アイカツフレンズ! 29 話『あいねのハロウィンパニック!』感想

アイカツフレンズ! 29 話。

PP が活動休止してしまったので、今回から始まるのは主人公ズそれぞれの修行編。
で今回はあいねちゃんのターン。
サブタイにあるように一応ハロウィン要素はあるんだけど、『あかり Gen』や『スターズ!』にとは違って独立したハロウィン回ではない。本筋を進めるのが最優先で、いくつかハロウィンモチーフが登場するくらい。

てなわけでみおちゃんから離れることになったあいねちゃん。彼女の今までのアイカツは、基本的にみおちゃんの支えがあって成立してきた。何かわからないことがあれば教えてくれたり、ダンスの練習やランニングに付き合って貰ったり。

2 話 みおちゃん

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

1 話からずっと描かれ続けてきたように、あいねちゃんにとってのみおちゃんは導き手で、追いかけるべき目標だった。それ自体は間違いではなかっただろう。事実、歌もダンスも演技もド素人でアイドル事情にさえ疎かったあいねちゃんは、みおちゃんに導かれたことで大きく成長した。自分のブランドを持ち、PR ドレスをまとい、ドラマやバラエティもこなせるようになり、SHC や BrFC の様な大舞台に立てるまでになった。
しかし、そのままでいいのだろうか。トップアイドル・湊みおをいつまでも「追いかける」立場にいていいのだろうか。そういうことをミライさんが厳しい演技指導の中で教える。

29 話 あいねシルエット(1)
29 話 あいねシルエット(2)
29 話 あいねシルエット(3)
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「"差し色" のブラックであいねちゃんを惑わす」というのは今回使った『ワンダラスパンプキンコーデ』のことだが、その "差し色" は話全体に差し込まれる。今までにないミライさんの厳しい(ともすれば理不尽な)演技指導は、文字通りあいねちゃんを "惑わす"。あいねちゃんはその "差し色" の "ブラック" の中で大いに悩み、気付き、惑う。しかし "差し色" はあくまでベースの色があってこそ映えるものだ。

29 話 あいねと夕日(1)
29 話 あいねと夕日(2)
29 話 あいねと夕日(3)
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あいねちゃんを包む(ドラマセットの)夕日のオレンジは、優しく彼女の背中を後押しする。大きく、力強く踏み出す一歩。トップアイドル・湊みおにあいねちゃんが追いつくには、今以上のペースで追いかけなきゃいけない、そのための一歩。

「みおちゃんに負担をかけないように」食らいつこうとしていたあいねちゃんのその行動は、それ自体は正しい面もあったはずだ。或いは彼女らが "そういう道" を進むと決めたならばそれも正解になるのだろう(ぽわプリの様に)。でも PP が進むと決めたのはトップアイドルへの道であり、"ダイヤモンドフレンズ" への道であり、『フレンズ!』界の頂点たる LMT を倒さなければいけない道だ。ならば必要になるのは、今まで以上の努力であり、貪欲さである。自分でみおちゃんを、PP を引っ張るくらいの貪欲さが、或いは LMT や HC や RM に勝つという傲慢さが。

勝負論でいえば、かつてカレンさんがみおちゃんに「勝ち負けが全てではない」と説いた。それと今回の教訓とが相反するものに見えてしまうのは、恐らくあいねちゃんが未だ「勝ち負けすら論じれない位置」だからだろう。SHC や BrFC 等で彼女は勝ちたいと言っていた。別にそれが嘘であったとは思わないが、一方で LMT やみおちゃんの様に貪欲に勝ちを拾いに行ったかといえばそうじゃないだろう。何故なら彼女の想定する「勝ち」とは「自分が足を引っ張らなければ」というものだったからだ。

29 話 駆け上がるみお(1)
29 話 駆け上がるみお(2)
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みおちゃんの力は誰よりも自分が知っている、だから自分が彼女の足を引っ張らなければ――という思い。しかし結局、それはみおちゃんに常に先頭を走らせることを意味し、皮肉にも「みおちゃんに一番負担をかける」という結果になる。
じゃあ必要なのは何か。「勝ち負けが全てじゃない」けれど、勝ち負けを論じる土俵に上がらなければことは始まらない。だから「みおちゃんもミライさんも」ライバルとして追いつき、追い越すことを決意する。

29 話 ミライさんの演技指導(1)
29 話 ミライさんの演技指導(2)
29 話 ミライさんの演技指導(3)
29 話 ミライさんの演技指導(4)
©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

今回、いつになく厳しい顔を見せたミライさん。正直、理不尽なレベルまでいっていた演技指導は、そのまま目指す所の(= LMT の)高みを表しているんだろう。LMT と同レベルの演技や解釈を求めたのは、そういう自分達の高みを見せるためだと感じた。勿論それはあいねちゃん(と PP)への期待の表れでもあるんだが。それに対して四苦八苦するあいねちゃんの様子は、そっくりそのままミライさんとあいねちゃん(或いは LMT と PP)の差を示しているんだろう。

29 話 ミライさん(1)
29 話 ミライさん(2)
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あいねちゃんの相談を受けた直後、一瞬見せた表情がミライさんの本当の顔に思えてならない。「ジョーカー」は道化を演じるものだもんなぁ。記憶を消さなかったという(劇中劇の)結末も、そういった面からこぼれ出たご褒美のように思える。

そしてミライさんの "完璧なライバル" であるカレンさん。驚かし顔という "差し色" を持ってしても全く惑わない彼女の化け物感が凄い。

29 話 ミライ 脅かし顔
29 話 あいね リアクション
29 話 カレン リアクション
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やってることはほのぼの描写の一つなのだが、丸々一話使ったあいねちゃんとの対比で、カレンさんの立ち位置が見えてくる。ビシビシと強さが伝わってくる感じは、まさしく『神崎美月』だ。

ド素人からのアイドルデビューという成長型主人公の花型を行くあいねちゃん。そんな彼女の「アイカツ」にとって大切な分岐点となるお話でした。次回は当然ながらみおちゃんのターン。今回のお話に対してどんなアンサーをくれるのか。