アイカツフレンズ! 39 話『開幕!ダイヤモンドフレンズカップ 』感想

39 話 MT2

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

39 話について。

遂に始まったダイヤモンドフレンズカップ(DFC)!
我らが Pure Palette と相対すのは同じスターハーモニー学園アイドル科に所属する Honey Cat!
(とりあえず初年度の)終盤に差し掛かったこの時期に主人公ズと親友ズが競い合うというのは王道中の王道で、正直描かれる内容というのは大体予測がついてしまう。そこを敢えて外していくのか、それとも王道に沿ってでも期待値を上回るように描くのか、その判断は難しいもんだよなぁと思いながら観る。

話の流れとしては
HC がミラクルアピールの為の特訓を一緒に行おうと PP に提案し、すったもんだがあって "武者修行" をすることになり、それでも成功は出来ず、本番突入、そこで何かを掴む 4 人。
といった感じ。
精神的なものではなく「ミラクルアピール」という技術的なものを追いかける姿は、終盤ということを考えれば自然。どことなく、大スターライト学園祭(あかり一年目・Luminas でユニットアピールを追いかけていた)も思い出したり。SA ランクを目指した最後のスターライトクイーンカップも似たようなもんだが、あれは特訓などは特になかったか。

39 話 PPとHC

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この話で大事なのは、なんといっても "4 人" を描くという点だ。
『フレンズ!』はフレンズの話であるから基本となる構成単位は 2 人なんだけど、PP と HC が「一緒に競い合う為に一緒に特訓をする」というものを描くなら、必然的に 4 人の関係・足跡を描かなければいけない。

HC が PP に合同特訓を提案した際、あいねちゃんは「ありがとう!」といいみおちゃんは「敵に塩を送るようなマネをしていいの?」と反応する。それに対して舞花ちゃんが「舐めるのは飴だけにして!」と返し、エマちゃんが「HC もベストフレンズカップの本番一回しか出来ていない」と補足。この辺のやり取りなんかは「っぽいな〜」と感じる。あいね・みおの反応の差は勿論、決め台詞で鋭くレスする舞花ちゃんと、ある種の「大義名分」を補足して話をスムーズに進めるエマちゃんの違いも面白い。
この 4 人、圧倒的コミュ強・友希あいねがいるので基本よくまとまってるんだけど、なにせ彼女は一番のルーキーで、彼女自身は引っ張られてしまう立場にある(※)。なのでエマちゃんが適度にクッション役・潤滑油役を担うことが多いような気がする。その辺は彼女は「お姉さん」であることも関係してるんだろうなぁ。この辺は狙って描写してるよりは(そういう場面もあるだろうが)、個人的には「キャラが生きてる結果として」そういう描写になってる感じがする。
※この辺は過去の主人公ズと比較するのも結構面白い。いちご・ゆめは有無を言わさず突っ走って周りを巻き込んで / 引っ張っていく感じ。対してあかりは、世代が基本横並びなので、時には引っ張ったり、時には押し上げたり、といった感じだろうか。

"武者修行" として始まったのはスラックラインアイカツ!特有のトンチキ特訓に見えるんだけど、そこに理屈をつけるのがなんともみおちゃんっぽい。ジェンガやら卓球やら座禅やらにも一々なにかしら理由を考えてそうなのがかわいい。
ここで重要なワードが出てきて、それは「HC はいつも(PP の)一歩先を行っていた」というもの。この辺の関係は Skips♪ と Dancing Diva の関係に割と近いような気がする。美月-いちご のような遠い距離ではなく、もっと身近な関係の中でまさしく "一歩先" を行ってる感じ。
ともあれあらゆる武者修行を終えた後でも、ミラクルアピールは成功しない。まぁトランポリンで大ジャンプしてあんな複雑な動きをするの、控えめに言ってサーカスである。そのままステージ本番を迎えてしまうんだけど、そこで「まだ終わりじゃないよ!」と暗黒を切り開くのが、我らが友希あいね。

39 話 あいねちゃん

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キャラのタイプからいえばエマちゃんが言ってもいい場面ではあるが、ここでエマちゃんにはいえずあいねちゃんはいえる、というのは 2 人のキャリア差が関係してるのかもしれない。フレンズとしてだけでなく、一人のアイドルとしてもあいねちゃんの "一歩先" をいくエマちゃんにとって、「再びの "武者修行" (それも今回は PP と一緒に)を終えたのに練習で成功せず本番を迎えた」ってのは、やっぱりキツイものがあるのかもしれない。PP と違って「BFC では一度成功させてる」のも影響していそう。"一歩先" をいくというのは、一寸先の闇にも "一歩先" に辿り着いてしまうのだ。
とまぁ書きなぐってみたが、実際はここにそこまでの演出意図は込められてないだろうなとは思う。あいねちゃんが一言切り出せたのは、主人公特権・王道展開・テンプレとして、それに沿った流れとして、極々自然なものであろう。でも主人公特権が不自然に見えないのは、やっぱり普段の描写が丁寧で、キャラが世界で生きていると視聴者が感じられるからだと思う。

そして迎える、HC のステージ。ここでもう一つの重要なセリフ、「2 人(PP)はいつも私達の一番近くにいて、力になってくれた」というセリフをエマちゃんが発する。

39 話 Honey Cat

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そう、HC は PP の "一歩先" を行っていたが、それはつまり "一歩" しか距離がないことを意味する。HC は "一歩先" に行くことで PP を引っ張ってきたが、PP は HC の "一歩後ろ" からその背中を押してきたのだ。月や太陽や星のようなはるか遠い場所の輝きじゃない、"一歩" の距離にいる友達で、ライバルで、仲間で、そしてファンなのだ。

そして個人的にはこの「ファン」という言葉を使ってくれたのがとても嬉しかった。親友が自分もファンだと発言するのは、太古の歴史にも「いちごのファン 1 号」という前例が残っている通り、まぁ王道で、言ってしまえばありきたりなものだ。ただこのタイミングで言ったのは本当に大きな意味を持ってると感じた。
HC は PP という 2 人のファンの応援を受けてステージに立ち、そして歌って、踊って、ミラクルアピールを成功させてみせた。なんてことはない、友情パワーの演出であるかもしれない。でも「ファンの応援を受けてアイドルが輝く」というのは、"アイドル" の根幹だ。そして今度は、「アイドルの輝き」が観ている人を輝かせる。このファンとアイドルの輝きの循環、これこそがアイドルをアイドルたらしめる所以だろう。ファンの応援でアイドルは輝くし、アイドルの応援はファンに輝きを与えるものだ。この輝く一本線の如き関係性に、今更かの名曲を引用する必要もないだろう。それは今まで『アイカツ!シリーズ』が常に描き続けてきたものであるし、或いはシリーズを離れて『アイドル』という文化そのものが紡いできた文脈なのだ。
PP は、HC のファンとして輝きを受け取り、そしてアイドルとしてステージに立つ。「ファンの応援をパワーに」して、ミラクルアピールを成功させる。
「後攻が有利」という脚本上のメタにあれこれ理屈を付ける必要はない気もするけど、でも私はこれを「後ろに行くほど循環して増大した輝きを得られるから」だと考えてる。(まぁ先攻で強キャラに勝利ってのを 2 回もやってのけた香澄真昼という例もあるんだけどね)

勝負というのは残酷で、だからこそ尊いものなんだけど、結果として HC は舞台から降りる。そして友達であり、ファンであり、ライバルであり、仲間である PP に、一筋の涙と共に思いを託す。

39 話 エマちゃんの涙

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予定調和であり、王道であるんだけど、そこにはちゃんと王道を走り切れるだけの描写の積み重ねがあったと、私は思う。正直この話は言葉での説明が多くて、逆に所々挿入される回想や "武者修行" のダイジェストなどで絵に関しては大分圧縮されてたように感じる。まぁ 2 ステージやる以上そこは仕方ないか。

39 話 舞花ちゃんの涙

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その圧縮された描写に込められた思いや足跡、関係性、築き上げてきたものなんかが、あの最後の涙に込められてたようにも感じる。

斯くして友達で、ライバルで、ファンで、仲間な 2 組 4 人の(とりあえず現時点での)最終決戦が終わった。4 人であることをこれ以上なく語ることが出来ていた素晴らしい回だったと思います。

39 話 4人の手

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次回予告が早速不穏だけどどうなるか。クリスマス回あたりから第 4 クールの配分は気になってるんだけど、割りと捻ってくるんだろうか。楽しみです。