アイカツ! 89-101 話 感想

アイカツ!』 2nd シーズン 振り返り感想 第 4 弾。
2nd 内では第 4 クール(作品全体だと 8 クール目)についての感想です。

リアル時間で 2 年(作中時間で 3 年)続いてきたいちご世代の終幕を迎えるクール。
個別の掘り下げもあるが、話数のほとんどはトゥインクルスターカップ(TSC)とその準備に使われる。
マスカレード越えという野望、日本中に笑顔を広めるという夢。今まで世界を強固に守り、そして縛り付けていたマスカレードの重力から、アイカツ!を解放する為に神崎美月はステージに立つ。その先に何があるかは自分ではわからない、けど自身が見初めた相棒と自身が認めたライバルなら、その先にあるものを掴んでくれるはず という信頼の下で行われる、最後の戦い。文字通り、『アイカツ!』という物語を次のステージへ移すための盛大な儀式を、たっぷりじっくり尺を割いて描いているクールである。
その都合上、エピソードのピークは最終盤の中の最終盤に持ってこざるをえず、そこに行くまではその準備が優先されている。その為、大きなドラマなどを途中に置くことが出来ていない印象だ。これを「クライマックスに向けてムードが高まっている」とするか「準備優先でエピソードが薄味になっている」と感じるかは人それぞれだろうか。
TSC に向けてムードを高めてる最中に一際異彩を放ってるお話が、あかりメインの 96-97 話だろう。これは禅譲に向けてあかりをスタートラインに立たせるお話でもあるし、ひょっとしたら薄味エピソードの連発を少しでも補うという役割もあったのかもしれない。
それと、2nd の目玉ともいえる 95 話があるのもこのクール。色々と考えさせられるお話である。お話自体はとても大好きなんだけどね。

 

 

 

89 話『あこがれは永遠に』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ユリカの星座 PR 回。
今までの星座同様、ドレスどうこうブランドどうこうって話じゃなく、過去を振り返る感じのお話。
"アイドルはファンに夢を与える存在" なのだとしたら、新しいファンに対してもその強さでもって夢を見せてあげるのが王道なのかもしれない。それに対して今回のユリカは敢えて弱みを見せることで、ちまきちゃんの自分に対する信頼と説得力を勝ち取った。弱みを見せるべきか否かというのは、優劣のあるものではなく、あくまで作風と脚本に沿って選択されるべきものだろう。そういう観点でいえば、今回のユリカ様の行動は、満点を超えた最高級のムービングであるように思う。マジでかっこいい。
一人のファンを特別視することは、リアル(現実)であればそれは炎上案件になりかねない。だけど、『アイカツ!』世界でのリアリティ(現実っぽさ)は、そこで優しくすることを許してくれる。というか寧ろ優しくしないことを許さない。だからちまきちゃんの存在はユリカの心に留まるし、かえでやいちごは彼女を探してくれるし、ユリカは彼女に "本当の私" を見せてあげる。その優しさを鼻につかないものにする為に大切なのが、そのエピソードの太さ・お題目の大切さだ。そういう意味で言えば、今回のは(個人的には)大成功だと思う。特に「もしも今とは違う自分になりたいなら」から始まるユリカの一節は、未だ尚語り継がれてるということを考えると、どれだけ多くの人に響いたかわからない。WM を巡る 2 人組バトルの本流に入るお話ではないが、それでもとっても大切なことを語っている、とっても大切なお話だと思う。
バトルの流れには入ってこないが、それでも 2 人組の流れを引き継いでいるのは 2nd らしいか。かえでの立ち位置を端的に表したお話でもある。成長ポイントが残されてない為メインになることはないが、その実力の高さ故にバイプレーヤーとしては光り輝くかえでちゃん。ただ悲しい哉、以降の活躍はだいぶ先(具体的には Tristar 復活まで)待つことになるわけだけど(ユリカはまだスミレ関係で仕事があるが)。


90 話『ひらめく☆未来ガール』

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2nd のあおい回は本当にいい回が多いなぁ、てのを実感する。MV 製作回。お仕事アニメ要素が強い。
MV というアイドル文化に身近でありながら今までやってこなかった題材を取り上げている。85 話の蘭の "殺陣" もそうだが、あおいと蘭は Soleil 効果もあって出番多め & 1st で多く掘り下げられてる為、2nd でもこういうふうにちょっと本筋から逸れた "遊び" の回を貰えている。『アイカツ!』的にはお仕事アニメ要素がないと少々寂しくなるので(アイドル活動を描いて欲しい為)、その要素を確保する為に話数に余裕のあるあおい蘭に割り振るというのは、物語のリソースを効率的に使えてる感じがしていい。
その分、前回のような大きなお題目や概念的な教訓というものはない。とはいえ、あおいは MV・蘭は映画という大仕事をこなしているので、キャリアはきちんと積まれてはいる。寧ろ、わかりやすいお題目や教訓がない分、仕事に取り組む姿勢で成長を示さなきゃいけない為、その辺りの描写には気合が入っている。
後は今回の場合は何と言っても最後の MV だろう。長い『アイカツ!シリーズ』でもガチ MV は未だにこれだけなんだけど、それにしても気合が入っており、めちゃくちゃクォリティが高い。ここのクォリティがしっかりしている為、お話全体の説得力が確保される。いつもの 3DCG ステージも同様の役割を持ってるけど、より "製作" に焦点を当てたお話なだけに、いつも以上に重要であるわけだ。にしても本当にいい MV だよなぁ。


91 話『結成☆アイカツ 8』

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いよいよ、とうとう、遂に AIKATSU 8 が始動する回。即ち、いちご世代終了へのカウントダウンが始まる。
主に描かれているのは美月の凄み。STAR☆ANIS の時同様、あらゆる場面でリーダーシップを見せてくれた上に、ドデカイ目標まで掲げ上げる。「日本中を元気にしたい」とか、この辺は 88 話の感想にも書いたが、神城カレンに通ずるものがある。トゥインクルスターカップ終了時のスピーチを思い出してみると、伝説を残すことで全国のアイドルに火を付け、アイカツ!界全体を活性化したかったのかな、とも考えられる。そして、「明日をよくするためには、今日をよくしなきゃいけない」という『いちごまつり』のテーマは、ある意味この問に対する、いちごなりの一つの答えだったのかもしれない。
ともあれ、お話はここから一気に終盤へと加速していくこととなる。


92 話『サマーアイドルストーリー』

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「私、美月さんを超えたい」星宮いちご、覚醒回。
それは FGC とか SLQC とかでも思ったことだろう。だけどあの時と明確に違うのは、美月の凄さをはっきりと認識したことだ。「ステージに何人アイドルがいても、自然と視線を引き寄せる」。美月は常にアイカツ!界の先頭を走ってきた。そんな美月を超すことで初めて "誰も知らない未来" を手にすることが出来るという、そういう決意。この辺りは本当にめちゃくちゃ主人公していると思う。
やっぱり惜しむらくは、セイラの立ち位置だろう。神崎美月を 1st の頃からずっと側で観てきたいちごがこの境地に辿り着くのはわかるが、じゃあセイラは?って所だ。彼女も彼女なりに描写と物語を重ねてきて、一廉のアイドルはなってるだろう。それでも何かしら足りない気がするのが、やはり 95 話なんだろうなと思う。本当に 2nd について考えるに於いて、95 話の問題は色んな場所でネックになるなぁ。何がアレって、95 話自体がめちゃくちゃいい話なお陰で 101 話を観終える頃には全然問題なく感じられてしまうところなんだよな。これ書きながらも早く 95 話観たいって思ってしまうし。


93 話『トゥインクル・スターズ』

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トゥインクルスターカップ(TSC)編 2wingS 結成の巻 その 1。
ここからは TSC に向けたお話が展開される。その最初の段階としての 2wingS 結成。
今回はその中でも更に一番最初で、2 人を組ませるまでの道のりが描かれる。お話は、お互いが "違う" ということを認識するという感じの内容。無理に合わせる必要はなく、いちごはいちごのまま・セイラはセイラのままでいることが大切であるということ。ベイクドチーズケーキとストロベリーパフェの例えは、ちょっと先の未来にあるチョコかけポテチを思い出す。或いは更に遠くの未来の「ぶつかるくらいがいい感じ」とか。
正直、大きなことは描かれていない。「違ってるからこそ面白い」という新たな学びこそあれど、全体的に観た場合はクライマックスに向けての下準備っていう感じがする回だ。最終盤に向けてじわじわと盛り上がりを作っていくわけだけど、一方で "物語の終わり" がぼんやりと観え始めて、寂しさも増していく。実際はこの後も劇場版が一本残っていて、そこまでいちご世代の物語は終わらないわけだけど。にしても、夕日というシチュエーションでいちごとセイラにああいう会話をさせるっていうのは、終わりを強く象徴してる気がする。


94 話『ふたつの翼』

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トゥインクルスターカップ(TSC)編 2wingS 結成の巻 その 2。
ユニット組むことは決めたけど、ユニット名はまだ未定。ってことで、そこを決めましょうというお話。
Tristar を始めに今まで様々なユニットが登場してきたが、"ユニット名をつける" ってところはフォーカスしてこなかったトピック。最終盤の流れの中の一話であることに変わりはないんだけど、「ユニット名講座」なんかもあったりして、どこかお仕事アニメのような空気もある。ただ今までのお仕事回と明確に違うのは、このお話だけで完結せずその先を見据えているところだろう。「高みを目指す」「笑顔の輪を広げる」というユニットのテーマこそ掲げられるものの、この時点でそれを実現したわけじゃないし。この辺はやっぱり最終盤特有の空気を感じる。
一方、対戦相手の WM はというと、今日も今日とて高みを目指す活動中。なんというかこの辺の美月さんは展開上仕方ないとはいえ生き急いでる感じすらある。神城カレンがそうであったように、もっと早い段階で夏樹みくると出会っていたら、美月さんももうちょっと肩の力を抜くことが出来てたのかな、とか思う。
何にせよこのお話で 2wingS が表に出てきたことで、遂に役者が揃うこととなった。

 

95 話『夢の咲く場所』

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「なりたい思いがあれば誰だって。夢を実現する場所、それがドリームアカデミー」
DA の全体像~結成秘話にまで迫る、DA の全てを描いたお話。2nd シーズンの根幹ともいえる回である。
SL のカウンターパートとして登場した DA。伝統・厳選・根性の SL に対して、新鋭・皆・科学の DA という枠組み自体は今までも度々描かれてきたことだが、それを今回も繰り返す。しかし、いちごとセイラの入れ替えを利用し鏡写しに描くことで、その解像度を今まで以上に上げている。SL の追い込み型ってのは、やっぱセルフプロデュースありきなんだろうなってのがわかる。それだけの能力ある子だけを選んでいるんだろう、流石は伝統校。逆に DA の科学を利用したトレーニングというのは、出来得る限り色んな子をすくい上げてやろうっていう意図が見える。凡人が天才に挑むには、効率重視しなきゃ始まらないしな。あと、SL に芸事以外の授業があるのも、天才児を集めてるが故にそれだけの余裕があるっていうことなんだろう。
こういう DA の全体像を描いた上で、「じゃあなぜティアラ学園長は DA を作ったのか」という部分に踏み込んでいく。やっぱりこの辺りの描写が非常に強い。SL に落ちた子を拾うだけじゃ、織姫学園長の言うようにただの無責任で終わってしまう。だからこそのプロデューサーコースとデザイナーコース。憧れの芸能界へ色んな形で接点を持てるように、可能性を閉ざしてしまわないように という思いの籠もった学校設計。ていうか、これまだ開校したてだからそんな影響ないけど、それなりの年数経てば DA の影響力って相当なものになってそうだよな……プロデューサーとデザイナーを多数輩出するのって、アイドルを育てることよりも芸能界への影響がデカそう。さておき、今回この根っこの部分を描いたことで漸く DA は独り立ちした感じがある。
さて、95 話の位置問題についても少し考えてみる。A パートにあったような DA の普段の学園生活の様子は、もっともっと今までの話数で割り振ることは出来なかっただろうかとは思う。ただやっぱり、このお話で最も重要なのは B パートで描かれる夢咲ティアラの思いだろう。そしてそれをこの位置から動かすというのは、やっぱりちょっと厳しそうでもある。涼川さんの「音城セイラ、あんただよ」の威力をここまで高めることが出来たのは、この最終盤まで引っ張ったおかげだろうし。95 話の様なお話をもっと前に持っていけばそれだけわかりやすさは増すだろうが、一方で感動力は今回のよりも劣ると思う。個人的な好みになってしまうが、やはり放送当時この 95 話に心を打たれた人間としては、この位置にこのお話があって欲しいと思う。

 

96 話『レッツ!あかりサマー!』

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『大空あかり物語』の序章の最終章 その 1 みたいなお話。
こんな最終盤に TSC に無関係なあかりに 2 話を割くという采配なわけだが、これは禅譲への下準備そのものを意味するんだろう。この先の 99-100 話で描かれる 2wingS と WM の対決は、大空あかりにとって第 2 のスタート地点となるので、その場にいる資格を得る為のお話という感じだ。
まずは SP アピールの文脈が、完全にスポ根のソレなのが面白い。まぁ『アイカツ!』には全体的にそういう雰囲気が敷衍していたが、ここでは「高さ・姿勢・タイミング」というキーワードを出したり、ジョニー先生直々の指導を入れたりと、より一層スポ根色が強くなっている。1st でのいちごも、美月と共演するに当たって SP アピールの特訓をしたけれど、あかりが当時のいちごより劣っている為か、そういう説明や指導っていうのがより詳しく直接的に描かれている。やっぱり SP アピールの文脈については『あかり GENERATION』が最も強く存在していると思うし、その最大の理由はこの 96-97 話だとも思う。
この時点でのあかりは文字通りの底辺で、ドベだ。そしてあかり本人も言ってる通り、いちごや美月ってのは文字通りの頂点であり、遥か彼方の遠い存在だ。残酷だけれど確かに存在するこのギャップをきちんと描いてことで、『あかり GENERATION』を始める為のスタートラインを引いたんだろう。落ちるだけ落ちたので、あとは階段を(或いは『アイカツ!』的には崖を)駆け上がっていくだけである。
そして、いちご本人に向けて初めてはっきりと言われる「星宮いちごの天性の才能」について。まぁ、今までの振り返り感想に書いてきたような「ナチュラルにステージを楽しめる才能」とか「人を惹き付ける才能」とか「ナチュラルのキャラクター性」とか、そういった細かい所までは語られない。文脈的には SP アピールに限定した話かもしれない。とはいえ、今まで無自覚だった天才型のキャラクターに、その才能について明かすっていうのは、やはり物語の "終わり" を感じさせる。
にしてもジョニー先生の言の通りなら、中 1 夏頃までに SP アピールを出さないと厳しいらしく。ていうことは秋の編入生に求められるレベルって相当高そうだよなって。編入試験でアピール出せたいちごは確かに凄いけど、普通に編入してきて特に落ちこぼれることなく SP アピール出せるようになってたあおいも何だかんだ凄いよなぁって。あと入学時点でアピール出せたさくらとかも。
それにしても、このお話も『シリーズ』中ではとても珍しい "落ちたまま終わるお話" である。『アイカツ!』は基本的に一話の中で完結し切るか、もしくは対決中等ならテンションを保ったまま終わることがほとんどなだけに、落ちたままっていうのは本当に珍しい。それだけに、やはり特別な意味を持つお話であるといえる。


97 話『秘密の手紙と見えない星』

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大空あかりが、真の意味で孤独を脱するお話。テーピングも、擦り傷も、何もかもが私の味方。
見どころとしては、いちごのメンターとしての部分と、あかりの頑張りの 2 つだろう。
「名選手、必ずしも名監督にあらず」じゃあないけれど、天才いちごは落ちこぼれあかりにかける言葉を持ち合わせない。そこで背中を押してくれるのが、あおいからのあの手紙なのは構成が強い。これまでの 2nd の物語に対して、いちごの渡米はほぼ影響をもたらしていなかったが、この手紙の存在で一応の役割を得た(手紙自体は渡米前に貰ったものだけど)。この 96-97 話の 2 話は、いちご目線で観てもメンターのお話としていい出来のエピソードであると思う。『ジュエル』で観たかったのはこういうの…………。
あかり目線で観てみると、やはり一度どん底に落ちるのがとても印象に残る。別にいちご世代だって、今まで全く涙を流さなかったというわけではないが、それらは別れとか感動とかそういった感情であった。しかし、今回のあかりの涙は喜怒哀楽でいう所の哀であり、少なくともいちごは流さなかったタイプの感情だ。明るく優しい『アイカツ!』の世界だからこそ、こういう涙はどん底感を強めるし、それ故にここから羽ばたいていくあかりのサクセスストーリーに、いちごのソレにはない幅が生まれる。
斯くして『大空あかり物語』、その序章の終了である。いちごの天才性について本人に言ったり、メンターの役割を与えてみたりと、同時に『星宮いちご物語』の終了も確実に近付いている。いいお話だったし、今後のあかりちゃんの成長が楽しみになるエピソードであったが、やはりそれ以上の寂しさを感じてしまう。


98 話『ふたごのドレス』

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トゥインクルスターカップ(TSC)編 2wingS 結成の巻 その 3。
アイカツ!』のステージに於いて最も重要な要素が「ドレス」だ。これまでの描き方でもわかるように、 TSC はいちご世代最大規模のステージである為、そこで用いるドレスの重要性も当然跳ね上がる。その為の秘策として今回用いられるのがブランドのコラボだ。プロのデザイナーにとって自分達のブランドがどれだけ重い意味を持つのか というのはこれまでのお話でも散々描かれてきただけに、その垣根を超えるというのは普通なら並大抵のことではない。しかし、この作品は優しさ溢れる『アイカツ!』であるので、その点はあっさりとクリア出来る。そんでもってドレスもいつの間にか出来上がってる。今回といい 93-94 話といい、どうしても TSC への準備っていうのが全面にでて、そこに大きなエピソードは持ってこられない。まぁクライマックスまでタメなきゃいけないので当然なんだけど。何はともあれ、これで舞台は完全に整った。
この一連の TSC 準備話でいえば、2wingS 本人達と同じくらいあおいときいのコンビが目立っていた。若干彼女たちの有能さを立てるために、いちセイの情動主義・直上主義が抑えられてたきらいがあったけども、通してみた場合はいい具合に名参謀の姿が描けていたと思う。少しチート気味でズルい感じもするが、あっちはあっちで最強のマネージャー・月影ほのかさんがいるので、まぁイーブンってことで。

 

99 話『花の涙』

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TSC 直前~TSC 本番・WM のステージまで。
放送当時、衝撃の解散宣言の直後は「まーた美月の解散癖が」とか言われてたが、それは風評であり、真実はみくるさんがガーデニストとしての夢を追いかける為だった。2nd のメインテーマは「夢」だった とは思わない。しかし、DA にとって大切なキーワードであることは確かだし、"成長物語としての『アイカツ!』" を考えた時に、ゴールともいえる「夢」がとても重要であることは想像に難くない。また、美月・いちご・セイラが TSC の先・アイカツ!の未来について頭を悩ませている状況で、いち早くその先にある夢を見つけられたのがみくるっていうのは面白い。結局、みくるのこの思いと WM の決断が 2wingS にその先を意識させて、あの結果に繋がったともいえる。ということは『フレンズ!』の DFC は、この辺も少しオマージュというか意識していたんだろうか。最終戦直前にどっちかの陣営に乗り込んで、っていうのも同じだし。ただ、『フレンズ!』の場合はラスボスが主人公側に乗り込んできて、ラスボス側が本気を出す決心をしたっていう流れだったのに対し、今回のは主人公がラスボス陣営に乗り込み、主人公側が覚醒した(視野を広げた)って感じで、展開は真逆だけど。この辺りの対比は結構面白く出来てる気がする。
ステージはまさかの『Precious』の 2 番。半年間 ED で聴かせたことを逆用する構成だが、これが見事に効いている。1 番の歌詞は、普遍的な感謝の歌として解釈することが出来るわけだが、ここに 2 番の歌詞を入れることで一気に "WM の 2 人の歌" に様変わりするのが凄い。また、ただ単に 2 番を歌うわけではなく、「昨日までのつぼみ」「お陽様」といったキーワードから想起させるセリフ・描写を A パートに散りばめていたことで、2 番の持つパワーそのものが増している。2wingS や観戦していたアイドル達が言葉を失うのも納得してしまうくらい、演出・構成含めて圧巻のステージであった。


100 話『夢へのツバサ』

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アイカツ!』史上最大のステージ、閉幕。
伝説が更新され、一つの時代(或いは二つの時代)に終止符が打たれた回。
A パートでいきなりの 2wingS ステージ。この構成は何度観ても鳥肌が立つ。ここまでの物語は、視聴者に 2wingS のステージを最も楽しみに待ってもらうよう、その期待値やワクワク感を徐々に積み上げていく展開になっており、2wingS のステージは作品にとっての切り札であった。それを残り 2 話残してる状況で、1 話目の A パートで使ってくるという構成は、やっぱり攻めているように思う。ありがちな展開だと、100 話 A パートに WM のステージの反響やいちごとセイラのリアクション等を短尺で描き、B パートに 2wingS のステージと結果発表、101 話でその総括とエピローグ って感じだろうか。そこを、100 話 A パートで 2wingS のステージまで済ませ、B パートで総括、101 話は 2nd シーズンのエピローグと『あかり GENERATION』 0 話としたのは、やっぱりいつ観ても凄い構成に感じる。
1st シーズンから『あかり GENERATION』まで含めた括りとしての『アイカツ!』として観た場合、この 100 話の持つ意義というのはとても大きい。「神崎美月の重力からの解放」が果たされたお話である。"マスカレード超え" という目標に邁進してきた美月は、その先については触れてこなかった。これは彼女の意図的な行動だったのかはわからない。でも、描かれた事実としては、いちごもセイラもみくるもその先の夢を見つけることができ、TSC を足場として次のステージへの階段を登りだした。みくるのライバル宣言なんかはその最たるものだろう。これまで大黒柱として『アイカツ!』の天井を支えてきた美月だが、その支配下から 3 人は飛び立つことに成功したわけだ。結果としてアイカツ!の世界は今まで以上に広がることとなり、ひょっとしたらそれがきっかけで日本中にアイカツ!の輪が広がっていったのかもしれない。『あかり GENERATION』に出てきた種々様々な地方のアイカツ!も、これの影響を受けていたのかもとか考えても面白い。もしそうなら、美月の「日本中に笑顔を」という夢は確かに果たされていたともいえる。
ともあれ、これにて『アイカツ!』史上最大規模のステージは幕を下ろした。そして、1 話から続いていた星宮いちごの物語も一旦の幕を迎えることとなる。


101 話『憧れの SHINING LINE』

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アイカツ! 2nd シーズン』最終回である。
お涙頂戴の感動要素はなく、あくまで明るく元気にエンドマークを迎えるというのが『アイカツ!』流である。この辺は 50 話との違いであり、またこれ以降の作品でもよく観られる形である。
※『アイカツ!』 178 話・『スターズ!』 100 話・『フレンズ!』 76 話
お話の中身はもうほとんどあかりちゃんが主人公になっている。TSC のステージを観て「ふわふわ」しちゃうあかりだったが、これではレッスンに集中できないとして、自身の定期発表会が終わるまで「星宮先輩禁止」を打ち立てる。が、結局本人と出会ってしまい……? というゆるゆるなお話だが、『アイカツ!シリーズ』の場合逆に最終話らしくもある(100 話放送当時はそんなことなったけど)。
いちごが言葉をかけてあかりが吹っ切る、ってのは王道じみた展開だ。だけど、そのいちごの言葉がこれまでの全てを振り返ってる内容なのがもう "最後" て感じが強く出ている。あかりの「ふわふわ」に対して、いちごは「初めて見た美月のライブ」を例に挙げるけれど、個人的には最初の共演ライブの方を思い出した。翌日の朝の HR で上の空ってのも同じだったし。いちごは涼川さんとの(一方的に喋るだけの)会話を経て覚醒したのに対し、あかりは「星宮先輩禁止」からの追いかけっこからのいちごとの会話と、遠回りしながら時間を掛けて解決したというのが、2 人の違いをよく表している気がする。ここでいちごがあかりに対していう「ここにきた」というセリフが本当に大好き。簡潔で、ストレートで、何か知らんけどぐっと引き込まれるセリフだ。
後はやっぱり、WM の別れだろう。美月がこういう "弱み" を見せられる距離にみくるがいるっていうのが本当に愛おしいし、みくるのそこからの覚醒が本当に痛々しくもある。美月が背負っていたものっていうのは、本当に本当に大きいんだなぁと。LMT という存在を知っていると、この 2 人がもっと早く出会っていたら、色んなものが変わっていたんだろうなと思う。だけど、あのタイミングで出会い、このタイミングで活動し、そして解散したっていうのもまた、唯一無二の歴史だし、そして私はその歴史を好きになってしまっている。何にせよ、美月は涙を見せ合い、抱き合えるだけの相方を手に入れられたわけだ。一年前は過労で倒れながらもなお復活し勝利をもぎ取っていたと考えると、泣き顔を見せたくないから見送りに行かないとか、そのあと結局見送りに来たとか、随分と(いい意味で)弱いキャラクターになることが出来たと思う。それでもまだランキング 1 位を維持し続けている = 完全に重荷を下ろしたわけではない のは、劇場版の製作が決まっていたからだろう(ていうか制作自体この時点である程度進んでいるはず)。事実、神崎美月の完全救済は『いちごまつり』が終わるその時まで果たされないわけだし。

 

とまれ、これにて『アイカツ! 2nd シーズン』は終幕である。
DA と SL のバランスのとり方に苦労していたシーズンだったな、というのが一番の印象だ。その作風上、砂を噛み泥にまみれて敗北の惨めさを噛みしめるようなドラマは作りにくい。そういう制約下で "勝負" にスポットを当てようとしたわけだから、そら難しくなるわけだ。前半 取り敢えず勝負の場を頻繁に用意していたのは、その意気込みこそ良かったものの、結果はどっちつかずの勝敗が多く逆効果になっていた気もする。また、勝負に行くまでの過程も『アイカツ!』特有の優しさが、結果的に勝負の熱さを遠ざけてしまっていたように感じてならない。敢えて強い言葉で表現するなら、勝負が馴れ合いに見えてしまうっていうのは『アイカツ!』の持つ構造的な弱点だろう(だからこそ『スターズ!』が生まれたともいえる)。
美月の復帰とみくるの参戦により、話が大きく動く後半。この第三勢力との関係性も当初はバチバチする感じを見せていたが、結局は同じ様な距離感に落ち着いた。最終的に勝負そのものよりも、「アイカツ!の未来」へ話の主軸を移していったのは、自分達の得意分野に持ち込みたかったんだろうなという感じがする。人と人との関係性とか、視野の広さとか、夢とかそういったモノを描く方が『アイカツ!』の筆は活きる感じはするので。その上で、勝負の熱さも保てるように、じっくり時間を掛けて TSC の準備を描いていったんだろう。ただ、その結果として終盤に比較的薄味のエピソードが続いたのは否めない。
星宮いちごと神崎美月は表裏一体である為、星宮いちごが主人公の座を下りるこのタイミングで、神崎美月も物語上での役割を終えることとなる。繰り返し書いてるように、完全な終了は『いちごまつり』まで待つこととなるため、完全にフェードアウトしたわけではないけど、少なくとも TV 本編ではほぼ終了だ。まぁ、本当に立派なキャラクターだと思う。お疲れ様でしたって感じだ。

95 話を知ってる状態 & 『フレンズ!』(というか LMT)を知ってる状態で観る 2nd シーズンは、今までとはまた少し違った景色で見えました。また機会があれば、『神崎美月』について何かしら考えて、それをブログにまとめたいなぁ。

次回からは『アイカツ!あかり GENERATION』について振り返っていきたいと思います。3rd と 4th で分けようかとも思いましたが、まぁ『あかり GENERATION』はまとめたほうが全体像が掴みやすいと思うので、わけない方向で。また略記として『あかり GEN』とか書こうかなと思ってます(使うかどうかはわからない)。
あと、多分振り返りのペースは少し落とします。一週間に 1 クールくらいを目安にしたいです。