもなく差が開いていて、ノエルちゃんから観たあかりちゃんは尊敬の対象になり、横に並び立てるような存在ではなくなっていた。だからこそ、ノエルちゃんをそのステージに(多少無理矢理にでも)押し上げるための儀式、この Web アニメはそういう側面もあるのかもしれないと感じた。

Web アニメ アイカツオンパレード! 2 話『ノエルドリーム 後編』感想 - アニメ雑感記
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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

元々はあかりや珠璃の様にいちごから直接バトンを受け取る立場にいた(或いはそういう立場になれた)はずのノエルちゃんが、物語の進行と共に『アイカツ!』的年功序列システムの歪みに陥ってしまった、というのは 2 話の感想で書いた通りだ。そこからどういう風に音城ノエルの立ち位置を再設定するのかと言うのを注目して観ていたわけだが、その答えが 5 話のあかり・ノエルの会話であり、6 話のいちご・あかりの会話だったのだろう。すなわち、ノエルちゃんはあかりちゃんからバトンを受け取る立場に収まったわけだ。そうなると今までの例(美月→いちご→あかり)を振り返ってもわかるように、いちごちゃんの先達としての出番が少なくなるのも頷ける気がする。
(それを踏まえた上で、やはり "一番最初に好きになったアイドル" との会話が観たかったというのはあるが)

また、こういった周辺のキャラクターについてではなく、肝心要のノエルちゃん自身のお話はどうだったか というと結構印象が薄い。あかりちゃんを通じて『アイカツ!』の中枢を貫く文脈に居場所を得ることは出来たものの、それ以上の広がりがあったとは思えない。はっきりいうと、そこを描くことで精一杯だった感じだ。

唯一 1 話にあった「憧れはいちごだが、なりたいのはセイラ」てのはノエル個人の文脈っぽくて好き。

これは『オンパレード!』に於けるらきちゃんにも言えることだが、やはり "アイカツ!" という冠を掲げる中で同級生の仲間やライバルがいないというのは大きなハンデになってると思う。それだけ、横方向の絡みを描いて物語の幅を持たせるというのは "アイカツ!" という枠の中では大切なことなのだ。

閑話

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

らきちゃんも似たような立ち位置だったが、彼女の場合は "オールスター作品の主人公として" "全世代・全作品を渡り歩く" という使命をもって生まれた特殊なキャラなので、横の幅がないのは仕方のない部分があった。またその代わりというわけではないだろうが、ドレスデザインという強い軸を中心にエピソードを展開出来ていた(それが使えなくなった終盤がグダグダになったというのは以前に書いた通り)。

結局、この横方向の広がりがなかったことが、先述の「音城ノエルにとっての DA」が見えてこなかったことに繋がる。そして、それは 95 話が放送されるまでの『2nd』が抱えていた問題とそっくりそのままなわけで、こちらとしては結構なモヤモヤを抱えてしまった。

繰り返しになるが、普通の TV シリーズでさえ上手く出来ていたとは言えなかったことを、めちゃくちゃ厳しい制限のある Web アニメでやれっていう方がおかしいわけだけど。

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同級生が出せない分、この 2 人に「姉以外の DA 生」としての役割を担わせたんだろうなっていうのはわかるし、その役割をある程度はこなせていたと思う。だけど、やはりこの 2 人がいる場所はセイラやきいの隣というイメージが強く、"音城ノエルの日常" を感じさせるまでには至ってない気がする。

 

 

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ステージは決勝に残った 5 人による新曲『In Bloom』。
曲自体はサビの壮大な旋律が印象的で、中々どうしてクライマックス感の溢れる曲という感じ。 

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あとはやはり前半部のソロパートがかなり目を引く。メロディと振り付けにそれぞれの持ち歌を意識したモノが見られて、この 5 人にとっては集大成感さえ感じてしまうほどの構成。

このソロパートがちゃんとした引用なのか、それとも意識して全体の雰囲気を寄せただけなのかは、完全には判別が付かなかった。こんなブログ書いてるくらいなので、出来ればそこまでちゃんと解明してから感想を書きたかったんだけど。

ちなみに対応していると思われる持ち曲(と楽器)
ノエル …… トワイライトエトランゼ(ギター)
ひめ …… スタートライン!(バイオリン)
レイ …… 裸足のルネサンス(笛)
カレン …… 愛で溢れている(クラップ)
あかり …… START DASH SENSATION(ピアノ + ドラム?)

振り付けの方が全く確証を得なかった(推察は出来てもいざ見比べると『SDS』以外は全く同じではなかった)ので、メロディの方から推察。てか、メロディの方も全く同じフレーズが使われてるかどうかは判別出来ず、結局は楽器からの推察になったけど。どちらにしろクライマックスの曲なので文脈で殴るのは正しいと思う。

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ただ、5 人それぞれにソロパートを振るのはいいとしても、それらの合計が結構な長さだったのが、少し冗長的というか、曲が圧迫されてる印象も受けた。多分、フル尺で聴けば全然印象が変わるんだと思うけど。

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逆にサビではフォーメーションダンス + それを魅せるカメラワーク と、5 人であることを最大限利用した構成だったのがとても好印象。

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特に 5 人で円を作り、その中央にカメラを置いて、丸々一周パンニングさせながら、それぞれのアップをインサートしてる所なんかは大好き。個人的には『ヒラリ / ヒトリ / キラリ』を思い出す。数ある多人数ステージの中でもあのステージは特に大好きで、(望み薄なのは重々承知しながらも)いつかリメイクされないかなぁ と思っていたので、一部とはいえ同じような構成・演出のステージが見られたのはよかった。

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各ソロパートの切り替わりにそれぞれアイコンタクトしてるところなんかも好き。 

 

 

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最後に触れておきたいのが、TV アニメ『アイカツオンパレード!』本編との関係性について。

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先述したように、『アイカツ!』に於ける音城ノエルの立ち位置を改めて定めたという観点からすると、本作は大きな意味をもった作品になったと思う。一方で、『オンパレード!』本編が(らきちゃん以外の)リセットオチだったことを考えると、果たしてそこまで大きな文脈を扱ってよかったのか という点に疑問を持たざるを得ない。まぁそもそもその本編のオチでさえ、いちご・あかり・ゆめは何らかの記憶を保持していそうだけど PP に関しては一切の描写なし というあやふやな描き方だったわけだが。
ともあれ、『シリーズ』全体にとっても『アイカツ!』にとっても重要なお話を、リセットされうるような環境下での "特別編" で消費しちゃったところは、結構な疑問を感じた部分だ。

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あかりちゃんはまだ主人公だから記憶保持されてる可能性あるけど、主人公の系譜に属さないセイラなんかは問答無用でリセットされてそう。かわいそう。

 

 

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ということで、Web アニメ『アイカツオンパレード!』最終話 & 全体の感想でした。

ぶっちゃけ、全体的に期待はずれ感があった作品でした。『アイカツ!』の歪みに陥った音城ノエルに真正面から向き合い、大きな文脈の中での立ち位置を探すという大仕事をやってのけたことは立派だと思います。また、その過程で描かれたあかりからの言葉や、セイラの妹に対する思い等、描かれたものの中にはとても良いモノがあったことも事実です。しかし、同時にそれらは『オンパレード!』の下で描く・語るべきモノではなかったな とも思いました。物語の着地点を考えた時に、『オンパレード!』本編に於けるリセットオチがどうしても足を引っ張ってる感じがします。まぁ何度も繰り返してきたように、約 10 分 × 6 話という尺の上に筐体との連動イベントという制限があったことを考えると、かなり頑張った作品だとは思いますが。

 

今後『アイカツ!』の世界が何かしらの媒体で描かれるのかどうか。
描かれるとしたらその時ノエルあかりセイラの記憶はどうなっているのか。
なんというか、そういうモヤモヤが残る作品になったのは残念でした。