アイカツフレンズ! 67 話『ミライから、未来へ!』感想

祝!春風わかば、アイドルデビュー!な回。

f:id:hm_htn:20190726225819p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

SH 学園のオープンキャンパスのお手伝いを経て、自分に自信を持つことのできたわかばちゃん。
"真似が上手なこと" も自分の強みとして受け入れることができて、アイドルとしての一歩を踏み出した。
そんなわかばちゃんへの、ミライさんからの "最後の" ご褒美が、「デビュー」。
個人的にはわかばちゃんよりもミライさんが印象に残るエピソードでした。

 

f:id:hm_htn:20190726225912p:plain
f:id:hm_htn:20190726225918p:plain
f:id:hm_htn:20190726225923p:plain
f:id:hm_htn:20190726225931p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

まぁ、正直な話、やっぱり描写(というか尺)が足りない気がする。
ミライさんと "師弟関係の中でやる" 最後の特訓で、『アイカツ!シリーズ』恒例アイドルマラソンやら、沢でのバランストレーニングやら、崖登りやら…… それなりの描写を積み重ねていって、回想で振り返って、今回の描写を重ねてリフレインさせて…… そうやって感情を太らせていき、最後の崖を登りきる所でカタルシスを生み出す……やりたかったのはこういうことなんだと思う。それはわかる。わかるんだけど、そこまでの破壊力を感じなかったのが正直な感想で。

f:id:hm_htn:20190726230110p:plain
f:id:hm_htn:20190726230119p:plain
f:id:hm_htn:20190726230129p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

今回の描写で『アイカツ!』178 話『最高のプレゼント』を思い出した人は多いと思う。しかし描写こそ似ているものの、"星宮いちごを追い抜いて逆に手を差し伸べた大空あかり" に対して、わかばちゃんは "(ミライさんの手を借りず)自分の手で登りきった" というだけで、その描写の持つ意味は違う。あかりちゃんのあれは『アイカツ!』という物語の幕を下ろす為の行為であり、物語を(文字通り)走りきったことの証でもあった。それに対して今回のわかばちゃんは、あくまで "独り立ちした" というだけだ。ミライさんを追い抜いたわけじゃないし、況や自分からミライさんへ手を差し伸ばしたわけでもない。

f:id:hm_htn:20190720022902p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

彼女が前回、「どんなアイドルになれるかわからないけど、いつか自分にしかなれないアイドルになりたい」と語ってたように、『春風わかば物語』はまだまだ始まったばかりなのだ。『シリーズ』の持つ文脈の力を借りながらも、新しいことを描き出す。そういう形を取っていたのはとてもよかった。
けどやっぱ描写の薄さを感じてしまう……。描写の厚さに対して、178 話と比較するのは流石にフェアじゃないだろう。あっちは新旧主人公を持ち出して、3 年半分の物語をフルに使って殴りかかっていたわけだし。

f:id:hm_htn:20190203031026p:plain
f:id:hm_htn:20190726230808p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

じゃあ、ってんでもう一つ思い出されるのは同じ『フレンズ!』の 31 話『伝説の 101 番勝負』だろうか。
31 話は PP が活動再開をする運命の回だ。その終盤では 1 話のリフレインが徹底的にされて、1 話で描かれた "運命の出会い" の文脈を借りながら、1 話とは違った新たな始まりを描いていた。

今回のそれは 1 話から 31 話までのリフレイン、再スタートという意味合いが強い。だからこそ徹底的に描写が引用される。

アイカツフレンズ! 31 話『伝説の 101 番勝負!』感想 - アニメ雑感記

同じ景色なんだけど、全く違う、成長した PP がそこにはいて、徹底したリフレインだからこそ "新しい始まり" をこれでもかと描いていた。

アイカツフレンズ! 31 話『伝説の 101 番勝負!』感想 - アニメ雑感記

(子供時代のような物理的に無理な場合を除いて)やっぱり何らかの過去を振り返るなら、ちゃんとしたエピソードで具体的に描写して欲しい。登場人物達が抱いてる感情と同じものを、こちらにも抱かせて欲しい。わかばちゃんがミライさんの背中を追いかける日々の中で何を感じていたのか、それをこちらも実感を持って体感したかったというのが本音だ。

f:id:hm_htn:20190726225923p:plain
f:id:hm_htn:20190126012410p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

沢での一本足立ちとかマラソンデスマッチとか崖登りとかは、そういった薄い描写をカバーするために、可能な限り文脈から力を借りて、視聴者の感情を揺さぶろうとした結果なのかな、とも感じた。それだけにきちんとした過去の描写が積み重なっていれば、より一層破壊力を増しただろうな、と思わなくない。

 

f:id:hm_htn:20190726231104p:plain
f:id:hm_htn:20190726231110p:plain
f:id:hm_htn:20190726231117p:plain
f:id:hm_htn:20190726231124p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

冒頭にも書いたが、個人的に今回最も印象に残ったのはミライさんだ。
愛弟子のデビューに向けて東奔西走し、イベント会場や、デビュー曲、プロモーションに、ブランドに、ドレスにと、親バカっぷりを発揮。凄く過保護な感じもするが、LMT の片割れで『フレンズ!』の頂点に君臨する "明日香ミライ肝いりのプロジェクト" の集大成と考えたら、まぁこれくらいは普通な感じがする。SL 学園のただの一生徒でしかなかった大空あかりや、白鳥流放任主義の下で育った双葉アリアとは違うのだ。

f:id:hm_htn:20190506184453p:plain
f:id:hm_htn:20190511015002p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

これも多分わかばちゃんに対する描写の薄さ・少なさが原因かもなぁ、と感じる。54 話で顔見せを済ませた後はちょいちょい出てはいたものの、やっぱもうちょっと時間をかけて掘り下げてほしかった感が否めない。或いは描写量が少なくとも、ちょっと意地悪な感じの天才肌ライバル、みたいなキャラ付けだったらまた違ったかもしれない(初期ローラみたいな)。現状凄くいい子なのは伝わるんだけど、いい子過ぎて癖がないために、普通の後輩ポジに収まってる印象を受けてしまう(そしてあかりちゃんと比較してしまう)。名家出身の天才児北大路さくらやナチュラルボーン・アイカツフェアリー 双葉アリアのように、天才性をもっとガンガン押す方向性でも違う印象だったかもしれない(ラーニング能力は面白い味付けだったけど)。

ミライさんに話を戻すと、しっかりとしたプロデュース描写は勿論なのだが、それ以上に珍しく心情を吐露してくれるシーンが印象に残った。彼女はカレンさん同様、LMT として今尚『フレンズ!』界の頂点として頑張ってくれている。故にどうしても他者を助けたり、育てたり、導いたりする役割を任されがちで、自分自身の思いを告げたり、振り返ったり、弱みを見せたりといったことが中々できなくなる。

f:id:hm_htn:20190726232143p:plain
f:id:hm_htn:20190726232149p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

要するに『神崎美月』的なのだ。ほのかさんや織姫学園長にすら弱みを見せられなかった彼女は、最終的に過労で倒れてしまった。またエルザ フォルテも同様で、体重を預けられる仲間がいなかったことが最終盤の暴走へと繋がっていた。

f:id:hm_htn:20190726232223p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

じゃあミライさんはどうなのかっていうと、それは今回描かれていた通りで、彼女には受け止めてくれるカレンさんがいる。『フレンズ!』一年目の、物語上における構成は、"上を目指すカレンさんとその受け皿であるミライさん" というものであったが、「フレンズ」という関係性はそんな固定的なものではない、別にミライさんの感情をカレンさんが受け止める形であってもいいのだ。短いシーンだったけど、そういう LMT ならではの温度が感じられたシーンであった。

f:id:hm_htn:20190726232347p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

わかばちゃんと PP のシーンはそれの対比だろう。わかばちゃんには、感情をぶつけ合って・受け止めあえるだけの "運命の相手" がいない。だから別の役割を持つキャラクターが感情を受け止めてあげなければいけないわけだけど、それを務めるのが我らが PP なのだ。LMT と違って "先輩一年生" な彼女たちだけど、一方でひびきさんやアリシアさんなどを(描写量は少ないながらも) "導いてきた" 経験を持っている。それを下に今回は "頼れる先輩" としての一面を見せてくれたというわけだ。それにしては的確な言葉でコミュニケーションを紡ぐ LMT(カレンさん) に対して、割りかしふわふわした言葉でわかばちゃんの思いを受け止めてあげる PP という構図は中々面白かった。まだまだ "先輩" としても学ばなきゃいけないものが沢山ある。

f:id:hm_htn:20190726232319p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

しかし、例えふわふわしていたとしても、自分達の思いを自分達だけの言葉で伝えてる姿はとても良かった。ミライさんとの師弟関係は終わるし、それは寂しいことであるというのは間違いないだろう。だからといって、それで全てが終わるわけではない。関係性が変わり新たな距離感で関わり合うというのは前向きなことなのだ。距離感を変えながら年月を重ねていって、思い出を紡いでいって、絆を深めあっていく。そういった "先" のロードマップとなる話を、自分たちの経験を交えながらわかばちゃんに教えていく PP の姿は、とても頼もしい "先輩" に見えた。

 

f:id:hm_htn:20190726232439p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

今回はもう一つ感じたことがある。それは、「フレンズ」という関係性を何よりも重んじる『フレンズ!』世界の価値観について、それを少しずつ壊していき、世界をより幅広く・奥行き深くしているというような意図だ。まず主題に据えられているのが ミライ - わかば という主従関係(≠「フレンズ」)であり、今回はその "終わり" を描いているということ。そして年月によって変わっていく関係性も是としたこと。「フレンズ」という概念は、ともすれば 2 人で世界が閉じてしまい、停滞を生んでしまうが、そこから一歩踏み出し、絆を深めていくこともまた是としている、そんな印象を受けた。

f:id:hm_htn:20190726232458p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

"フレンズシャッフル" を思い起こさせるような "かぐや - エマ" と "さくや - 舞花" のイチャつきなんかも、ただ単にかわいいだけの描写ではなく、今までより一歩だけ外に出た描写に感じた。

 

f:id:hm_htn:20190726232627p:plain
f:id:hm_htn:20190726232638p:plain
f:id:hm_htn:20190726232633p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ステージはわかばちゃんのデビュー曲『この世界はすばらしい』。キュートタイプなんだけど、四ツ葉のクローバーとか星とかどことなくポップな印象も受ける。ステージ背景がぴょこぴょこ跳ねてるところからも何だか楽しさが伝わってきて、凄く "明日香ミライイズム" を感じるステージでした。今までのステージとは違い、ジュエルの輝きは まぁ光ってる って程度で、曲とダンスとステージのかわいさや元気を全面に押し出したステージでした。ジュエルの演出は荘厳さや豪華さを引き立たせてしまうし、わかばちゃんの物語が "まだまだこれから" なことを考えると正しい選択だったように思える。

そんなこんなな『フレンズ!』 67 話、わかばちゃんのデビュー回でした。
"導くこと" に焦点を当てた『ジュエル』を象徴するような回だったと思います。
正直やっぱり描写不足・尺不足は否めないし、近頃流布している噂を考慮すると、物語展開以外の "大人の事情" を感じてしまって、中々寂しい気持ちになるんですが。とはいえ、ミライさんやわかばちゃんの内側に注目して、そこを拾い上げるのは良かったと思うし、それをカレンさんと PP がしっかり受け止めていたことも良かったと思います。

f:id:hm_htn:20190726233044p:plain
f:id:hm_htn:20190726233051p:plain
f:id:hm_htn:20190726233056p:plain
f:id:hm_htn:20190726233101p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

あとはやっぱり最後の涙でしょうか。描写が薄い・少ないとブーブー文句を言ってきましたが、"あの" 明日香ミライがステージ上で涙を見せる(客には見せない)理由。あの数滴の雫が、2 人で過ごしてきた時間の厚みを静かに語っていた感じがして、とてもよかったです。その直前からの流れも込みで。

 

f:id:hm_htn:20190726233137p:plain
f:id:hm_htn:20190726233143p:plain
f:id:hm_htn:20190726233149p:plain
f:id:hm_htn:20190726233154p:plain
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

次回はまたまた予告で何もわからない回!このタイミングでこういうのを挟むってことは話数調整に感じられて、またまたなんともいえない気持ちになってしまうのですが、まぁバカ回はバカ回なりに偏差値下げて楽しめたらいいな、と思います。
また狂気の神城パワーが炸裂するのか……!?