アイカツ! 166-178 話 感想

アイカツ!』の振り返り感想。最終クールです。

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

最終クールなだけあって、丸々 SLQC に注ぎ込まれた 1 クール。
(珠璃以外の)各アイドル達の決意表明があり、ドリアカや WM といった忘れ物を回収し、
そして汗と涙の SLQC をやるという、実にシンプルなクール。

 

「今までの SLQC に比べて扱いが違いすぎない?」と思うだろうが、それはご愛嬌だろう。
『あかり GEN』のみならず『アイカツ!』自体に幕を下ろすなら、それなりの格の大きさが必要だし。

 

各々が各々の着地点を見定めて、最後の戦いに挑む様子は本当にかっこいい。
特に Luminas の 3 人は最高の物語を紡げていると思う。

"物語の締め方" としては、個人的に一番好きな 3 ヶ月でした。

 

 

 

166 話『私が見つけた最初の風』

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氷上スミレの物語、その到着点である一話。
どういう SLQ になりたいのか。
この問は即ち、アイドルとして今後どういう道を歩んでいきたいのかという事を問いているのと同義である。沢山の人の笑顔のきっかけになりたい。色んなお仕事をやってみたい。そのように目標を語る 2 人を前にして氷上スミレは何を思うのか、というお話。
まぁ、そんなことはこれまでのお話を観ていればわかりきってることではあるんだけど、やっぱりそれをあのスミレちゃんが自ら口に出して言うってところにはかなりの意味がある。アイカツ!ガールズの中でダントツの消極性を誇ってた彼女が、歌でトップになる・歌でアイドルを極める とまで言うようなったこと。そこまで自分を曝け出せる様になったこと。大空あかり・新条ひなきとの出会いが、一緒に過ごし競い合った日々が、彼女をここに辿り着かせたということ。
さくらのいう様に、スミレのソレも初めは小さな思いだったのかもしれない。初めて姉に歌を褒められた時、アイドルになるなんて、ましては歌だけで食っていこうなんて思ってもみなかったことだろう。それも彼女は自分の足でここまでやってきたのだ。「大した覚悟はなかった」と述懐していたが、以前ののリサにも伝えたように、SL へ来た時点でそれ以前とは確かに変わっているのだ。そういった小さな変化の積み重ねが今の彼女を形作っており、「歌で SLQ になる」という強い意志を育て上げたのだ。
歌はアイドルにとって最も王道な道のりだろう。それ故に茨の道でもある。氷上スミレは、決して星宮いちごの様な強さを持ち合わせてはいない。だからこそ、その道に対する恐れも当然持っている。それでも、そこを歩いて行くという意思。これまで数多の PR ドレスが出てきたが、『ブルーエンプレスコーデ』はその中でも最も物語の文脈に則したドレスだと、今でも思う。
氷上スミレが最後の成長を遂げ、最後の戦線に立つ。まさしく「エントリー」に相応しいお話でした。


167 話『夢のスケッチブック』

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大空あかりの物語、その最終章の前編。
主に描かれるのは、あかりの思いと、アイドル × デザイナーの関係性。
瀬名くんが風邪でぶっ倒れたので、あかりが通い妻して看病して、ついでに SLQC の作戦会議みたいな内容。
瀬名あか回ではあるんだけど、まぁそれ以上にあかりの到達点を確認する回でもある。ジョニー先生じゃないけど、SP アピールで苦戦してた子が、今や堂々と SLQC への意気込みを語るまでに成長した。そして何と言っても「観客を喜ばせる為にはどうすればよいか」に目を向けているのが最高にして最大のエモポイントだ。『アイカツ!』はいちご世代からこの一点だけは常にブレずに描いてきた。だからこそ、作中最後のイベントに向けても、主人公が最も大切にするポイントはそこなのだ。最後のタイミングで作品が戻ってくる場所が、原点とも言うべきそこであるのが、とても嬉しかった。
もう一つ描かれるのは(というか多分こっちがメイン)、アイドルとデザイナーの二人三脚について。こちらも天羽婆孫も交えて、お互いに支え合い高め合う関係性の尊さが描かれる。あかりは内面的な成長を『2nd』で既に遂げていたので、『3rd』からは瀬名くんとの絡みが個人エピソードの軸となっていた。なのでこの最終章に於いてもカメラが捉えるのはそこの関係性だ。恋愛関係であることは明示されていないが、今回のあかりの表情や所作は完全にロマンス文脈の力を借り受けていたものだった。恋人ではないが恋人の様な信頼感や感情の高まりを描くのに、ロマンス方面の描写方法を採るというのは『フレンズ!』でも見られた手法だ。今回はそのおかげで 2 人の距離感や信頼感、そしてなによりめちゃくちゃかわいいあかりの表情が描けていたので、十二分に成功した表現だと思う。
ともあれ、これで大空あかりも最終決戦に向けての準備を整えたということだ。まぁもう 1 話あるんだけど。


168 話『ひとつの道と、別れ道』

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アイカツ!をしていく上で逃れられない、"自分の道を行く" ということに関するお話。
112 話の Soleil の話にも通ずる、『オリジナルスター☆彡』に関するもう一つのお話でもある。
歌を習い始める前から SL のアイドルになるまでずっと一緒にいたののリサの 2 人。しかし、歴史が示してるように、アイカツ!をしていくのならいつかは一人で自分だけの道を歩いていかなければならない時が来る。リサはそこに怯んでしまう。でもそれに対する『アイカツ!』的答えっていうのはもう決まっていて、かつて Soleil が示したように、一人ひとりで歩むことは決して悲しむべきことではなく、寧ろ寿ぐべきことなのだ。自分だけの輝き、本物の輝きを手に入れてこそ、再び一緒になった時に更に輝くことが出来る。或いは、自分だけの道でしか見られない景色が・手に入れられないモノがある。だからアイドルとして上を目指すならば、その道に飛び込んでいくしかないのだ。
これまでずっとニコイチで描かれていたののリサに、祝福の別離を与えた、そんなお話でした。
シンプルながらも面白くて可愛くて、いいお話でした。


169 話『ひなきミラクル!』

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新条ひなきの物語、その到達点となる一話。
SLQC に向け KAYOKO・みくると共に作戦会議 & 合宿をするというお話。その中で自分の足跡を振り返る。
何と言ってもみくるのお姉さん力が半端ない。めちゃくちゃかわいく、そして頼もしい。流石は神崎美月の横に立ってただけのことはある。ひなき達を街に連れ出したり、合宿を提案したり、取材クルーに対して提案したりと、覚醒後のひなきの様にどんどんアイデアを出す。VK のアイドルは、というか KAYOKO と相性のいいアイドルはこういう積極性のある子なんだろうなって思う。
あかりとスミレの羽ばたきをみて、ひなきは一人悩む。自分は 2 人のように輝けるのかと。そしてこういう時にも頼れるお姉さんは手を差し伸べてくれる。花を育てるのも、アイカツ!も、結局は自分のやった以上の事は起きないし、手に入らないということ。自分の手持ちのカードで勝負するしかないということ。神崎美月の相方をやっていたという事実は、この作品に於いてこれ以上ない説得力をもたせてくれる根拠だ。だから一番大切なのは、全てが終わった時に後悔しないようにすること。
ここで止まらず "これまで" を振り返らせる所までやるのが本当に好きだ。あかりと出会ってからのアイカツ!に後悔はないという事実は、かつて言いたいことを言えなかった少女にとってはこれ以上ない勇気をくれる。新条ひなきの成長をこれ以上なく痛感することの出来るシーンだ。
今回も本当にいいお話である。だけども、KAYOKO もみくるも「自分が持ってる以上は出せない」と同じことをいっていて、この後に控える SLQC の事を考えると物凄く示唆的だな、とも思ってしまう。


170 話『アイドルのチカラ』

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大空あかりの物語、その最終章の中編。
他の 2 人はともかく、大空あかりの物語はまず間違いなく 177 話まで含まれるので、今回では完結しない。
スミレやひなきと同じく参戦を表明するようなお話なんだけど、『3rd』以降のあかりエピにとって最も大きな要素であった瀬名くんとのアレコレはもう前回で済ましている。なので今回は大空あかりのアイドルとしての素質(= 素質・特性・強み)についてピックアップする回。
「あかりの武器が笑顔」っていう情報はそこまで大々的に描写されてきたことではない。しかし、あかり目線で笑顔が大切なものであるというのは描かれてきた。その最たる例が 166 話で語られた、「沢山の人を笑顔にする SLQ」というあかりの理想像である。彼女に多かれ少なかれ人を引きつける魅力があったことは真実で、その輝きによってひなきやスミレは救われている。その輝きや魅力の最大の源こそが笑顔であったわけだ。
SLQC 前ラストというタイミングに描かれるべきものとして選ばれたのが瀬名くんと両親というのが面白い。まぁメタ的にいえばスミレやひなきは 177 話で触れられるから別にいいということでもあるんだけど、物語的にいえば、アイドル大空あかりを支えている最大の味方がこの 3 人なんだろうなと思った。まぁ母親に比べて父親の扱いが軽い感じはするけど。
後はやはりあかりの成長に負けまいとする瀬名くんの姿もよかった。これはいちご天羽の関係じゃ出来ない、あかり瀬名の物語だからこその描写だと思う。
それにしても瀬名あかの文脈には電車がよく似合う。『アイカツ!』の中だと浮いてるシチュエーションだからこその特別感がありますね。


171 話『ベストフレンド』

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まど凛友情回。
今回の『フレンド』や前々回の『オトナモード』、そして後に控えるドリアカ勢や『Move on now !』等々、旧世代の曲に触れていくのは、どこか終わりを思わせる構成だ。今回は選曲という体で他の曲も出てきたし。
お話の内容としては、最近忙しかったまど凛が久々に一緒にライブをすることになり、その過程で、会えない間に育まれた友情やら絆やらを確認するというお話。「それぞれの道で輝いてこそ再び一緒になった時にもっと輝く」的なことは 112 話の Soleil 以降ずっと繰り返し描いてきた一つのテーマだ。サニー&ジョニー然り、ののリサ然り、別れることは寿ぐべきことだというのは、ずっと描かれてきた。今回のお話もその文脈に含まれるものだろう。離れているからこそ深まる絆について描かれる。
まど凛の普段の生活からレッスンからデートまでが物凄く力を入れて描かれるが、まぁとにかく凛がイケメンでまどかが天使だ。瀬名あか程の露骨なロマンス文脈ではないとはいえ、それにかなり近い描写がなされる。合同ライブの企画を自分達でやったとのことだが、そこを丸ごと飛ばす構成の潔さがいい。さらっと流すことで成長したことを強調出来るし、それ以上に関係性の描写に注力しているという宣言でもあるわけだ。
涼川さんの親心が垣間見えるセリフも好き。思えば彼も一年目から大分立ち位置が変わったなぁ。
Luminas の 3 人やののリサのお話とはまた一味違った決意表明のお話でした。


172 話『春のドリアカーニバル!』

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ドリアカよ、永遠に、ていう回。まさか当時はノエルメインの Web アニメをやる日が来るとは思わなんだ。
『あかり GEN』の本筋にはほとんど関係なく、メインのストーリーラインからすると箸休め的でもある。
ただ『シリーズ』としてはここで一つの決着を付けておくという意味はあるのだろう。
前半は DA メンバーの紹介と、それを鏡にしての Luminas 達の描写。3 人とも既に個別回で振り返りも決意も済ませてるので内容的には被ってしまうのだが、一応第三者から客観的な評価を受けたという意味が生じる。機械的な DA 巡りで終わらせず、"一応の意味" とはいえちゃんと本筋と関わりを持たせたのは偉い。
後半に描かれるのは、『アイカツ!』最後の忘れ物ともいえるノエルちゃん。いちごやらセイラやら 2wingS やららいちやらのエピソードが語られる。9 月編入というとののリサと同期になるわけだが、そこと比較すると如何に SL が無茶苦茶な育成をやってるのかっていうのがわかるな……。結局、それに付いていける子しか大成しないというのが教育方針であり、それは事実なんだろう。この辺を掘り下げれば『2nd』以上に SL と DA との差異が描ける気がしてしまうけど、時既に遅しがすぎる。
最後の最後にあかりちゃんと約束をして終了。にしてもそれが映像化するとはね。


173 話『ダブルミラクル☆』

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復活の WM、ラストステージ、という回。前回の DA 同様、旧世代の忘れ物の一つでもある。
作中のジョニー先生ではないけど、『1st』のマスカレード復活のセルフオマージュの意味もありそう。
お話の前半は、ジョニー先生が狂言回しとなって開幕ステージのゲストを推察するパート。メイン勢は一通り当番回を終えて後は決戦を待つのみだったので、ここではジョニー先生の力を借りている感じ。こういう時にしっかり道化になれるのがジョニー別府という男である。流石だ。
後半はまんま WM のお話。事前に美月がかえでとユリカに事情を話している描写が好きだ。『いちごまつり』を経て、彼女はもうすべてを一人で背負うことはなくなったんだということがわかる。後はやっぱり、壇上の美月を観るいちごの表情。目を輝かせているその姿は、『神崎美月』に憧れるただの一人の女の子だ。どんなに凄いアイドルでも、憧れの人を前にするとただの女の子に戻るということ。そして、ただの女の子に戻してしまうだけの力を、アイドルは持っているということ。アイドルの根源的な凄さだと思う。
今回も 168 話や 171 話同様、112 話から続く Soleil 的『オリジナルスター☆彡』の文脈に連なるお話だ。一度別れていたからこそ、再び交わった時に輝きを増す。繰り返し描いてきたテーマだからこそ、このタイミングでもう一度描こうと思ったのだろうし、その語り部に WM を選んだのも大正解だろう。
斯くして、最終決戦前のお祭りは終了。次回以降は遂に、血で血を洗うラストバトルの開幕となる。


174 話『私の Move on now!』

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アイカツ!』の正真正銘最後の長編、SLQC 編 その一。
描かれるのは珠璃とリサのステージ。だけどお話の中心はリサ。
『Move on now!』をここ入れた意図の一つに、やはり制作側からの神崎美月へのリスペクトというのはあると思ってしまう。『アイカツ!』の全ての始まりとなったステージであり、美月を象徴する曲であり、その歌詞はアイドルを夢見る全ての子供たちへ向けたメッセージにもなっている。1 話当時の、決して完成度が高いとはいえないステージをわざわざ引用している辺りからも、その思いが伝わってくる。
美月がゲストで来ると知り、本番を前に「本人の前で歌えるのか」と不安になるリサ。その時、ドラマで共演した珠璃から励ましの言葉を貰う。「紅林可憐の娘じゃなく、紅林珠璃として」。こういう時も力になってくれるのは結局、「自分らしさ」『オリジナルスター☆彡』に通ずることなのだ。
この最終局面での珠璃の働きは本当に凄い。一人だけ SLQC 前の個別回を貰えてないにも関わらず、メンターとしてリサを引っ張り、ライバルとして 1 位を守り、相棒としてひなきを支える。後発のまど凛ののリサよりもエピソード的には恵まれなかったが、それでもここまで存在感を示し続けられたのは彼女が紅林珠璃だったからこそだろう。『神崎美月』不在の『あかり GEN』にとって、必要不可欠な存在だった。
そして白樺リサは本番のステージに立つ。ののと違う選曲をしたのは、168 話で描かれた「ののとは違う道」の第一歩でもある。そしてそこで歌い上げた『Move on now!』はやはり彼女だけの曲になっていた。

「急成長するわたし、ちゃんと見ていて」
「気まぐれじゃない あついオモイはじまってるの」
「とまらない わたしだけのストーリー」
「キラキラしてる 輝きに飛び込もう」

一話での『Move on now!』はさながら美月からいちごへのメッセージソングのような意味合いを帯びていた。勿論、当時の美月がいちごを知っているわけがなく、あくまでいちごが一方的に歌詞に感化されただけだが、物語における全体的な文脈はそういう位置づけとなっている。
それに対し今回の『Move on now!』は、まさしく自分の意志でアイドルを目指した女の子の歌となっていた。
ののっちとも、あかりちゃんとも、美月さんとも違う、私だけのストーリー。
白樺リサはあの場で高らかにそう歌い上げることが出来たわけだ。
『4th』のもう一人の主人公、白樺リサの到着点として、最高の一話だったと思います。


175 話『叶えたい未来たち』

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SLQC 編 そのニ。ステージの担当はののと凛とまどか。
他世代と比較して構成がしっかりしてる『あかり GEN』でも、3 ステージは難しいと思わせる一話である。
尺がステージに圧迫されてしまう為、それ以外のパートに強いドラマを持ってきにくい。前後の 174・175 話に比べると、エピソード的には弱めな印象がある。
ただ、個人的にはこれで十分だと思う。何故ならここまで観てる時点で、視聴者側にはもう十分にこの子達の感情と文脈が積もり積もっているからだ。寧ろ余計なドラマを載せないことで、勝負だけに集中できる気さえしてくる。ちょっと好意的すぎる解釈に思えるかもしれないが、少なくとも私個人は放送当時も今回の振り返りでもこういうふうに感じた。このお話単体でのエピソードは無機質で平坦なものに思えるが、そこにこれまでの視聴で得た感情や経験が乗っかることで、十二分に "勝負" を描けていたと思う。
一話の中の構成も相変わらず上手い。前半に各バディ毎に描写して全体の空気を描きつつ、そこからまど凛とののリサに集中して描いていく。最終日は Luminas だけに集中させるとして、残り 5 人をどう 2 日に割り振るかって考えた時に、珠璃リサ + ののまど凛 の形にしたことがここで効いてくる。親友にしてライバルという類似した関係性であるののリサとまど凛だが、リサの敗北が既に確定しているので、この 2 組の間には温度差が生じるのだ。まど凛はただお互いのことに集中すればいいだけなのに対し、ののリサは「リサの意思を引き継いで」的なノリが生まれる。こういうふうに、少し構成を工夫するだけで 2 組それぞれに違う熱さが生じるのは、やはりこれまでの積み重ねがあるからだと思う。
結果の方は全員まとめて珠璃に敗北。伊達に『あかり GEN』 4 番目の女をやっていない。珠璃ちゃんは本当に最後の最後まで色んな役割をこなしてくれたなぁ、と思う。
そして次回。『アイカツ!シリーズ』全体に於いて、最も反響を呼んだであろう "引き" のある回である。


176 話『いばらの女王』

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SLQC 編 その三。
お話の構造としては前回と近い。まずは 2 人組ユニット毎にわかれて、それぞれで励まし合い、後半にひなきとスミレのステージをやって終了。あかりのステージと結果発表は次回へ、という感じだ。
やっぱり珠璃とひなきのやり取りが好きだ。他の 2 組と違って現在の 1 位 = 相方が倒さなきゃいけない相手でもあるという、この独特な距離感が面白い。普段自分の情熱に従い元気にコミックリリーフを務めている珠璃だからこそ、何と声をかけるべきかわからず大人しくなっている姿がよく映える。
ひなきは結局「限りなく SA ランクに近い A ランク」で止まった。「自分が持ってる以上のものは出せない」というかつての言葉が少し皮肉にも感じてしまう悲しさもある。でも、かつては周りに気を使いすぎて自分を出せなかった彼女が「思いっきり暴れるぜ!」と啖呵切れるまで成長したというのは、やはりとても嬉しい。
そして衝撃のスミレである。ひなきと同じく、或いはひなき以上に自分を前に出すことが出来なかった(或いは自分の思いにすら気付けていなかった)彼女が、凛のおかげでダンスが好きになれたと告白し、SA ランクへのチャンスがあれば挑戦したいと言ってのけるまでになった。ここまでで氷上スミレの物語としてはかなり完成され尽くしてるはずなのに、それでも届かなかったとした構成・描写・演出。
最後の最後にスミレに泥を被せるという采配。当時も思ったが、かなりの勝負に出たという印象はする。
『大空あかりの物語』を完結させつつ、スミレのフォローをどう入れるのか。いつ観ても非常に強い引きだ。


177 話『未来向きの今』

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SLQC 編 その四。アイドル 大空あかりが完成するお話であり、その物語の最終章でもある。
大空あかりの目指す SLQ、目指すアイドル像というのは「笑顔のきっかけ」であった。ステージ以外でも色んなアイカツ!を通して、観ている人に笑顔を届けられる、そんなアイドルになりたいとあかりは語ってきた。もし悲しんでいる人がいたら、その人の気持ちを楽にしたり、その人の笑顔のきっかけになったり出来るようなアイドルになりたいという思い。その思いは、かつてお天気キャスターに就任した時に語った「雨の日でも晴れの日でも、観ている人に元気を与えられるようになりたい」という抱負から生じた or 育った思いだろう。大空あかりのアイカツ!にとって、やはり「大空お天気」はとてつもなく大きな要素を持つのだ。
そして、その思いがあったからこそ彼女は SA ランクのアピールを成功させることが出来たのだと思う。一番の親友でライバルでもあるスミレは、挑戦しなくともトップを狙えたにも関わらず、挑戦することを選んだ。それはまさしく「茨の道をいく女王」たる堂々とした挑戦であり、尊いものだ。それでも失敗してしまった。そんなスミレをも笑顔にする様なステージを、という思いがあったのかは定かでないが、事実、彼女はスミレに笑顔を与えることが出来た。それが大空あかりの物語と氷上スミレの物語が辿り着いた答えなんだと思う。

「未来向きの今を キミに見せるね」

このフレーズこそが、この 2 話の内容を象徴している。
ステージと、全体の物語と、単体のお話と、全てに説得力を持たせた最高の一話だったと思います。


178 話『最高のプレゼント』

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3 年半の壮大な歴史にピリオドを打つ一話。湿っぽいのは一切なしで、明るく元気にエピローグ!なお話。
いちご他数名であかりの SLQ 就任を祝って、Soleil と Luminas でライブして、いちごとマラソンして、崖を登って、おしまいというお話。ぶっちゃけこのお話自体に書くことはほぼないので、全体の感想を書きます。

『あかり GENERATION』は他の世代と比べても特殊な世代・作品・シーズンであると思う。
流石に『シリーズ』一番の特殊さは『オンパレード!』に譲ったと思うけど、それにしてもいちごゆめ PP 等と比べてかなり特殊な作品・世代だと思う。
何度か書いてきた事だが、メインである 3 人共に明確な欠点(克服すべき課題・成長の余白)があるというのは大きな特徴だと思う。「そういうキャラ」だと視聴者に伝われば、そこからのストーリーも展開させやすく、全体を通しての構成もしっかりしやすい。他世代で登場時に課題が明確だったキャラと言えば香澄真昼(姉へのコンプレックス)・花園きらら(価値観の狭さ)・湊みお(人付き合い経験の欠乏)くらいだろうか。いずれにせよメイン全員がそういうキャラ設定をしていたのはかなり珍しいと思う。また 3 人だけに留まらず、マザコンをこじらせていた珠璃や、自分の光がわからなかったみやび、自分の世界観が狭かったここね等も同様なキャラの造形をしていた。その為、世代を通じて一つのテーマを語り続けることが出来ていたように感じる。
もう一つの特徴として、主人公の下積み時代が存在する点がある。『2nd』中盤から本編に本格的登場させ、半年かけてじっくり内面を成長させていったことで、他の主人公達以上に成長物語に対する厚みを持たせる事が出来た。先述した様にスミレもひなきも自分を押し殺してしまう所があるので、お話を進める為には主人公たるあかりが引っ張っていかなければならない。しかし、ご存知の通り入学直後の彼女はただの星宮フリークであり、アイドルとしてはへっぽこで、とてもじゃないがお話を引っ張れるパワーを全く持っていなかった。だからこそ、禅譲前に半年間の育成期間を設けたのだ。まともにステージに立つ所から初めて、アピールの練習をし、その上で頂上決戦の光を全身に浴びさせるという英才教育だ。その結果、主人公たる資格を得たあかりがどう物語を引っ張っていったのか、というのは今まで書いてきた通りだ。
実際の所は、いつ頃から『あかり GENERATION』の話数や、そもそもの主人公変更等が決まっていたのかはわからない。しかし出来上がった物語を観る限りでは、それはかなりしっかりとした意図の下で成されていたという印象を受けた。
とはいえ、『あかり GENERATION』が全てにおいて完璧だったわけではないだろう。描写単位・エピソード単位・話数単位で観た場合、細かな瑕疵はあったように思う。その中でも個人的にとても気になったことを挙げるならば、やはり服部ユウちゃんの扱いがかなり気になった。
「他のモブドルより一歩前に出て、たまに出番のあるキャラクター」というのは、旧世代にもこれ以降の作品にも存在する。ただ、そういったキャラクター達とユウちゃんとの決定的な違いは何かと言えば、やはり世代交代の半年前から出番があったことだろう。繰り返しになるが、氷上スミレや新条ひなきというキャラクターを登場させ彼女ら中心に物語を進めたこと・本格的に物語を始める前に主人公に下積みをさせたこと この 2 点に関しては『あかり GEN』の隙のない物語を構成する上で欠かせない要素だと思うし、実際に正しい采配だったと思う。しかし、その影響であかりのみならずユウちゃんに対しても、少なからずの情を抱かせることになってしまったのではないか。当然ながら『2nd』に於けるユウちゃんの出番はあかりよりも少ない。しかし、同世代のキャラが少なかった(ノエルらいちのみ)為、視聴者はユウちゃんを贔屓にしやすい環境が揃っていたのではないかと思う。それならば、156 話以外にも(ていうか『3rd』にも)メイン回をあげて欲しかったなぁ、という思いが強い。

他にもツッコミポイントはあるだろうが、ユウちゃん関係に比べると小さい気がする。
勝負色の弱さは放送当時から旧世代ファンを中心に不評を買っていたが、個人的には作風という言葉で納得できる範囲だと思うし、勝負色を薄めたお陰で描けたもの(『オリジナルスター☆彡』の物語)は、十二分以上のクォリティであり、とても楽しむことが出来たので普通にこれで良かったと思う。

 


というわけで『アイカツ!』全 178 話 + 劇場版 1 本の振り返り感想でした。
今までも MAD 作る前段階等で周回することは多々あったのですが、こういうふうに感想を文章で残すことは初めてだったし、その為に今まで以上に細かく / 俯瞰的に観ることが出来て、初めて気付く・考えることも多かったように思います。やっぱちゃんと感想書くのは大事だなぁ、と思いました。

『スターズ!』の振り返りについては今の所未定ですが、時間があるようならやりたいなぁ、と思ってます。
その前に色々動画作りたいのでそっち優先すると思いますが。