アイカツフレンズ! 42 話『トモダチカラのキセキ』感想
アイカツフレンズ! 42 話。
『フレンズ!』界の宇宙を飛び回る流星 LMT に、PP は何をもってして立ち向かうのか。
年明け 4 話・一ヶ月目にして、早速この一年の集大成とも言える回。
41 話で徹底的に積み上げられた LMT の「勝利するロジック」に対し、
42 話では当然ながら我らが PP の「勝利するロジック」が描かれる。
LMT は「英雄」と「英雄の女」のフレンズだ。
「世界中の人々にあらゆる垣根を越えて愛を届け」ようというカレンさんは、その全力を発揮してしまうと愛を届ける対象を壊してしまうという矛盾を抱える。しかし、彼女の目指す領域には、その全力(を越えた先)を持ってしなければ辿り着けないという板挟み状態にもある。更に、その飛翔にその翼は耐えられないかもしれない、という存在。天の高みへと登らんとするその翼は、勇気なのか傲慢なのかというのは数多の創作物で描かれてきた通りだ。『アイカツ!シリーズ』の始まりとも言える神崎美月その人だってそうだろう。この手のキャラはなまじ超スペックなだけに、偉い面倒くさいモノ(呪い或いは業)を抱え込んじゃうもんだ。
そこで表に出てくるのが LMT のジョーカーにして「『全てを愛する』あなたを愛す」人であるミライさん。勝ちに飢える獣を天使に変えてしまった彼女は、その(勇敢或いは傲慢な)天使の共犯者を買って出るキャラだ。「『全てを愛する』あなた」の全てではないたった一人の特別な存在として、受け皿であり共犯者でもある『チガカワ』な彼女は、相方と飛ぶための滑走路(或いは足場)となりうる存在を探し求める。そして PP をそのトリガーであると見定め、かつそれを引く役割をカレンさんに託した辺り、正しくジョーカーだった。
「あなたと 2 人であれば例え焼けても堕ちても構わない」とする LMT が披露したのが 41 話のステージで、焼け堕ちる(或いは焼き尽くす)覚悟をした彼女らには、圧倒的な説得力・勝利するためのロジックがあった。この強力極まりないロジックにどう対抗するのか、というのが今回 PP に与えられた課題である。
出てきた解は「勝てない」というものだ。
今まで誰も見たことのない『ミラクルオーラ』を出した LMT のステージは、まさしく「アイカツの限界を超えたその先の可能性(≒ビッグバン)」であり、その衝撃は見ていた人々全てを包み込んだが、爆心地に一番近かった 2 人は消し炭一歩手前になってしまう。ガクガクという手の震えは、今まで積み上げてきた「アイカツの足場」が震え、崩れ落ちそうな音でもある。
どこか不安定で崩壊寸前なそれはたまきさんに支えられるも、LMT の大きさを目の当たりにすると「ビビっと」自分達の小ささを実感してしまう。
そういった不安でダメダメな所をファンに包み隠さず見せるというのは、実に "友希あいね" らしい。ともすればそれは 9 話でたまきさんが訓示したような「ファンに甘える行為」に繋がるだろう。でもこの時の彼女らは、「ファンに甘えたくて(= 励まして欲しくて、トモダチカラをもらいたくて)」といった気持ちではなく、「友達には全て話したい」という純粋な思いだったろう(※)。それはあいねちゃんが言ってるように、今まさに崩れんとしている彼女らのアイカツの土台が、ファン = 友達の支えで成り立ってることにも起因する。
そういうことを理解してるからこそ、扉の外で聴いていたたまきさんも撮り終えるまで待ち、そっと 2 人を抱き寄せたんだろう。個人的にはあいねちゃんがトモスタを上手く活用している感じもして、こんなド終盤だけど今まで同様「あぁ、みおちゃんと一緒にいた影響を感じられるなぁ」とか思ってしまった。
※追記
見返したら普通に「貸して下さい」っていってた。まぁでも甘えとは違うよなぁ、と解釈。
何よりたまきさん自身が抱き寄せているし。 (了)
ひまりちゃんが、いろはちゃんが、涼香ちゃんが、イストリ王が、八百八のお姉さんが、そして HC が応援してくれるのは、ご都合主義でもなんでもない。この 40 話しっかり描写を積み上げてきた当然の結果だ。"友希あいね" を "友希あいね" として描いてきた描写が全て繋がっていた。
「ファンからの応援を力に変える」というのはアイドルに許された特権の一つだと思う。だが「ファンも友達」なあいねちゃんはそこから更に一歩踏み込む。友達の顔や名前、人柄、出会い等に思いを馳せることが出来る。そして何よりも彼女は友達の為に輝ける子だ。だからこそ「トモダチカラ」は彼女の強みとなる。
そして、彼女の 100 万にも届きそうな友達を代表するのが、湊みおだ。友希あいねの全てのファン、全ての友達の思いを一つに紡ぎ合わせて、それをあいねちゃんに送ることの出来る唯一の、特別な存在だ。W 主人公だからって、別に 2 人で受け取る必要はない。寧ろこの一年間描かれてきたのは、トモダチカラを送るみおちゃんとそれを受け取るあいねちゃんという構図だった。
Sugar Melody のイベントで喉を痛めた時も、初めてのソロライブで宣伝に四苦八苦していた時も、SHC で周りが見えなくなっていた時も。常にみおちゃんは「友希あいねの一人の友だち」として彼女にトモダチカラを送り続けてきた。だから事ここに至っても、この構図は変わらない。幾千幾万もの思いをみおちゃんが紡ぎ合わせ、あいねちゃんがそれを受け取る。その光の中で Pure Palette はステージに立つ。
これは個人的な解釈だが、この時点では PP と LMT のステージングは同格であると思ってる。LMT が積み上げてきたロジックはそれだけ強固なもので、ここまでやってようやく PP は並び立つまでにしか至らない。だから彼女らが LMT に勝つには後ひと押し必要で、そのひと押しをやってのけたのが LMT 本人達だったのではないかと思う。LMT の限界を超えたステージに、観客達はこれ以上のパフォーマンスはないと感じた。限界を越えたらすぐ次の限界が見えてくるのは道理だ。だからこそ PP はそこ目掛けて羽ばたくことが出来、観客はその羽ばたきに「もしかして」を感じることが出来る。PP という「全力を受け止めうる足場」を使って限界を超えた LMT は、今度は自分達が PP の足場となり、彼女らを上へと押し上げた。もしくは LMT から PP へのトモダチカラだったと言い換えられるかもしれない。
何が怖いって、それでもカレンさんの求める領域には程遠いということだ。そして太陽を望む彼女(達)は、恐らく PP のステージを足場としてまた羽ばたこうとするのだろう。
「フレンズはお互いを無限に高めあえる」というのはカレンさんがみおちゃんやかぐやちゃんに教えたことであるが、そこから更なる高みへ行くために、今度は "2 人" ではなく "2 組(2 人と 2 人)" で高めあっていこうというのが LMT の歩む道のりなのだ。果てしないなぁ……。じゃあ PP はどうするんだろう?と考えるのが残りの話数だったり、2 年目だったりするんだろうか。
(次回以降がどうなるかまだ全然わからないけど)『フレンズ!』の、あるいは『アイカツ!シリーズ』の現時点での集大成ともいえるべきステージが、前回の『プライド』と今回の『そこにしかないもの』であった。
LMT の『プライド』は、開幕オーラビカビカ、サビに近付くに連れてぶち上がっていき、サビでミラクルオーラ爆誕、そのままミラクルアピールで畳み掛けるという怒涛の構成(攻勢?)だった。個人的な感想だが、なんか由緒正しき『アイカツ!』のステージの最先端という感じだ。
対して『そこにしかないもの』は、最初のオーラが出るタイミングやミラクルアピールのタイミングも余り他のステージと変わらなかった。ぶっちゃけ「いやこれじゃ勝てんぞ?どうするん??」てなってた。からの一旦オーラが弾けて、暗転 スポット C メロ ミラクルオーラ 歓声だもんなぁ。
モーションやエフェクト等もだが、何より構成と演出が神がかり過ぎてた。すごかった。
決着の付け方も、着地点としては最高だったと思う。勝者は PP、つまりステージングや見てる人をより沸かせられたのは彼女達だったということ。
でもそのステージは、沢山の友達の支えや伝説を望む声、そして LMT 自身の後押しがあったればこそで成立していて、当の PP 本人達はただただ夢中で覚えていない。一方の LMT は封印していた力を自らの意志で解放し(バトル漫画っぽい)、自ら PP の足場となった。ここに PP と LMT の "格" の差がまだまだある様に感じられて、2 年目を控える物語としてはいい塩梅の着地に感じた。
私は『アイカツ!』も『スターズ!』も『フレンズ!』も変わらず大好きだけど、正直『スターズ!』においては制作陣が描きたかったことが全部描けてたとは思えない。恐らく虹野ゆめの両手からこぼれ落ちてしまったものはそれなりにあったと思う(同時に救われた人もいます、念の為)。それに対するアンサー、というわけではないが、友希あいねと湊みおと LMT を物語にキャスティングして 42 話かけてこの物語を描いてきたのは、そういった思いも(少なくとも私個人的には)受け取れた。「トモダチカラ」はパワーワードの様に扱われているが、その実とても繊細に扱ったからこそ、この着地点に辿り着けたように思える。シリーズ構成・柿原優子の珠玉の一本だったんじゃなかろうか、と勝手ながら思う。
とまれ、物語に一つの区切りがついた。これが 49 話じゃないことに驚きを隠せないが、残りの話に何をもってくるのか。とりあえず次回は DFC のエピローグ +α な内容っぽいが、『ダイヤモンドドレス』の重み(当然ながら物理的なことじゃなく)について触れられたりするんだろうか。
この 10 ヶ月間積み上げてきた描写、固めてきた足場、紡いできた物語をこれ以上ない形で昇華させた最高の一話だったと思います。本当にめっちゃよかった。