アイカツフレンズ! 31 話『伝説の 101 番勝負!』感想

31 話 PPペンダント

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

アイカツフレンズ! 31 話。

約束された勝利の Pure Palette 再結成回。2 人組の最強はやっぱライバル関係!な話。
それぞれがそれぞれで得たものは何なのか、それを再び確認しあって、その上で PP とはどんなフレンズなのかを自分らで考え、答えを出す回。エピソードのメインはひたすらに「勝負」。その先に再結成があるというのは視聴者は薄っすらと予測するわけだけど、そのためにどんな思いを描いて、紡いで、積み上げていくのか。活動休止にあれだけの熱量を込めたので、どうやってでそれを回収するのかというのがメインになる。

まぁ正直もう 1 話ずつくらいはやるのかなと思ってた。けどたまきさんによると BeFC が一ヶ月後で、1 話 1 週の 4 週で 1 ヶ月だとすると、

活動休止 1 週 + あいね 1 週 + みお 1 週 + 活動再開 1 週 = 4 週 = 1 ヶ月

となるので、まぁ仕方ないかという感じではある。
29 話では、あいねちゃんが「トップアイドルになるための覚悟」をする過程が描かれていた。ミライさんに、LMT がいつも見ている景色の高さ・自分との距離の大きさを見せつけられ、また自分の足で這い上がらなければそこには辿り着けないということをあいねちゃんは学んだ。
一方のみおちゃんは、新しい仕事への挑戦やアドリブへの対応を通して、自分の中の足りないもの・そしてそれをあいねちゃんが補ってくれていたことを 30 話で痛感した。それでも彼女は、カレンさんの力を借りることなく自分の力で立ち上がり、見事お仕事をこなしてみせた。

31 話 ココちゃん

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ココちゃんの心理テストが示す通り、この 2 人に以前のような気持ちのすれ違いはもうない。あいねちゃんはみおちゃんの事を「追いかけるべき目標」ではなく「追い越すべきライバル」として認識しているし、みおちゃんもあいねちゃんのことを「引っ張らなきゃいけない新人」ではなく「自分にはない可能性をもつアイドル」として見ている。ただその思いのぶつけ方、解決の方法がわからず、「ビビっと」来ない。舞花ちゃんのいうように「フレンズ度 100%」みたいな結果が出ていれば、すんなりと再結成出来るのに。

31 話 みおちゃん
31 話 あいねちゃん
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そのために 101 番勝負を企画するなんていうのは、由緒正しき『アイカツ!』イズムを感じる。個人的にはそこに辿り着くまでの行程も好きだ。101 番勝負を思いつくには、LMT の 100 番勝負を知らなきゃいけない。限界 LMT オタクであるみおちゃんはその点は問題なく、また先に夫婦喧嘩を済ましている HC を発想の起点としてることがわかる。逆にあいねちゃんは、LMT のことを詳しく知らないので、誰かから教えてもらわなければいけない。そこでさくやちゃんの占いを経由して、すずね・ももね(の持つ LMT 物語)に辿り着く。この様に、よくわからないまま直感で思いつくのではなく(みおちゃんはそれでもいいけど)、段階を踏んで辿り着いてるのがいい。こういう所を細かく詰めて描写することで、勝負そのものの説得力も上がる(と思う)。後は世界を広く切り取ってる『フレンズ!』らしさも感じる。
"101" 番の由来は勿論 LMT からであるが、HC のファンミツアーも 100 ステだったことを考えても面白い。

31 話 101番勝負 水鉄砲
31 話 101番勝負 叩いて被って
31 話 101番勝負 ダッシュフラッグ
31 話 101番勝負 スケート
31 話 101番勝負 ○×クイズ
31 話 101番勝負 カラオケ
31 話 101番勝負 にらめっこ
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101 番勝負自体は、重っ苦しい雰囲気は全くなく、元気いっぱい可愛さ満点ポップでキッチュな展開がドカドカ飛び込んでくる。ネット配信をしてるって所も踏まえて、凄く『フレンズ!』らしい。例外はデザイン勝負で、少しトーンダウンして落ち着き、あいね・みお両者の違いが「デザイン」というフレームの中で改めて描写される。みおちゃんの経験と実績に裏付けされた確かな実力・あいねちゃんの未熟であるが故に溢れ出る可能性。一度落ち着いた物語は BGM と共に、そして号砲と共に再び加速して、『シリーズ』伝統 2 人の少女によるマラソンデスマッチが始まる。そしてその思いを、伝統の崖登りを通じて天にもっていく。

31 話 101番勝負 マラソン
31 話 101番勝負 水鉄砲崖登り
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普段のランニングはともかく追いかけっこや崖登りは『フレンズ!』では珍しい(てか初めて?)。だからこそ、温存していた文脈の力を存分に発揮してくれる。崖の上は天に近いけど、天には届かない。でも新しく手に入れた足場ではある。その足場の上で、持ってきた思いを爆発させて、彼女達はステージに望む。

31 話『アイカツフレンズ!』

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曲は原点回帰の『アイカツフレンズ!』。『ありがと⇄大丈夫』じゃないのがいいなぁ、と感じる。あの曲は出会えたこと・フレンズであることへの感謝を綴った曲なので、まぁ活動休止からの再開でも合うっちゃ合うんだけど。やっぱり『アイカツフレンズ!』の「つまづいて落ち込んで凹んだあとに(一緒なら) もっと強くなれてるから(一緒なんだから)」という歌詞には勝てないよ。表題曲なので、作品全体を広くカバーしてるわけだが、作品を代表する主人公ズとバッチリ噛み合う強さは独特だ。

とまぁ、色々書いてきたわけだが、ステージ後から最後までの 4 分強こそがこの話のメインである。

1 話 あいねとみお(1)
1 話 あいねとみお(2)
1 話 あいねとみお(3)
1 話 あいねとみお(4)
1 話 あいねとみお(5)
1 話 あいねとみお(6)
1 話 あいねとみお(7)
1 話 あいねとみお(8)
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31 話 あいねとみお(1)
31 話 あいねとみお(2)
31 話 あいねとみお(3)
31 話 あいねとみお(4)
31 話 あいねとみお(5)
31 話 あいねとみお(6)
31 話 あいねとみお(7)
31 話 あいねとみお(8)
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いわずもがな、1 話でみおちゃんがあいねちゃんを芸能界へ招き入れたシーンのリフレイン。ここで引用してくるのが PP 結成回である 11 話じゃないのは、そっちは 28 話が対になっているから。また、11-28 話が一つの区切りを表していたのに対し、今回のそれは 1 話から 31 話までのリフレイン、再スタートという意味合いが強い。だからこそ徹底的に描写が引用される。夕日も、鳩も、風も、汽笛も、そして鐘も、世界からの祝福の証がこれでもかと 2 人に降り注ぐ。でも 2 人の描写はそれに負けておらず、寧ろそれ以上の圧を醸し出す。対等の証である名前呼びの解禁、再会の証であるペンダント、100 万分の 1、そして "始まり" のやり直し。同じ景色なんだけど、全く違う、成長した PP がそこにはいて、徹底したリフレインだからこそ "新しい始まり" をこれでもかと描いていた。

また「勝負」の扱い方もとても良かった。みおちゃんが言った通り、13 話以来彼女の中で「勝ち負けを越えた価値観」というのは一つのテーマになっていた。だけど今回だけは特別、あいねちゃんと正面からぶつかり合い、全力で勝ちにいった。その結果が、周りがどうでもよくなるという境地だ。ただただお互いの感情を真正面からぶつけ合うこと、その心地よさに彼女(達)は酔った。「勝ち負けを越えた価値観」は、逆にいうと「勝ち負け」が前提にあるのだ。全力の勝負、感情のぶつけ合いの尊さがあればこそ輝くものなのだ。カレンさんがいったように、或いは PP の 2 人自身が体験したように、今回の勝負にはそれを越えるものがあった。こういうテーマ足りうるものをを、ただの「お題目」として掲げるのではなく具体的なエピソードをもって描写するのは、やっぱり作品全体に芯が通るように感じる。

今まで描いて、積み上げて、紡いできた物語を一点に集約し、新たな足場を形成した。それは "2 人" じゃなきゃ描けなかった物語で、W 主人公だからこそ、『アイカツフレンズ!』だからこその物語だ。この話がこの話である理由をこれでもかと謳い通した、最高の一話だったと思います。すごかった。