アイカツ! 13-25 話 感想

アイカツ!』各話振り返り感想記事 第二弾。

今回は第 2 クール(13-25 話)の感想です。
エピソードの内容的には、今までやってきたことを更に繰り返すようなお話が多い感じ。"星宮いちごの天才性"、"ファンの思いに応えること"、"アイカツ!を楽しむこと" 等々だ。しかし、単純にこれらを繰り返すのではなく、新キャラや PR ドレス等の要素を乗せることで、きちんと新しいお話を作り上げているのが凄い。

また、星宮いちごのサクセスストーリーが順調に進んでいく、っていうのもこのクールである。

 


13 話『カロリーの悲劇!』

f:id:hm_htn:20200207014656p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

"主人公のアイドルが正月太りしてしまったのでダイエットする" というぶっ飛んだお話。
『つぶやき』『Christmas』と並んで、未視聴者のイメージする『アイカツ!』を形作るお話とも言えるか。
いちごの輝き(情動主義)がなくなるという、後から考えると割と衝撃的な回でもある。
"輝きを失ったアイドルにシステムが反応しない" ていうのも、大分挑戦的な描写だ。初期だから設定やテンプレが決まりきってないというのもあるかも知れないけど。
ダイエット成功で終わらず、そこから過剰ダイエット問題にまで筆を伸ばすのがよい。扱う題材に対して貪欲であるのは、作品全体の描写の厚みを増す結果になる。そこを解決してくれるのが美月さん(と涼川さん)なのも、彼女のキャラクターとしての完璧度を上げる結果となっている。
次回のドラマオーディションへの繋ぎや、その後に控える美月との共演に向けた伏線もしっかり張っている。
一度いちごの輝きを失わせてそこから這い上がる姿を描くことで、リスタート的な役割を持ってるのかも知れない。年またぎ・クールまたぎに位置する回だし。


14 話『イケナイ刑事』

f:id:hm_htn:20200207014701p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

お芝居について初めて触れた回。演技論・将来に向けた覚悟・"星宮いちご" の才能等々、結構内容は過積載。
「ものまねには負けない」を起点に広がる演技論。内容は結構一般的だと思うけど、その広げ方が面白い。しおんを鏡にした「将来への覚悟」。中学生で方向性を決めなきゃいけないってのは些か厳しすぎる気もするが、それがアイドルなのである。そこで描かれるあおいちゃんの方向性→プロファイラー志望でプロファイラーをプロファイリングしてる入れ子構造なんかも面白い。しおんちゃんとのバディ感も善き哉。またそれと対比される "星宮いちご" の天賦の才。これは 12-13 話からの継続であり、また 16-17 話へと続いていくと考えると、少なくとも前半 2 クールを支える大きな柱のような要素だと思う。ここから 101 話まで(或いは劇場版まで) "星宮いちごの天才性" を全面に押し出すような作風ではないけれど、その根底には常に流れていて、いちごはこの流れの上で物語上を動き、またあらゆるキャラクターがそこを中心に対比・比較されていく。


15 話『クスノキの恋』

f:id:hm_htn:20200207014706p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

PR ドレス回。おとめちゃんとマコトさんと郁代さんのお話。
思えば善因善果は『アイカツ!』の基本理念だ。郁代さんのことを助けたことが巡り巡って PR ドレスへ行き着く。マコトさんをちょっと嫌なヤツっぽく見せながら、決定的に悪いヤツには描かないのもポイント。時間を守ることは大切なことだし、「時間を食べちゃった」という表現はやっぱりいい。その上で「ラブこそ全て、ラブはパワー、ラブは永遠」なのだ。容姿の心得が「自分らしさを理解した上で」ってのも、近々でいえば "いちごの天才性" に繋がる話だし、後々まで含めるなら『オリジナルスター☆彡』だ。この13-15 話は 16-17 話への繋ぎ回だけど、繋ぎながら高クォリティを維持している所はやっぱり凄い。


16 話『ドッキドキ!!スペシャルライブ PART 1』

f:id:hm_htn:20200207014711p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

「新人だから、に甘えてていいの?」
いちごと美月に徹底的に筆を絞った、『アイカツ!』の極致を描く 2 部作。
「本気で向き合いたいから」の "星宮呼び"。リハーサルが一つのお話になるのもこの回だけだったりする?
5 万枚を 2 秒・カフェ・グッズ・なりきりコンテスト・スタッフ 1000 人→歴代でも具体的。
"ステージを楽しむ" という『シリーズ』全体に敷衍する最も基礎で大切なモノ、それを既に持っていてかついつでも忘れない(例外:13 話)星宮いちごの強さ。そしてそこから更に一段上に行くために必要なこと・ライブを楽しみにしているファンの思いへ応えること・更には出来なかったことへの悔しさ。そういったことをいちごに説きながら、自身もライブへの準備を進める神崎美月の完璧さ。"SP アピールの回数" という筐体要素をこれ以上なく上手く利用した上でメインストリームに組み込む手腕とか、クォリティが圧倒的すぎる話数。まぁこれ以降、複数回アピールに全く触れられなくなるのはご愛嬌だけど。
そんで最後の最後に神崎美月すらをも飲み込む、星宮いちごの "天性"。


17 話『ドッキドキ!!スペシャルライブ PART 2』

f:id:hm_htn:20200207014716p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

いちごと美月の物語第二弾。いちごを鏡にして、美月のキャラ造形を深めていくお話でありながら、最後の最後に "星宮いちご" を描くという、2 人の描写に絞ってるけど構成はかなり凝ってるお話。
本編全体がそういう作りになってるから当然だけど、まずは美月の完璧さに目がいく。メンターとしての課題の投げ方、後輩の引き上げ方、圧巻のステージパフォーマンスは当然として、舞台裏でフラフラになってるところなんかも "キャラクターとして" 完璧なキャラだ。文字通りの完全無敵ではない、人並みに疲労なりなんなりあった上で、いちごを見て笑顔で声をかける。あらゆる意味で脚本上の隙が全くないキャラクターだ。
「アピール回数」というわかりやすい物差しの上でしっかりと実力差を描いた後、最後の最後に "星宮いちごの天才性" をまた持ってくる構成。ここ数話の描写からして明らかに狙ったものだし、その文脈を踏まえた上で今回のエピソードの最後に持ってくることで、更に説得力が増していく構造だ。


18 話『チョコっとらぶ』

f:id:hm_htn:20200207014721p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

しばらく鳴りを潜めていたアイカツ!らしいトンチキが噴出するバレンタイン回。
主人公の弟がチョコ欲しさに女装して学園に侵入て、なんやねんそれ(しかもかわいい)。
本編の内容としては、オーディションではなくオファーというのが地味に大きな変化。また、バレンタインを利用することでグッドコーデという筐体要素を上手く回収。基本販促アニメなのでこういうのも大切。
逆に、今回いちご達が新たに学んだことはグッドコーデに関する知識くらいなもんで、それも今回限りの一発ネタ。4 人に関する描写としては、新たなものを学んだりするていうよりは寧ろ今までの復習的な意味合いが強い。らいちの視線を通して "アイドルの普段の頑張り" や 4 人のワチャワチャを見せながら、一方で「恋する女の子の気持ち」という課題に対して 4 人なりに考え、実行し、クリアするというテンプレ的形。
ある意味、ここまでを総括するお話であるんだけど、ちゃんと新しいお話を成立させているのが立派。


19 話『月夜のあの娘は秘密の香り』

f:id:hm_htn:20200207014726p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ユリカ様初登場。キャラ紹介をしながら、"キャラ" について深く彫り込むお話。
ユリカにとっての原体験である『吸血鬼の恋人』。それを "キャラ" に引き上げる「ファンに喜んで貰うため」という思い。対するいちごは一度 "キャラ" という部分で方向性を間違えそうになるが、ユリカの話を聴いて軌道修正。キャラについて、ファンの思い、いちごの天才性等々、今まで何度も繰り返し描いてきたテーマであるので、ともすれば食傷気味になりがちだ。そこにユリカのキャラ紹介という要素を組み込むことで、一つの新しいお話に仕立て上げている。裏を返せば、今までしっかり描いてきてテーマとしても構造としてもしっかり固まっている要素だからこそ、新しい要素を乗っけても破綻しないのかもしれない。


20 話『ヴァンパイア・スキャンダル』

f:id:hm_htn:20200207014730p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ユリカの PR 回。夢小路魔夜の初登場であり、恐らく『シリーズ』中最高の人気を誇るゴスマジックの回。
スキャンダルという新しい題材をぶっこんでくるのは面白い。いちごやおとめの PR 回の焼き回しをしても意味ないし。特筆すべきは、立ち直りのきっかけやゴスマジック入手の決め手にあるのが「ファン」であるという点だ。PR を着るだけじゃダメ、なぜならアイドルはファンがあって成り立つものだから。アイドルはファンに夢を与える存在だけど、時にはファンの声がアイドルに力を与えることもあるという、『シリーズ』で繰り返し描かれる好循環。それがあるからこそユリカちゃんは立ち直る決意が出来たわけだし、魔夜さんと対峙することで真の "ユリカ様" になることが出来た。やっぱりそこを一番に大切にしているのが『アイカツ!』の 1st シーズンなんだろう。


21 話『オシャレ怪盗☆スワロウテイル

f:id:hm_htn:20200207014736p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

14 話に続いてお芝居に関するお話 その 2。ここでもやっぱり第一にあるのは "ファンのため"。この原理原則を決して外すことなく徹底してるのは素晴らしい。
お芝居系のお話ということだが、『イケナイ刑事』の 2 人もコラボとして登場。こういうところを丁寧に拾って繋げていく手腕は、他 2 作と比べても、或いは他年度と比べても突出して上手いのがこの 1st シーズン。
結果だけ観れば蘭ユリの 2 人は失格だったわけだけど、いちおととの違いは気付いた早さだけであって、最終的にはみんなちゃんと答えに到達できてるのが "優しい世界" たる所以だなぁ、と思う。


22 話『アイドルオーラとカレンダーガール』

f:id:hm_htn:20200207014742p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

「毎日のアイカツ!を私らしく頑張ること、それがオーラに」「頑張ればなんてコトない毎日も特別になる」
このサブタイでこの選曲でこのセリフ、要するにそういうお話である。
オフについてのお話はこの後あるけど、その前に今までの総括のようなお話である。
オーロラキス入手の為の崖登りから、クリスマスの伝説、美月とのライブ共演を経て、映画初主演と、思えばここまでいちごはいちごのままでキャリアを順調に積み上げてきた。その歩みは彼女にとっては極々自然なものだったから、彼女には自身のオーラがわからないということ。でもその歩みは、確実に彼女を高みへと連れて行っていて、今回のようにマイクを / ラジオを通して数万人の人に自分の思いを届けられるまでになった。冒頭の「記念すべき初 CM」なんかも、初見ではただ単にいちあおがイチャついてるだけに見える。ただ全部終わった後に振り返ってみると、いちごのこれまでとこれからを繋ぐ大切な描写だっていうのがわかる。


23 話『アゲハなミューズ』

f:id:hm_htn:20200207014747p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

題材はデザイナーの想像力を刺激するミューズについて。
お話の根底にあるのは "楽しむ" というアイカツ!において最もプリミティブで大切なコトの復習。これまで既に描いてきたテーマを再び描くに当たって、「ミューズ」という新しい題材を持ち込むことで新しいお話に仕上げるのが凄い、っていうのはここ数話にずっと共通していること。
また "ファン" ではなく "楽しむ" の方にフォーカスしたのも上手いなぁと思う。"ファン" の大切さについては繰り返し描いてきたおかげで大分定着してきた感じがあるけど、それ以上に根源的な "楽しむ" の方はもう描かれなくなってきてたので。いちご達の成長度を考えるともう改めて描写しなくてもいい気もするが、それでも敢えてやるってことは、それだけ大切に思ってるということだろう。前半の終了や一年の折返しが見えている段階なので、タイミングとしてもちょうどいい感じ。


24 話『エンジョイ♪オフタイム』

f:id:hm_htn:20200207014752p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

オフ回。文字通り一段落っていうお話。まぁ OP/ED 変更まではあと一話あるんだけど。
エピソードに軸らしい軸はなく、とにかくゆったりゆっくり続いていく。強いて言うならあおいちゃんの準備の良さが所々で役立つが、最後には文字通りの重荷になってたり、それを 2 人がサポートしたり。というか、エピソードではなくキャラそのものに徹底的に集中したお話とも言える。あおいのみならず、3 人が 3 人とも各々の "らしさ" を発揮していて、それを描くことだけに集中してる感じ。終盤にファンの女の子が助けてくれる展開はなんともアイカツ!らしい。最後の最後に新しい札を一枚だしてきて、どことなく新規展開を思わせる感じ(実際は太一さんはこの後のお話にほぼ無関係なんだけど)。


25 話『エイプリルフールのやくそく☆』

f:id:hm_htn:20200207014757p:plain

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

星宮家の謎、大黒柱である星宮太一さんの登場。
作品を俯瞰的に観た場合、前半終了時点での話数調整のようなお話である。
いちごちゃんにとっての帰るべき場所である "家" を強調する回でもあるんだが、それをいちご目線で描くんじゃなく、太一という新しいカードを入れて少し場をかき混ぜて、"新しい一面" を魅せながら描いていくのは強い。それを新しく感じるのはあくまで視聴者目線であって、星宮家にとってはそれが本来の姿っていうのも面白いポイント。そのことを自然に描いている各描写とセリフ運びも良い点。
ステージへの流れとかは強引なんだけど、5 人が集まり、5 人でステージをやるっていうのもいい。さくら・かえで参戦以降は露骨にキャラ回しが追いつかなくなって、こういうのやりきれなくなるからなぁ。
主人公の掘り下げをしながら 5 人での ED 曲ステージを(それも PR 勢揃いで)やっていて、話数調整だったとしても結構内容の濃いお話となっている。
前回の 24 話とセットで、いい前半 2 クールの〆になってる。