アイカツフレンズ! 59 話『合言葉はキスイダツカイア!』感想

アイカツフレンズ! 59 話は、アイカツ!途上国ソルベット王国でのアイカツ! NPO な回。
ミライさんが狂言回しとしてお話をぐいぐいと進めてくれるエピソード。

59 話 ミライ(1)

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

異常気象が起こり、ブリザードが吹き荒れるようになり、外で遊べなくなり、国民から笑顔が消えて、レオ国王が病に冒され、アリシアさんが召還され、国王の代理を務めることに――
こんな感じで、前回でアリシアさんとソルベット王国の抱える問題はだいぶ観えてきた。アリシア攻略の為にはこの分厚い氷の壁をぶち破らなければいけないわけだが、今回はそこに一つの楔を打ち込む回である。
リザードを止めることや病気を治すことはできなくても(神城マネーでなんとかできそうとか思ってはいけない)、人々を笑顔にすることはできるのがアイドルで。「アイドルの笑顔で、お腹はいっぱいにはならないけど」から始まる、人類史上最高の名言がふと蘇る感じ。前回 PP が魅せた輝きはブリザードに埋もれたわけじゃなく、人々の心をちゃんと照らしていて、凍えかけていたひびきさんの心も救っていた。でもそれだけじゃ足りないからってんで、打ち込まれる二の矢が LMT(ていうかミライさん)。

59 話 PPと子どもたち
59 話 LMTと子どもたち
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ステージだけでダメなら、一緒に歌って踊って遊んで。
子供からお婆さんまで幅広い世代とフレンドリーに接することができるのはあいねちゃんの強みだけど、それだけじゃなくカレンさんがアイカツ! NPO の経験を活かしたり(超軽量トランポリンとは)、ひびきさんも普通に楽しんでたりしてたのもよかった。やってることはファンじゃない(というかアイドルを知らない)人々との交流という、初期ゆめを彷彿とさせる地味などぶ板アイカツ!なんだけど、それが妙にマッチしてるのも ソルベット王国という非日常 × "変わらない" PP × カレンさんの NPO 経験 が為せる技かな、といった感じ。

59 話 アリシアとお婆さん
59 話 ひびきとお婆さん
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ソルベット王国民に対する、アリシアさんとひびきさん他のアプローチの違いを見ても面白い。お婆さんに対してでいえば、寄り添ってその痛みを少しでも和らげようとするアリシアさんと、その手を引いて一緒に踊ることで痛みを忘れさせてしまうひびきさん。子供たちを吹雪から守るために家の中で絵本を読んであげるアリシアさんと、吹雪が来るまで外で遊ぶ選択をする PP。もちろんこれは優劣のあるものではなく、性格の差・立場の差がもたらしたものだ。アリシアさんのアプローチからは、彼女の優しさや己の立場に対する責任が見て取れるし、それが間違ってなかったことは、彼女のことを第一に思う国民達の様子を見ても明らかだ。この辺の "暖かさ" がとても好きなんだけど、一方でアリシアさんも国民も(レオ王もシャルルくんも)誰も悪くない、という現状が中々に冷たくて辛い感じがある。

59 話 ミライ(2)

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んで。
この辺りの "場の設定" をしているのが、今回もミライさんだったりする。PP を最大限活かすことのできる「キスイダツカイア」を行い、子供たちを呼び込み、アリシアさんまでも引き寄せ、切り札である JLR とステージのお披露目、と中々にクレバーな運びなのがミライさんらしさをビンビンに感じられる。1 年目でも思ったことだが、やっぱり基本頭よくて、こういうことやるセンスがずば抜けてるんだよなぁ、この人。場を整えて、人に心のトリガーを引く決心をさせるというか。

59 話 ミライとみんな

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今回でいえばソルベット王国民の思いを知り、アリシアさんの心を動かし、ひびきさんにも決心をさせた。最後の最後、アリシア視点での正対したひびきのラストショットは、今まで "空回り" 感が強かったひびきさんの対アリシアにおける情熱のベクトルが、正しい向きを得られた感じがした。こういう風に場を整えて、適切にお話を進められるのが、"明日香ミライ" というキャラクターの持つ性質だなぁ。つくづく狂言回しや「ジョーカー」といった表現の似合うキャラクターだ。

59 話 ひびき ミライ カーリング
59 話 あいね
59 話 3姉妹(1)
59 話 ひびきとアリシア
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作画や演出の面も結構トリッキーだった印象。テンション高め・変化球な感じの作画・演出が光る序盤から、"境界線" や "壁" をバリバリに意識されるレイアウトの光る中盤以降、そして最後のひびきさんの王道・強めな引き。全体的にパキッとしていて印象に残りやすい画面が多く、"繋ぎ" の話としてはかなり強いなと。「ジョーカー」っぽい感じがあって、妙に味がありましたね。

59 話 3姉妹(2)
59 話 3姉妹(3)
59 話 3姉妹(4)
59 話 3姉妹(5)
59 話 3姉妹(6)
59 話 3姉妹(7)
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これは前回からそうなんですが、ソルベット 3 姉妹(ネーヴェ、ネージュ、シューネ)と "境界線" を巡るレイアウトはかなり強めに使われてるのが面白い。キャラに名前が当てられてたり、こういう役割を与えられてたりするところからして、彼女達は "アイカツ!途上国のアイカツ!を知らない子供(普段カレンさんが接している子供たち)" の代表というわけだ。

59 話 ミライ ステージ(1)
59 話 ミライ ステージ(2)
59 話 ミライ ステージ(3)
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ステージは新曲『Nice な to meet you !』。『アイデンティティ』大好き人間としては見後にぶっ刺されてしまいました。笑顔が失われた地で一緒にアイカツ!をすることで笑顔を取り戻す、という流れの中で楽しさや笑顔の代名詞である "遊園地" を持ってくる辺りがなんとも憎い展開の仕方。JLR を "既に持ってた" ていうのも強キャラらしい・ジョーカーらしいムーブメントで大好き。"出会い" に感謝する曲はあいねちゃんも『ありがと⇄大丈夫』とか歌ってるけど、似たようなテーマでこうも色の違いが出てくるのは面白いなぁと。

59 話 アリシア JLRを見る
59 話 ひびき 決意する
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PP の輝きがソルベット王国民を照らし、ミライさんの働きによってアリシアさんの心を覆う氷にもヒビが入り始めた。でもまだそれが溶けたり砕けたりすることはなくて、ここから先は彼女の "フレンズ" であるひびきさんの仕事、ということになるんだろう。
打ち破らなきゃいけないのは "ブリザード" という大自然の驚異であるが、国民に笑顔を / アリシアさんにアイカツ!への情熱を 再び取り戻させる目処が立ったというが今回のお話の大事な所か。アリシアさんの優しさ・責任感・誇りと、それらからくる彼女の人望、国民の彼女に対する思い等々、ソルベット王国の実情も前回以上にはっきりと描かれた。

59 話 たまきさん

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白々しいまでに挟まれた、ソルベットの情報統制に悪戦苦闘するたまきさんの様子なんかも含めて、次回の「アイカツ!禁止令」がどういう風に場をかき回していくのか。楽しみです。