アイカツ! 115-126 話 感想

ちょうど 2 ヶ月振りの『アイカツ!』振り返り感想となりました。
今回は『あかり GENERATION』の第 2 クール、即ち 115 話 - 126 話の感想です。

 

全体的に "過渡期" という言葉がよく似合うクールになっている。
時系列的には『いちごまつり』は既に終わっていて、"神崎美月との決着" という最大の忘れ物の回収は済んでいる状態だ。なので、残っている忘れ物の回収(さくらや Soleil の物語的決着)や、新たな火種の投下(留学生の存在・ライバルという関係性)等が次々に行われる。一方であかりやスミレの真っ当な成長イベントもきちんと存在し、物語全体が 1 クールかけて次のステージへ移っている……そんな印象を受けるクールである。

 

 

 

115 話『ほっこり☆和正月』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

珠璃ちゃんと一緒に過ごすお正月回。
大空親子のやり取りを通して、あかりのオリジンを掘り下げる回。ただ掘り下げるんじゃなく、珠璃を聞き手として大空家に放り込んでいるのが面白い。我々は珠璃と同じく大空家について詳しく知らない立場なので、珠璃目線で・珠璃の感情に乗っかることでエピソードの消化率を上げている。聞き手がスミレやひなきじゃないのも、"いつもの 3 人" という枠をいい具合に崩し、あか珠璃を色濃く描くことで新鮮味を上げている。
新鮮味といえば、あかりのリアクションも「友人に親とのやり取りを見られて恥ずかしがる中学生」っぽくてとてもいい。めちゃくちゃ思春期っぽくてかわいい。この辺は良くも悪くも突き抜けていた星宮家では出来なかった描写なので、『あかり GEN』である意味が出てるのもポイント。また、ただ恥ずかしがるだけで終わるのではなく、最後にはちゃんとあかりが父親のことを認めていたり、珠璃が自分の両親にも思いを馳せたりしている部分が暖かくて、実に『アイカツ!』らしい。
あかりの父親である大空学さんは何度も土トークチャレンジをしてくるし、母親の大空小陽さんはおおらかにどんなことでも受け入れちゃう。そんな両親の下だったからこそ、あかりはどんなことにもへこたれず(或いはへこたれてもその都度立ち上がり)挑戦し続けるように育ったのだろう。そういう珠璃の推測と視聴者の感想がシンクロするのが気持ちいい。このお話のモチーフを借りるとするならば、両親が大空あかりの立つ土であり土台であるのだろう。
それにしても「頑張ることなら、出来るから」という台詞はとても良い。ずんっ とお腹に響いてくる台詞だ。


116 話『大空 JUMP !!』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

あかりのアイカツ!を語る上で外せない要素その 2・お天気キャスターについてのお話(その 1 は瀬名くん)。
112 話で Soleil から「ソロカツで得意分野を頑張ろう」的な教訓を授かった 3 人は、それぞれ自分の得意分野について考えることに。ここであかりはともかくひなきも悩んでいるのに、スミレだけ歌と即答しているのがいい。まんま次回への伏線である。
悩めるあかりを突き動かしてくれたのが、彼女の道標である星宮いちごだ。ここでさらっと「悩まなかった」と自分の天才性を言いのける辺り、主人公から外れた感じがしてよい。その悩まなかった理由ってのも「自分が面白いと思ったものに突っ込んでいってたから」てな感じで、まさしく嘗ての情動主義を感じられる。頑張ってればその分前進しているってのも星宮イズムを感じられる言葉だ。どうでもいいけど、この「元々は情動主義を持ち合わせていなかったがいちごに推される形で一歩踏み出せた」というのはつい最近描かれたノエルのアイカツ!とも酷似している。
その結果あかりが辿り着いたのがお天気キャスターというお仕事。確かに新鮮味のあるチョイスだが、大切なのはそこにどういうロジックと感情を載せていくかだ。小橋彩香というどこかで聞いた事のある名前のお天気キャスターさんとの交流を通じ、そこにアイドルとの共通点を見出していくあかり。晴れの日でも雨の日でも元気になれるように、楽しい時はより楽しく・悲しい時は少しでも力になれるように、より広く・より沢山の人達を包み込むようなそのアイドル像は、まさしく "大空" なものだ。それはある意味『輝きのエチュード』を生み出した星宮いちごの対極の一つに位置するかもしれない。誰よりも大切な "あなた" に絶対に届けたいという思いを、強烈なアイドル性の光で以て結果的に他の皆にも届けるというのがいちごの到着点だったからだ。それはつまり、断髪以降『オリジナルスター☆彡』を探し続けていたあかりが、漸く自分だけの光を見つけたことを意味する。『大空あかり物語』の序章が終わったとでも言うべきか。
今回のお話でもう一つよかった点として、お天気キャスターのお仕事回としての描写も豊富だったことが上げられる。今後あかりが歩んでいく道なだけに、最大限のリスペクトを払って描くことはとても大切だ。


117 話『歌声はスミレ色』

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歌かモデルか っていう、氷上スミレにとってとても大きな分岐点となるお話。
本当に脚本から構成から演出から、何をとっても完成度の高いお話。「こういうテーマに力を入れる」という部分がとても明確に伝わる辺り『あかり GENERATION』を象徴するエピソードといっても過言ではない。
スミレのビジュアル押しは今までも演出されてきたことでそれが今回遂に実を結ぶのだが、スミレ目線で観るとそれは「牙をむく」とも言い換えられて。自らの「やりたい」歌に進むか、「向いている」モデルに進むかの二択を迫られる。逆にこの選択を "きちんと強いる" ことで SL のセルフプロデュースという理念を強く描くことにも成功している。いちご世代の子達はこの辺の判断力は最初から持ち合わせていたから、そういう意味では今までで出来なかったお話でもあり、『あかり GENERATION』らしいお話といえる。
あかり一人で解決するわけではなく、あずささんが背中を押してくれるわけでもなく、ハーブティーの淹れ方を教わったことで漸く事態が前進する。この回りくどい感じがなんとも『あかり GEN』らしくて好き。最速で最適解までの最短距離を突っ走れるいちごとは違う全く感じ。姉として見守る事に徹するあずささんの距離感も素敵だし、最後の合否の連絡を待ってる所・その報告を聴いて安堵する所なんかも大好きだ。
ジョニー先生への信頼度が無限に上がっていく謝罪パートとか、ひな珠璃の距離が順調に近付いていってる所とかも見逃せない。
そして何と言っても『タルト・タタン』のステージだ。カメラワークも演出も大幅に変えて "変わった" ことをこれでもかと見せつけてくるステージ。「彼をいつかは振り向かせる・好きにさせる」と言いながら真実を写し出す鏡に拒絶されていたわけだが、そこを乗り越えた一歩目。
こういう、ゆっくりだけど確実に一歩一歩踏み出している感じこそ『あかり GENERATION』だと思う。


118 話『みやびなアイカツ!

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

京都からの刺客・藤原みやび登場。
「自分らしいアイドルとは」という点できちんと悩む辺りは、『あかり GENERATION』の正当キャラクターという感じだ。アイドルとしてのスキルは既に高レベルのものを持ち合わせているが、その中核となるものがなければアイドル足り得ない。その事を自覚できてる辺りも、みやびがアイドルに向いている証拠ともいえるわけだが。ただそこで立ち止まってしまい、思わず前例を求めてしまうのが "アイドル" の難しい所だが、そのこと(前例が居ないこと)の凄さを指摘してくれるのが我らが主人公大空あかりである。量産型星宮いちごからそのキャリアを始めた彼女にとっては、みやびのその唯一無二性は輝いて見えることだろう。
それにしても面白いのが "個性" のアイコンとしておとめを選んだという所だ。確かに初手で殴るタイプの個性であるユリカよりは、いちごと同じくナチュラルボーンなおとめの方が強めなのかもしれない。
一つだけ減点ポイントを挙げるなら、ユウちゃんの扱いだろう。『あかり GENERATION』のシーズン全体の完成度は歴代でも屈指の高さだと思うが、ここのユウちゃんの処理の仕方に関しては、雑であると言わざるを得ない。あかりへの禅譲に時間を割いたことは、全体のバランス的にはとても良かったと思うが、ユウちゃんへの愛着度を増しちゃったのは思わぬ落とし穴という感じもする。


119 話『ナデシコの舞い!』

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前回で発見した藤原みやびの唯一性である、「和」や「大和撫子」という属性。
それをどういうふうに具体的な強さとして活かしていくのかというお話である。
手紙からメールへのメディアの変化はただの道具の話で終わる訳じゃなく、みやび自身の変化の比喩でもあると思う。和に洋を取り入れるというか、「かっこいい」と「かわいい」を両立させるというか。ある意味で、アイドル藤原みやびの大いなる一歩目であるとも言える。その発端が "ファンのため" という思いなのが何とも『アイカツ!』らしい。みやびは、アイドルがファンの背中を押すことが出来ることに感動していたが、一方でファンがアイドルの成長を促すという側面もあるのだ。
さくらちゃんのステージは省略されちゃったわけで、放送当時は結構ガッカリした記憶がある。今となっては後の展開を知ってるので何とも思わないが、その一点でリアルタイム視聴時の満足度が下がった(個人比)のは勿体なくも感じた。まぁこのエピソードでさくらと一緒にステージをするのはエピソードの展開的にちょっとよくわからないから、結局は本編通りの展開が一番正しいと思うんだけど。難しい所である。


120 話『スター☆バレンタイン』

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バレンタインのお祭り回、と見せかけての四ツ葉さん掘り下げ回。元々アイドルでした!ってお話。
「シェフとして働く四ツ葉さんの姿を見たい」というアイドル時代の四ツ葉さんのファンの思いに応える為、あかりとその仲間達が東奔西走して頑張るお話。っていうんじゃなくて、その部分はいちごに相談することで割とあっさり解決する。なので頑張って何かを得るエピソードというより、四ツ葉さんの言葉や思いから何かを学ぶようなエピソードだ。
夢を叶えたその先の話をするってのは、青春真っ最中のこの物語中では些かの苦味を伴う語りだ。現在進行系でその頂点を取ろう日々邁進してるアイドル達にとっては遥か未来のことに感じられるし、その上否が応でも自身の "物語" の終わりを意識する行為でもあるからだ。それでも可能な限りその苦味を薄くしようと、丁寧にお話全体を作り上げている。こういう時にもファンの文脈が使えるのは『1st シーズン』からずっと意識して描写とエピソードを積み上げることが出来ていたからだろうと思う。
解決を為すのがいちご達というのもいい。ここまでの 20 話で成長してきたけども、それでもまだまだ彼女達は未熟なのだ。だから今回もイベント MC を任されてはいないし、その様子を下から眺めているだけなのだ。一方で「ファンの思いに応えてあげたい」という思い自体は本物であり、成長の証でもある。
後は何と言っても、物語を終えても今尚ファンの思いに応え、感謝の言葉を口にする四ツ葉さんは、紛うことなき "『アイカツ!』のアイドル" である。


121 話『未来に約束!』

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皆が望んだ大和撫子対決、遂に実現!な回。
対決ムードの少ない『あかり GEN』に於いては珍しく、それ故に一層大切な意味を持つとも言える。
119 話の感想にも書いたが、ここまで引っ張ったのが良かったかっていうのは結構判断しにくい。119 話放送当時の(個人的な)満足度が下がったのは事実だし、一方でこのやり方の方がよりお話の展開に即していたとも思う。この辺は多分いくら考えても答えは出ないと思う。
お話としては、みやびの交換留学が終わりを迎えるのに対し、記念にさくらと対決ライブをやったり、その裏であかり達がお別れ会の準備をしたりといった感じである。といっても 2 本のエピソードがある訳ではなく、お別れ会の方はほぼダイジェストで終わりで、対決ライブの方もバチバチ感が殊更強調されるわけではない。お話の中心にあるのは、みやびの留学生活の振り返りだ。
ちと厳しかったのは思い出描写には描き下ろしが多く、余り回想から引っ張ってこれなかった点だ。それだけ細かな描写の積み重ねが出来ていなかったということだ。またこういう時には新たな絵よりも見たことのある映像の方が視聴者側も自身の経験を振り返る事ができ、感情を盛り上げやすい。一方で静止画ダイジェストで済まさず、動画でかつセリフありだったところを観るに、制作側も重要視はしているようではあるんだけど。
留学生活を通して、凛とした強さだけでなく自身のかわいさにも自覚的になれたみやびちゃん。制服を着るのはそれを完成させる為の最後の儀式だろう。そして、強さと可愛さを併せ持つアイドルの理想形とも言える、天才 北大路さくらの存在。

カワイイだけじゃダメですね おしとやかさも必要ね
そして優しさと強さを あわせ持ったあの花のように

みやびもさくらも、生来の可愛さを持つ少女なのだろう。さくらは幼少期から森と妖精と童話の世界に憧れを抱いており、みやびはソレに気付いたのこそ SL へ来てからだったが、元からソレを持ち合わせていたことは長岡先生が見出したことで証明されている。そう考えると、やはりこの曲は 2 人にピッタリだったのだろう。勝負の結果は、さくらが先輩の貫禄を見せつけての勝利。この辺の強キャラ感はこの後の SLQC へと続く描写であり、ひいては一年後の SLQC にも繋がってくる。


122 話『ヴァンパイアミステリー』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

恐怖と虚無が渦巻くドラマ回。
内容としては、学園を乗っ取ろうとする吸血鬼を退治する という劇中劇を只管鑑賞するだけのお話。
気合の入った作画に、エッジの効いた演出、めちゃくちゃかわいい芝居、こちらをくすぐってくるメタネタ。思えばドラマ回の扱いはここがターニングポイントになった気がしなくもない。とにかく作品の本筋には何も寄与しないお話だからだ。それだけなら 59 話も同じだが、あれは企画~撮影のお話であり、その過程で一応のアイドル達の頑張りはあった。ただこのお話に於けるあかり達は出来上がったものを観ているだけであり、本当の意味で箸休めとなっている。
ぶっちゃけこれ以前はドラマ回 = 演技に関わる全てのお話 という認識だった。ステージパートがないという 共通点もあったし。しかし、イケナイ刑事やスワロウテイル、月の砂漠の幻想曲等と今回のヴァンカツを比較すると、やっぱりお話としての毛色は大分違うように思う。なので、個人的には教訓のない劇中劇に終止したお話をドラマ回と呼んでいる(あくまで個人的な定義)。
ちなみにこれ以降の傾向でいうと、『スターズ!』一年目はこの手のドラマ回が多めで、その分あこちゃんが割りを食ってる。しかし『星のツバサ』では真っ当なエピソードになっており、あこエピソードが『星ツバ』に於いて完成度の高さを誇る一因となっている。
『フレンズ!』に関しては一年目も二年目もこういうタイプのドラマ回はなかったはずで、演技関係のお話であってもちゃんと教訓なり試練なりが用意されていた気がする。ただ、ドラマ回以外の話数調整的な虚無回は普通にあった。『オンパレード!』は、ドラマ回も普通の虚無回もあった。 という感じ。
それはそうと本編での美月復帰第一弾がこれになるとは。劇場版の様な重いエピソードは全くないわけだが、寧ろ特別感をなくすという意味でよかったのかもしれない。


123 話『春のブーケ』

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あかり & 瀬名くんの PR 回 その 2。
あかりちゃんは当然新しい PR を欲するけど、一方で瀬名くんはいちごに着てもらうことを想定していて……
一つのドレスに対し、2 人以上のアイドルが着ることを想定されているという形から始まる今回のお話。まぁその設定自体は普通にありそうな話ではあるが、『アイカツ!』ではこれが初めてであり、比較的珍しい導入であると思う。しかし、そこであかりがいちごを仮想ライバルに見立てて競い合ったり、或いは仮想じゃなくガチライバルとしてガチ競争をしたり、てな具合のお話にならないのが『アイカツ!』的というか、もはや『あかり GENERATION』的ともいえる。いちごは寧ろ見えない所で後押しする役を果たしているし。
今回の面白いポイントはまさしくそこで、「デザイナーに認められる」という文脈から少し逸れているのだ。今まで様に崖を登ったり、染料の実を採りに行ったり、デザイナーに認められる為の試練は、今回のお話にはない。ただただ日々のアイカツ!の延長として、大空お天気をいつものように全力で取り組んだ結果であり、「アイドルがデザイナーに認められる」というよりは「アイドルがデザイナーを助ける」てな感じの文脈だ。この二人三脚感こそ、大空あかり × 瀬名翼 の生み出す物語といえる。 勿論、そういうお話が今までに全くなかったわけじゃないんだけど(おとめからアイデアを受け取るマコトさんとか)、成長途中のデザイナーという瀬名くんの属性が、今まで以上にその物語性を強めているということは言うまでもないだろう。
今回演出面で興味深いのが、駅のシーンが 2 度挟まる点だ。『アイカツ!』に於ける移動手段はほとんどが車かヘリコプターであり、電車が使われることは極めて少ない。あかり周りのお話以外だとオフ回の移動時くらいだ。アイドルだから当然と思われるかもしれないが、これが『スターズ!』では意外と出番が合って、両作品のリアリティラインの違いが見て取れるポイントとなっている(因みに『フレンズ!』と『オンパレード!』は『アイカツ!』寄り)。今回の使われ方を観てみると、瀬名くんとのすれ違いや合流に使われていて、トレンディドラマの文脈を借り受けている印象がある。作品の性質上、恋愛要素を明確に描くのは不可能であるが、こういうふうにメタファーとして使うことでシーンの雰囲気を操作しているわけだ。


124 話『クイーンの花』

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SLQC が復活したよ!っていう回。
お話としては当然に独立してるんだけど、旧世代キャラの最終回と『あかり GENERATION』のゴールの提示という意味では 2 話セットとしても考えられる。
SLQC は『2nd』移行時に上手く接続できなかった価値観だ。いちご渡米中の一年に関してはおとめ vs あおいの決勝があったことが描かれていたが、それ以降は置き去りにされた価値観だった。それを今回拾う形になったわけだが、開催時期も大会の方式も変更していて、『1st』で描かれたソレとは全くの別物となっている。ただ、それらの変更や放置されていたことに関して、物語に則したロジックを設けてるわけではない。それでもわざわざ復活して出してきたということは、やはりこの時点で最終ゴールを設定していたのかもしれない。
お話自体に関していえば、さくらが物語のゴールテープを切る感じの内容だ。クイーン寮に入る所で逡巡する展開や、そこから察しておとめと絡ませる所はエモさが頂点に達する。それだけに終始するのではなく、きちんとあかり達にもカメラを向けて、ソコとの距離感を描いているのがお話全体の価値を上げている。さくらとの覚悟の差然り、トレーニングの差然り、ステージパートの扱いの差然り。対決ムードの薄い『あかり GEN』に於いて、わざわざ「勝負することすら出来ない」というのを描くというのは、やはりそこにある距離の大きさを強調したいのかな、と思う。


125 話『あこがれの向こう側』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

リアルタイムで観ていて最も衝撃を受けた回。
そしてその衝撃は未だに更新されていなくて、多分今後も更新されることはないと思う。
Soleil の物語が本当に終わる回。美月との決着は劇場版で付けたので、あおい・蘭との決着をつける回。
といっても関係性を更新する訳ではない。寧ろ今まで通りの "らしさ" を全面的に押し出し、前進し続けている / し続けていくことをこれでもかと、淡々と描く。
アイドルの行く末やユニットの行く末というのは、『シリーズ』中にも色んなパターンが描かれてきたけど、そこで「続ける」という唯一無二の選択したのが Soleil だ。いつでもどこでもその無限の推進力で物語を牽引してきた彼女(達)だからこその結論。或いは、嘗て 50 話では一人で旅立たざるを得なかったいちごのバイタリティに、2 人が漸く着いていけるようになったとも言えるかもしれない。以前は STAR☆ANIS や AIKATSU 8 でなければ出来なかった全国ツアーを Soleil 単独で出来るようになったのが何よりの成長の証だ。
そしてその旅立ちを見送るあかり達。夢を見つけ、夢に向かって突き進むことを決めた偉大なる先輩達の姿を観て、自分達も次のステージへ進むことを決意する。紛うことなき、物語の節目の一つである。
何と言っても衝撃だったのが ED 演出だ。「『ダイヤモンドハッピー』かな?『カレンダーガールかな?』」
とステージ予想をしていた我々の予想の斜め上を行く『Good morning my dream』。「なるほど、フルで流して特殊 ED として扱うわけか」と思った所からの、記憶の奥底をかき回す聴き慣れたイントロ。そのクレジット順も併せて、制作陣から Soleil に向けた最大限のリスペクトが見て取れる演出だった。


126 話『ぽっかぽか♪オフタイム』

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オフについてのお話、ver 3 年目。
これまでの 2 回と同じく、3 人のかわいい姿がただただこれでもかと描かれる。
と思いきや 24 話での太一さんや 75 話の美月さんみたく、新展開を予感させるような小石も放り込まれたり。
3 人とも SLQ を目指すのであれば、それは 3 人がライバルになるということ。至極簡単で単純明快な理屈なんだけど、それまで自覚していなかった事実を改めて突きつけられる 3 人。『あかり GENERATION』で今まで勝負の空気を遠ざけてきたからこそ響き渡る言葉であり、積み重ねを逆方向に活かす・裏切るという方向性のいい演出だったと思う。それを受けて 3 人が出した答えというのが「ライバルでいるのも楽しい」なのが、最高に『あかり GENERATION』らしくて好きだ。
瀬名くんが最高に良い働きをしているのも最高だ。男子としての頼りがいを見せてくれたり、ライバルであることを指摘した後で一人で後悔していたり、3 人に負けず劣らずな魅力を発揮している。
先輩として後輩を導く立場になるけども、変に気負う必要はなくて、今まで通り目の前のアイカツ!に全力を注ぐ。そういったことも改めて学びながら、でもライバルという新しい関係性を手に入れながら、先に進む。3 人が「ライバル」という新たな概念を得て関係性更新できたことは、1 話前の Soleil の関係性が完熟していたことの対比にもなっている。