アイカツフレンズ! 32 話『ドキドキ☆冒険カレン島』感想
アイカツフレンズ! 32 話。
世界に祝福された PP の新たな船出。
待ち受けるは荒唐無稽トンチキ全開で、由緒正しき『アイカツ!』イズムをぷんぷんと匂わせる無人島!
2 つ目のタイトル戦ベストフレンズカップに PP・HC が挑む!
というわけで始まったベストフレンズカップ。
どうでもいいことですが、「ブリリアント」と「ベスト」で B が被ってるので、「BrFC」「BeFC」と表記してます。もっと早く言えって話だけど。
さてそんな BeFC だが、「ステージやってファン投票」なんていうありきたりな『アイカツ!』バトルではなく、無人島の中をスタンプラリーしながら突っ切るという、どこからか「それってアイカツか?」という声が聴こえてきそうな大会。果たして DFC 出場の選考会も兼ねた大事な大会を、そんな風にやっていいのか……と思わなくもない。けど、28 話の活動休止以来重っ苦しい話が続いていたので、ここいらで息抜きかつ作品に元気を補充しておく必要性もある。
あいねちゃんがそうさせてるのかもしれないが、『フレンズ!』は基本的に元気な作品だ。それは作品世界を明るくしてるだけじゃなく、過度にロマンス風味になるのを防ぐためにも必要な明るさだ。方方で "2 人" の物語を描くためにロマンスの文法を引っ張り出すが、それ一辺倒だとただのロマンス作品になっちゃうし。
とまれ、そんなこんなで BeFC は進む。
今回はどうやら HC のターンで、次回 PP となるようだ。
一ヶ月間 PP にフォースしてきたので、当然ながら HC 描写はかなり抑えられていた。彼女達は裏で「列島縦断ファンミーティングツアー 100 ステージ」を頑張ってると言われてはいたが、それが十分描かれていたとはいい難い。なのでここいらで「結果」を描くことで、「過程」について後から説得力をつけて置く必要がある。この手のやり方はそれなりに普通の手法ではあるんだが、正直 後付感や描写の丸呑み感がしてしまいスムーズな接続にはなりにくい。しかし尺が取れない中ではベストの選択肢といえるだろう。結局はどう物語を描くのか、それ次第だ。(キャラの人数が多くて捌ききれなかった『スターズ!』でも度々観られた。後は DA や VA の様な一度に沢山キャラが増えるタイミングでも)
ここの接続をスムーズに行うには、何より描写の説得力が必要だ。その為には与えられた試練・その解決策・その根拠の 3 つが自然に繋がる必要がある。そこでトンチキパワー溢れる無人島を舞台に設定したと考えると、なかなかにクレバーな感じにも思えてくる。
初っ端のカレンさん(とそれに付き合うミライさん)のぶっ飛び具合がいい感じで、エピソード全体のハチャメチャさを担保してくれる。その傘の下でなら、HC がファンミツアーでハチャメチャな「武者修行」をしていても、なんだか飲み込めてしまう。「ハチャメチャな武者修行」で得た「ハチャメチャな経験」をもとに「ハチャメチャな試練」に挑むんだから、説得力なんてクソくらえ!ノリと勢いが話を盛り上げてくれて、結果的に飲み込めてしまう。
またハチャメチャやりながら、それでも大事なポイントを抑えてるのが抜け目ない。彼女らの「ハチャメチャな武者修行」には常に「ファンの姿」があるのだ。
ある時はファンを喜ばすために、ある時は周りに励まされながら、ある時は直接触れ合って、HC が常にファンと共にいたことが「ハチャメチャ」を展開させながらも伝わってくる。
更に(十分な量とはいえなかった)29-30 話の描写も効いてきて、あの少ない描写の中でも彼女らはチェキを撮るなど徹底的にファンとの交流をやっていた。当然、その根底にあるのは SHC での失敗と反省だ。その思いが今に繋がり、そのライン上に(少ないながらも)ファンと HC の姿が描かれていたことで、彼女らが「ファンの応援に応える」という目標を掲げることに説得力が出る。カレンさんのいう通り、それはアイドルの根源であるからこそ、HC に強い勝利のロジックをもたらす。トンチキハチャメチャワールドを一番で駆け抜けられる論理が生まれる。それを最後に後押しするのが、幼児ファンとの触れ合い・ファンレターというのがエモい。王道青春ロードを駆け抜ける HC にピッタリな感じだ。
本題から離れた所でいうと、ライバルに全くのモブじゃなく今まで出てきたフレンズを再登場させられるのは、『フレンズ!』の強みだなぁ、と感じた。
今までの作品ではどうしても SL・DA・四ツ星・VA といった身内からの選出になりがちだったが(SL・VA は設定上仕方ないけど)、『フレンズ!』だとあいねちゃんの異常な交流範囲がそれを支えてくれる。身内に実力者が沢山いるわけじゃなく、コミュ力お化けの分母が異常に大きいだけなのだ。
ステージは新曲『みつけようよ♪』。オシャレをする女の子について歌った歌で、『個×個』に比べるとエピソードにそったメッセージ性は感じない。しかし彼女らのファンに向けての歌と解釈すると、何よりも自分達の個性に強みをもってる HC からの応戦ソングにも聴こえてくる。自分達の強みを歌った曲が『個×個』だとしたら、ファンに目線がいった曲が『みつけようよ♪』という感じか。
そして何よりも、フレンズアピールの上位技・ミラクルアピールの登場。BFR ドレスのデザインの頃からアピールを練習する様子が描かれてきた彼女らに対するご褒美かな。上位技が出てきたということは、今後はここが一つの分水嶺になるんだろう。
『アイカツ!』イズムを感じられるトンチキ島レースを舞台に、その環境を目一杯活かした上で HC の成長を生き生きと描いた回でした。これに対して PP がどんなアンサーを出すのか、楽しみ。