アイカツ! 1-12 話 感想

いわゆる "無印" や "旧カツ" と呼ばれている作品で、記念すべきシリーズ一作目、
偉大なる伝説にして一種の呪いでもある、『アイカツ!』各話の感想を、少しずつ書いていこうと思います。

『オンパレード!』が終わりに向かって邁進する中、時代に逆行している形になるわけですが、再び観返す機会を得られたため、どうせならと思い感想を残していくことにしました。ただ、『オンパレード!』とは違ってそこまで力を入れず、各話 500 字いかないくらいで書ければな、と思ってます。

おっとぼけて初視聴想定で書くことも考えましたが、今更そんなことやってもて感じがするので、普通に 178 話知っている目線からメタ的なことまで含めてガリガリ書いていこうと思います。

 

てなわけで以下本題。
今回はまず第 1 クール( 1-12 話)の感想を。

 

 

1 話『私がアイドルになっても?』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

"原体験" を強く描いたエピソード。
アイドルに惹かれ、目指した理由だけでなくステージ上で「楽しい」と思った所にまで筆を伸ばしている。
美月のライブ、あおいとりんごに導かれる様子、編入試験でのステージ 等々、描いてる要素は多めなお話。
反面、初回なのに世界観説明が少なかった(SL 学園やフェブリスメーターくらい)。これはそもそもまだそこまで設定が詰められてないのとかも関係してそう。その分いろんな要素を詰め込め描くことが出来たのは、ある意味幸運だったのかも知れない。

 

2 話『アイドルがいっぱい』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO


前半にガッツリ SL についての説明。アイカツカード贈呈式もここ。
後半は美月の一日マネージャーオーディション→美月と初邂逅。『ヒラリ / ヒトリ / キラリ』的世界観。
ただ、ここで言うほどあおいちゃんとはバチバチしなかったのが『アイカツ!』の歴史。この点については 71 話であおいの実質的な敗北宣言がなされる。この辺を突っついていったのが『スターズ!』のローラや『フレンズ!』のみおかなぁ、ていう感じ。

 

3 話『あなたをもっと知りたくて』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

「あんなキツイ特訓を……」「美月は星宮のことを面白いといっていた」
由緒正しき "てっぺん" 紹介回。美月さんの表(天才アイドル)と裏(松井部屋的ダンス練習)の紹介が主。
"凄み" を描くのはいつでも難しい課題だけど、それを沢山の種類の仕事・いちあおのリアクション・月影さんの解説でカバー。裏での努力 ≒ 一種の弱み も描くことでキャラクターとしての完成度を上げていく。
この時点でだいぶ死角がなくなっていて、これ以降の "美月依存症" に繋がることとなる。
結局この呪縛が解かれるのは劇場版まで待つことになるわけだ。
"完璧超人でないこと" を描くことで "キャラクターとしては" 完璧になっちゃうっていう。

 

4 話『Oh! My! Fan!』 

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

"ファン" についてのプリミティブなお話。アイドルの根幹というか。
「カメラの向こう側を意識」という課題に対して、太田くんとの交流を経ることで回答を得る。
ファンが欲しいからオーディションに応募したが、ファンは既にいて、ファンの力で合格出来たというお話。
アイドルとファンのいい関係・好循環っていうのも、今後ずっと『シリーズ』につきまとう概念。
細かい所でいうと、ランニングで苦しい所で美月さんの姿を思い出す辺り、既に心に深く刻み込まれている。

 

5 話『ラン!ランウェイ!』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

蘭ちゃんさん本格参戦。
ファッションショーオーディションを通して、ランウェイを歩く心得について学ぶお話。
自分のためだけじゃない、裏方とかクラスメイトとか色んな人たちの思いを乗せて、歩く。
後々のことを思うと、ランウェイのみならずアイカツ!全体に通ずる普遍的な教訓でもある。
オーディションやお仕事をやるに当たって、課題が発生し、それを ゲストキャラから or ゲストキャラと共に 学ぶというのは初期アイカツ!王道パターン(蘭はゲストじゃないけど)。
原体験→"てっぺん" 美月紹介(2 話はそのための準備)→4 話:ファン、5 話:裏方というアイドルの足場
アイドルアニメの種々様々あるけど、こういう部分をガリガリ掘っていくのは、やっぱ結構珍しい?
社会派系アイドルアニメというか、市場経済に立脚したアイコンとしてのアイドルというか。

 

6 話『サインに夢中!』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

いちごメインエピソード。サインについて。以降の主人公には引き継がれず伝統化しなかったお話。
ヘビーなサインについて考えることをメインにするんじゃなく、特訓でどうにかしちゃうっていうのが、
アイカツ!(1st-2nd)』全体の方向性を決めちゃった感まである、重要な回。
後半、サインに夢中でファンを無視してしまう所は、4・5 話で社会との接続を果たした後だということを考えると、その復習的意味合いも出てくる。同時にこういったことを当たり前にこなしながら、人並み以上の努力をし続けている美月さん(3 話)の凄さも際立つ。
あおいちゃんがサイン会に慣れているのは、当然アイドル文化に接してきた経験値の差。
蘭を媒介にレアカードの紹介をしたあとで終盤にご褒美レアを貰うことで販促ノルマも達成。
めちゃくちゃ完成度の高いお話。

 

7 話『つぶやきにご用心』

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初期アイカツ!を象徴する伝説の回(1)。ポンポンクレープガール初登場。
SNS との付き合い方を考えましょうという(今となっては物凄く皮肉の効いた)お話。
通り一遍に SNS を糾弾するのではなく、プラスの面も描いてバランスを取っているというのは何度も指摘されてる通り。完全匿名の美月さんを最後に持ってきて「そこまで完璧なのかよ」っていうのも面白い。
「レアカードは私が着たい時に着る」に代表されるような、蘭ちゃんの切れ味も全盛。

 

8 話『地下の太陽』

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地下の太陽三ノ輪ヒカリちゃん登場。ステージ中に分割が入るという超激レア演出アリ。
序~中盤にヒカリのプロ意識(ファンを意識)について繰り返し言及される。ここまでのお話で、しつこいぐらいにファン目線を意識するのはやっぱりそういう意図・方向性の決定があるんだろうなと。
ヒカリと蘭がメインになる→いちあお蘭での絡みが増える→この回からイチャつきも増える
またいちあおをスタート地点として美月をゴールとした時の、中間地点を描くという回でもある。
"ファン" というブレない軸があればこそ、多少トバしたお話やキャラクターや展開を持ってきてもすんなり飲み込むことができる。

 

9 話『Move on now!』

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スペシャルオーディオ・心得・初 PR・初崖登り。色々と初期の香りが強く感じる回。
ブランドの勉強→地図→崖登り という小さな要素で連鎖していく気持ちよさ。この辺はやっぱり抜かりない。
デザイナーキャラの登場・衣装がカードする過程 等々、"気になってた点" を出していく。1 クール目の中盤から終盤へ移行する段階と考えればいいタイミングだと思う。
「頑張るアイドルに着て欲しい」
特にこのお話で新しい教訓やらなんやらがあるわけではないが、今までの 8 話で文字通り "頑張って" 来たいちご達への定期試験的なお話でもあるか。最後の美月との邂逅(= 「美月さんはまだまだ遠い」)も合わせて。

 

10 話『虹色のおとめ』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

おとめ登場回。
おとめ紹介のノルマをこなしつつ、「歌詞を魂の叫びに」という課題も(はっきりとは描かれてないが)達成。
いちごとおとめの似てる点(天然突っ走り)を起点にして、おとめの頑張り・プロ意識、そこからいちごの情動主義発動、空回りしそうになったところで涼川さんのトス上げ。
ここまでで既に涼川さんに対する謎が深まっているが、その謎は次回回収される。
いちごとおとめを似ているとして描いたからこそ、いちごの情動主義とおとめの意外なネガティブ面・真面目さが際立つ。ステージ前、緊張に震えるおとめと勝負を楽しむいちごの対比が面白い。
オーディションに敗者復活があるのは女児アニらしいご都合主義・優しい世界、と思わせておいて、今にして思えば「負けは負け」という考えが敷衍している『シリーズ』全体ではかなり異例な方だったりする。

 

11 話『おとめは誰かに恋してる』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

2 連続おとめエピでキャラの掘り下げを……と見せかけておいて涼川さん回。
エピソードの中軸にあるのは "アイドルと恋愛" について。いちなお in 河原でラブロマンス的描写をしながら、出てきた答えはいちごもおとめ「みんなに恋をする」という、王道アイドルのそれそのもの。
いちなおの関係性はこれ以上進まないということは既に明らかになってるわけだが、この時点でこの解答が出てくるってことは、こっち方面はここではっきり終止符だったということかもしれない。
他にも貴重なあおい姐さんの初恋エピソードがあったり、全体的に面白いショットの多い回。
全 50 話中の配置で観てみると、10 話と 12 話の繋ぎ回でしかないんだけど、だからこそこういうトピックを掘れたのかも知れない。
メインで扱うには扱いづらいタイプのトピックだからな……(e.g. 『スターズ!』のすばるくん)。
中途半端に手を出して M4 を使いこなせなかった『スターズ!』とは、この辺は明確な差がある。
(やるならやる、やらないならやらない。というのはとても大切)

 

12 話『We wish you a merry Christmas!』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

初期アイカツ!を象徴する伝説の回(2)。エピソードの種類的にはいちごのキャラ掘り下げ。
お祭り好き・困ってる人を放っておけない・友達思い・思い立ったら即行動。
伐採やツリーソリ以外のクリスマスの準備でも描かれているが、基本的にスタミナと身体能力(と調理技術)を活かしたパワープレイで解決する。とにかく壁をぶち破ってでも最短距離を突き進んでいくタイプ。でも 6・10 話で描かれたように、方向性を間違えることもある。
この "友達のため" "困ってる人のため" という思いを昇華して "ファンのため" と思うようになったのかな?
「組ませようと思ってるの。"いちごちゃん" と美月を」→星宮呼びではないということは……?という伏線。

 

 

というわけで、『アイカツ!』 12 話までの感想でした。
一作目というだけあって試行錯誤感は強いんだけど、寧ろ今以上に細かいネタを拾って次に繋げていく姿勢が強い → 構成が上手い。トンチキ要素も強くて、それぞれのお話が振り回されそうになってるんだけど、一方で "誰か(ファン・仲間・友達)のため" という部分が一貫して存在しているので、作品全体が大きくブレるということはない感じ。

まぁ、やっぱり面白いですね。