アイカツ! 140-152 話 感想

『あかり GENERATION』第 4 クールの振り返り感想です。
話数で言うところの 140-152 話。『3rd シーズン』のラストともいえます(お話は継続)。

 

 

『あかり GENERATION』は他の世代に比べてかなり特殊である。
主人公のあかりは『2nd』から一人のアイドルとして本格的に出ていて、一年目と二年目の境は他の世代ほど強くなく、その二年目も半年しかない。『アイカツスターズ!』への移行を目指した数々の政策がいつ頃決定したのかはわからないが、少なくともこのクールにはその影響と思しきものが見受けられる。その最たる例が 1/2 クールを占める虚無回の連投であり、とにかく話数を埋めてる印象がする(内容自体は面白いんだけど)。

それを抜けた先にあるのが『3rd』のラストイベント「大スターライト学園祭」だ。
いちご世代の忘れ物を回収しつつ現役世代も物語をガンガン進めていく。偉大なる先輩 Soleil の力を借りて、『あかり GEN』では弱かった勝負の文脈を補強し、我らが二代目主人公 大空あかりは何を観るのか、というような展開になっている。

 

 

 

140 話『アイカツレストラン』

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©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

ドラマ回。『あかり GEN』ではヴァンカツに続いて 2 回目。
当然ながら(?)今回も中身は何もない。劇中劇をやってるだけだ。ただ形式はちょっと変わっていて、舞台でやるのを TV でも放送するという形。更に出演者は全員『あかり GEN』の子達で、織姫ジョニー涼川の 3 人は舞台から観ていて、合間にちょいちょいツッコミとリアクションを入れる感じだ。
ジョニー先生がコメディーを担当していて、言う予想が全てハズレているっていう。それを涼川さんが訂正したり、否定したり。ジョニー先生は割とかわいそうな役回りだけど、前回メイン貰えてたからプラマイゼロ?
本編の方では、とにかくやはりアイドルたちが可愛い。みやびちゃんから発せられるマダム感とか特に凄い。ここね珠璃まどかの 3 人がお話を進めて、その中でもまどかが全体のツッコミをしている感じ。
話数調整以上でも以下でもありませんが、可愛らしいお話でした。


141 話『ホットスパイシー・ガールズ!』

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ひなきもこんなに変わりましたっていう回。
ユニット乱立時期に他 2 組と比べて 1 話少なかった情ハラ。それを補う回である。内容としては勿論 DD や Skips♪ でやったように、これまでの物語でひなきがどういう成長を遂げたのかということを確認するお話だ。
情熱★ハラペーニョに於いて、ひなきのバランサーとしての力は強みになった。ひなきが珠璃の言葉の意味を汲み取り、翻訳して皆に伝えることで、そのエネルギーを広めるという形を成していた。ひなきの存在が珠璃の力を最大限に引き出していたのだ。
今回はその逆で、珠璃やあかりやスミレがどれだけ・どんなふうにひなきに影響を与えてきたのか というのが語られる。自分の気持ちに従う積極性を手に入れた 2 人の姿を観て、少しずつ自分も変わっていった。そしていつでもどこでもブレない珠璃を観て、自分もそうなりたいと強く思った。ここがいいシーンなのは、ひなきの独白で終わるのではなく、それに対し珠璃も言葉を返すからだ。今までバランサーとして活かされていた、ひなきの視野の広さ。それはつまり細かい部分まで指摘しうる視力を持ってることになる。またそれを育んだ経験の多さは、即ち引き出しの多さにも直結している。ひなきにかかっている呪いを祝福へと変えてあげられる珠璃、そんな 2 人は紛うことなきベストパートナーだとわかるシーンだ。
次から次へとガンガン指摘していく覚醒ひなきを観るのは楽しいし、それをホセさんを始めとする大人たちがきちんと受け取って、実現させているのがとても優しさに溢れていて好きだ。誰よりも子供たちが頑張る作品なので、それを支える大人たちもいい人っていうのは本当にポイントが高い。KAYOKO さんも含めて。

「ウェンディ、僕と一緒に来てくれる?」
「えぇ、ピーター・パン。私をネバーランドに連れてって」

この台詞については、もう言葉は無用だろう。最高だった。
このお話でハラペーニョドーナツが完成する、というのも一つの比喩なんだろうなと思う。


142 話『ありがとうが言いたくて』

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さよならここねちゃん!ていう回。
みやびの時同様、あかり達がお別れ会を開いて送り出そうとするが、何故かここねは避け続ける。かといって SL にこのまま残りたいわけでもなく、混乱するあかり達。事の真相は、ここねはただ皆に見送られるんじゃなくて、自分からお礼を言いたかった ていうお話。
「見送られるのは嫌」な理由が「世界の中心じゃないから」ていうのが面白い。SL に来た直後は、自分が中心にいない世界に愕然としていたここね。その事を思えば、今こうして確かに SL の中心を陣取ってるというのはたくましさを感じる。その為に(細かな所では大人の協力を得ながらも)基本自分一人で全部やってみたり、バイタリティが凄い。クローバードーナツで皆の心に残ろうとする図太さなんかも好きだ。
「SL に残ろうとしているのでは」と勘違いする展開を挟むことで、みやびを通じて、ここねの神戸に対する思いを描くという展開も上手い。尺を最大限有効活用出来ている気がする。
それと、今回は全体的に演出がパキッとしている印象の回だ。紅林インサートの使い方や、ここねが招待状を配る際の謎ホラー演出、「ここねちゃん劇場」での可愛らしくもシュールな絵面等。独特な画作りのシーンが多い気がする。それでいて最後の別れのシーンではきちっと決めていて、余韻もいい感じ。
とてもいいお話だったと思います。


143 話『戦慄!サマーアイランド』

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無人島に野村脚本襲来!という感じの回。
いや別に野村さんがこの回から脚本に加わったわけじゃないし、この前にも結構な数の脚本を書かれてるし、別にブッ飛び専用脚本家ってわけでもないんだけど、何となくこういうイメージが強い方なのである。
肝心の本編の内容としては、夏休み(夏のオフ)に一行で(ブートキャンプで使っている)無人島へ海水浴に行くという感じのお話。そこにスコールが降ってきて、涼川さんがいなくなって、チュパチュパチュルボメガが気になって……という展開。涼川さんとのすれ違いを丁寧に描いてたり、これまたご丁寧に二手に分かれて捜索というフラグ立てをきちんとしたり、丁寧に全力でバカをやっているのはとても好感が持てる。
まどかが泳げなかったり、凛がビビリだったり、そういう何気ない描写も好き。


144 話『ドッキリアイドル大作戦!』

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これまた話数調整の虚無回、スミレちゃんへのドッキリ大作戦的なお話である。
話数調整なので、やりたいこと・やれそうなことは片っ端から詰め込んでるような感じ。いつの間にかお魚を克服してたみたいな描写も。こういう所をダイジェストで済まさず、きっちりゼイゴを取る所から骨を取って開く所まで、めちゃくちゃ丁寧に動かしている所なんかが妙にシュールで面白い。
それ以外では新しい PR ドレスをさくっと出してきたり、販促アイテムのエールブレスもこれまたさくっと出したり、『エメラルドの魔法』のステージをやったり。『あかり GENERATION』は全体の構成がしっかりしている分、この手の要素を消化する際に虚無回という力技で処理しがちなのは、一つの欠点かもしれない。
普通に面白いお話なんですけどね。


145 話『アツい夏祭り』

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夏祭りだよ!全員集合!な回。
ジョニー先生(の妹さん)の結婚式を皮切りに、ひなきの成長回とここねとの別れを挟みながらお送りしてきた話数調整回の連投も遂に最後。『あかり GEN』がこういうペース配分を得意としていないのは、先述の通り。まぁこの辺はあっちを立てたらこっちが立たないみたいな所があるので、しゃなくもある。
本編の内容としては、やはり話数調整らしく(?)普段やれてないことを色々ぶっ込んでくる。少しなおざりになっていた凛まどか珠璃のソロステージをまとめてやってみたり。今でこそ『オンパレード!』で 3 ステージ構成にも慣れたが、やっぱりどうしても本編が短くなってしまうのは否めない。
それ以外だと浴衣は必須として、男子会であったり、まどかと瀬名くんの天羽先生関係者としての絡みであったり、四ツ葉さんとカミーノ・セリオ(珠璃パパ)の料理人コンビの絡みであったり、皆お待ちかねの瀬名あかであったり。後は人員配置が露骨に Luminas とバチペの配分を匂わせたり。
『ミュージックアワード』の宣伝を兼ねているのもその一環かもしれない。


146 話『もういちど三人で』

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話数調整ラッシュを抜けた先で描かれるのは、次なるステージで『3rd』の締めとなるイベント。
今までの虚無回とは打って変わって、内容がかなり詰め込まれているのが今回の特徴。その分、結構な歪みも発生しているのが残念なポイント。いちご世代の忘れ物を拾いつつ本筋を展開していく手腕は凄いんだけど、やっぱり所々で無理が生じてしまう。
まずは去年に引き続いての AIKATSU 8 の発表。Soleil 3 人で選ばれる という一年前の無念を回収出来たのは良いこと。ここでひなきだけ落選しちゃうのも、次回の展開に必須なのでしゃあない。ただ DA のハブられについて現時点だと何も情報ないのが結構キツイ。いやまぁ『あかり GEN』じゃあ基本放置だったので、ここで急に出てこられても困るし、この後に普通にフォロー入るので納得の展開ではあるんだけど。DA 放置のツケを急に払わされている感じがしてならない。それと、どうせやるなら美月も外してた方が良かった感がある。その代わりに入れるのはおとめちゃん辺りで。
何より、AIKATSU 8 が何も意味を成さないっていうのが結構悲しい。まぁ『2nd』みたくここでで 2 話くらい積んだら、ひなきのフォロー回を増やさなくちゃいけないという事情もあるんだろうが。意味がないから DA がいなくても気にならない、というマイナス方向にポジティブな見方も出来るけど。
ともあれ、AIKATSU 8 を踏み台にしてぶち上げられるのが「大スターライト学園祭」。
『2nd』同様の AIKATSU 8 路線だと勝負色は全くなくなってしまうので、それを回避する為のユニットバトルなのかもしれない。また、あかり達が先頭に立ってもバトル感は出てこない、というわけでここで立ち上がるのが我らが大正義ユニット Soleil の面々である。『1st - 2nd』の美月と同じ役割だが、そこにいるのは 3 人であり、正しく負担を分け合っている。
今回のステージはすべての始まりでもある『アイドル活動!』。125 話で『Good morning my dream』を披露したということ等も踏まえると、露骨に『ダイヤモンドハッピー』を温存している構成だ。その意図は勿論、今回発表された大スターライト学園祭を見据えているからである。


147 話『輝きのルミナス』

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Luminas 結成回。
なんだけど、中心に据えられるのはひなきへのフォローと称賛。成長回とはちょっと違う味わいのあるお話。
AIKATSU 8 に落選したひなきは落ち込む。あかりとスミレが当選したことが更にややこしくしていたり。2 人の当選は嬉しいし、応援する気持ちもある。一方で当然ながら悔しさもある。また、2 人からユニットに誘われるのは嬉しいし、勿論一緒に組みたい気持ちがあるんだけど、一方で 2 人のパートナーが本当に自分でいいのかという不安もある。
今回は「優しい世界」で有名な『アイカツ!』の中でも屈指の優しさ溢れる回となっている。ひなきの心中に渦巻く心情は、例えば『スターズ!』ならそれだけで一話作れそうなくらい複雑で薄暗いものだ。だけどそれは珠璃の熱さと優しさによってすぐ拭われる。その後の展開も、必死に頑張る姿をこれでもかと描くのはともすればオーバーワーク展開を予想させるものであるし、撮影し直しに望む時のセリフ運びも、不穏な響きしかない。しかし、いざ蓋を開けてみると、そこにあったのは新しい PR ドレス。ひなきの頑張りを観て欲が出たという KAYOKO さんの言葉は、言わずもがなモデル文脈に於ける到達点( = ミューズ)のことを意味する。
Luminas の名付けシーン。あかりとスミレの 2 人だけでなく、ひなきがいて初めてユニットが完成するというその描写は、Soleil が蘭を迎えたことで初めて完成したということを思い出させる。ただ Soleil の時と明らかに違うのは(一番最後の SLQC でも描かれるけど)、ひなきには珠璃というかけがえのないパートナーがいるということだ。個人的にだけど、『あかり GEN』に於いて帰るべき場所なのは 2 人組の方であり、3 人組はどちらかというと戦場っていう印象が強い。
ともあれ、ただのユニット結成で終わるのではなく、ひなきへの最高のフォローと優しさが込められたとてもいいお話だったと思います。


148 話『開幕!大スターライト学園祭☆』

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ぽわプリとしおんちゃんとドリアカの豪華詰め合わせパック!
めちゃくちゃいいお話であることは間違いないんだけど、冷静に考えれば詰め込みすぎてて何だかわからん。けどやっぱり観直すと嬉しい要素が沢山あって、本筋のエピソードも良くて、演出も良くて、いいお話。
しおんだけ・ひなきだけ・ぽわプリだけみたいな絞った描き方はされず、それぞれの要素を貪欲に幅広く描いてるのが今回のお話。しおんも、おとめとさくらも、お互いにお互いの事を信じ合う。そして信じて待つだけじゃなく、自分自身も頑張る、何故ならあっちも頑張ってるはずだから。置いて行かれないように、負けないように。それはどことなくこの間のひなきとも重なる姿だ。自分だけ AIKATSU 8 に選ばれず悔しかったけどそれでも腐らず頑張れたからこそ、今がある。KAYOKO さんの言葉で祝福は既に受け取っているひなきだが、同じ様な立場で同じ様に頑張っているしおんの姿は、自分の道やその頑張りが間違っていないことを確信させてくれるものでもある。
放送当時はここまでお膳立てされても、「しおんのステージはないのではないか」とフィッティングシーンまでは安心できなかったことを思い出す。長期コンテンツの逆信用というのも罪深いものが多い。
そんでもって最後の最後に DA 乱入。途中のおとめの電話に出てくる「北海道」や「沖縄」というワードが、しおんのことを思わせつつそうじゃなかったていうミスリードも込められている。勿論これは、ファンミーティングで日本を縦断していたらそら AIKATSU 8 には参加できないわな というフォローを意味するシーンだ。


149 話『ぶぞろいのカラーたち』

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バニラチリペッパー結成回。
Luminas の時はガッツリとしたひなきエピソードだったが、今回は由緒正しき(?)ユニット結成回。徹頭徹尾バチペの 3 人とムレータ淳朗くんに焦点を当てて紡がれたお話。
テーマとしては『オリジナルスター☆彡』の変化球 ver といった感じ。珠璃の熱さと凛のかっこよさとまどかのかわいさはどれも洗練された個性であり、どれか一つに統一しようとしても他の 2 人は付け焼き刃で不格好になるだけだ。だから統一された一つのデザインをベースに、3 つの要素を 3 人それぞれに配置することで、一人ひとりの強力な個性とユニットとしての統一感を手にすることが出来た。
これには当然ながら繊細な作業が必要になるわけだけど、それを成し遂げたのが淳朗くんの持つ優しさと穏やかさである。彼自身は憧れのエンシエロの背中を見て、エンシエロの様にやろう / なろうと奮闘するが、それは彼自身の特性とはマッチしていない。かつての大空あかりがそうだったように、或いは氷上スミレがそうだったように、憧れと、やりたいことと、向いてることは必ずしも全てが一致するわけではない。正直今回のはスミレの逆パターンだと思うんだが、かと言って(スミレの時も今回も)どちらか一方が絶対の正解と描いてるわけじゃないのが、『アイカツ!』なりの優しさである気がする。
別な見方をすれば、今回は珠璃が淳朗くんを導いた話であるとも言える。それは即ち、今まで導かれる側であった『あかり GENERATION』の子達が導く側になったということを意味してもいるわけだ。


150 話『星の絆』

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Tristar 、遂に復活!ついでに美月さんも戦線復帰するよ!てな感じの回。
なんだけど、まぁ正直な話、凡回っていう印象が否めない。脚本・作画・演出 どれか一つでも突き抜けてたらもっといいお話になったと思うんだが、かなり平凡というか平均点な印象がする。普通のエピソードであればそれで全然問題ないんだけど、Tristar 復活ていう(『1st』からの視聴者にとって)超重要なエピソードならば、もうちょいぐっと来るものが欲しかった。
大スターライト学園祭に向けてユニットアピールの練習をする Luminas、その姿を観てかえでとユリカが思いを馳せらせ、Tristar 再始動へ動き出すっていう展開。この Luminas の特訓描写は、勿論そのまんま大スターライト学園祭の結果に繋がる伏線なんだけど、正直ここの Luminas と Tristar の接点が薄すぎる気がする。特訓に明け暮れる Luminas の姿がかつての自分達の姿を思い起こさせたということなんだろうが、今回の Luminas の描写にそれだけの力があったとは正直思えない。それならばぽわプリの時みたく、より直接的に絡ませて、その影響をよりわかりやすく描いたほうが描写も文脈も分厚くなった様に思う。或いはこれがせめて Soleil であれば、ライバルっていうもう一つの文脈から攻めることも出来たんだけど……。
この描写・文脈の薄さの影響で、正直ユリカと美月の説得があっさりすぎる様に思えてしまう。逆にここがあっさりだからこそ、学園祭本番での結果も納得できる という解釈も成り立つわけだけど……それはなんか寂しいなぁ と思ってしまう。そういう所のチャンスは平等に上げて欲しく思ってしまう。
美月の戦線復帰に際して、いちごが(それこそかつての『神崎美月』の様に)わざわざステージ前に声をかけて来たり、みくるが陣中見舞いにやってきたり、そういう所には美月の格の高さ・存在の大きさが見て取れる。
Tristar というユニットに絞って少し書いておくと、3 つの強烈な個性がぶつかり合う というユニットとしてのその在り方は、実はまんま『あかり GEN』で理想とされている形であったりする。かえでの「きっと前よりも魅力的な Tristar として」という言葉も、そこに辿り着くまでの経緯は違うけど、かつて Soleil の 3 人が話していた理想の姿と同じだ。それぞれの道をそれぞれが極めるからこそ、一緒になった時に更に輝ける。そういうのを至極自然に描いて魅せてるのは流石だと思った。


151 話『ステージの光』

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大スターライト学園祭の本番にして、『3rd』のラストバトル回。
『3rd シーズン』の最後の山場なだけあって、前半はひたすらに Luminas の特訓描写。作画も一話前と比べて大分リッチになっており、より立体的・躍動的に見える。だから同じ特訓シークエンスであっても、各シーンによって描かれるロケーションやら状況やらアクションやらは全然違う。トランポリン一辺倒にならず、崖やコンダラや走り込みやバンジー等々、一つ一つの描写がとても可愛らしく・熱く、シークエンス全体がとても豊かなものとなっている。文脈上でもいちごのかつてのセリフを引用してきたり、抜け目がない。
そうやって A パートを丸々費やした上での Luminas のステージ。ステージ前の描写がそのステージの説得力を担保するというのはいつもこのブログに書いていることだが、その論理でいえば、これだけ特訓に時間を割いてかつ文脈も補強した Luminas はかなり強い。(ファン心理を除けば)最終結果も納得いくものだと思う。
相対すのは、我らが大正義ユニット Soleil。ステージ前にこれでもかと描写を積み上げた Luminas に対して、Soleil は即ステージ入り。ぶっちゃけ、ステージ前の描写なしでステージに入るこのパターンは、逆に演者の格の高さを表しているまである(『スターズ!』 86 話のエルザ、『フレンズ!』 40 話の LMT  etc...)。
焦らしに焦らして、待ちに待った『ダイヤモンドハッピー』のステージも、その期待に十分に応える素晴らしいものだ。ステージ前の余計な描写を省くからこその、表現力一発勝負のステージ。少なくとも個人的には、このステージには勝利に値する説得力が十二分にあったと思う。
そして最後の結果発表。かつての美月の役割を Soleil がしっかり果たしているのに感涙する。一方で美月も美月でしっかりと存在感を魅せるスピーチをする辺り、全然腐っていない。ていうか大勢に向けてスピーチしながらいちご個人へのメッセージをさらっと潜ませるの、『輝きのエチュード』に対するレスとしても観られるんだよな……強い……。
順位に関しては、ファン心理を除いた本編描写と文脈だけに限れば至極当然の結果だと思う。なんだけども、やっぱり「設定」を加味するなら疑問符を付けたくもなる。正直、個人的には Luminas > Tristar となるのは当然だと思っているんだけど(いくら美月がチートでも併せで練習した時間が違いすぎる為)、ぽわプリが負けるのは納得しづらいんだよなぁ。いちご世代の 3 組の中で唯一休止せず活動を続けてきて、かつ直近の SLQC の覇者もいるという状況で負けるというのは、腑に落ちない。しおんちゃんの遅刻ポイントの減点がそんなに響いたっていうことなんだろうか……。
ともあれこれで大スターライト学園祭も終了。
残る 1 話のエピローグを終えて、いよいよ『アイカツ!』最終シーズンが始まる。


152 話『出会いに続く道』

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アイカツ! 3rd シーズン』の最終回、なんだけど。
今までの 50 話や 101 話と違い最終回という感じはせず、「ただの区切り」という印象が凄く強いお話。
『あかり GENERATION』が特殊たる所以の一つだと思う。
お話自体は普通に面白い。『4th』のメインとなる「ルミナス JAPAN ツアー」の準備をしましょうという回。
あかり達の用意する企画書は、(画面に映った限りでは)抽象的な事しか書いてないヘナチョコ企画書であり、とてもじゃないがそれだけで話が進められるような代物じゃあない。だけど、あれだけ「自分を出すこと」「自分だけの光」で悩んでた 3 人が、自分達に必要なことを自分達で考え、そして提案してきたということ。最終話っぽくないと書いたけど、これ自体は確かに『3rd』の締めに相応しいことだと思う。
そして Luminas の旅立ちを手伝ってくれるバニラチリペッパーの 3 人。会計イジリもそうだけど、この辺の皆でわちゃわちゃやる感じは『いちごまつり』に被せているんだろう(学園長直々のオファーと 3 人の自主的企画書との差も含めて)。3 人にとってのこれからの「家」となるアイカツ!ワゴンのペインティングなんかは、無限に可愛い。そしてその流れはそのまま、ステージにまで持ち込まれる。いちごがおとめ達に出演を頼んだように、あかりも珠璃達と一緒にステージに立つ。
6 人での『Lovely Party Collection』のステージも無限に可愛い。ていうかこのステージは本当に細かい所に拘っていて、6 人の振り付けの差異なんかは何度観直しても楽しめる豊かさがある。カメラワークも躍動感に溢れているし、6 人それぞれのインサートも振り付け同様に違いを観るのが楽しい。これは『オンパレード!』の感想にも書いたことだけど、あかりの髪型が最終形態だったら是非使って欲しかったステージだ。
最後にはその最終形態の髪型となっての旅立ち。しかし、同じ最終話の旅立ちといっても、いちごやみくるのそれとは全然違う。カメラはここで途切れるのではなく、彼女達の行く先を映してくれる、別れの寂しさを伴わない旅立ちだ。この辺の独特さもまた、『あかり GENERATION』や『3rd』の魅力なのかもしれない。

 

 

そんなこんなな『3rd シーズン』でした。

スミレとひなきに明確な欠点 = 成長ポイント があってそこを伸ばしていく、というかなりわかりやすいキャラ設定・物語構造になっていましたが、それを上手く活かしてお話を作っていた印象が強いです。

一方で、ユウちゃんの扱いや露骨な話数調整等、所々に大きな落とし穴が見えたシーズンでもありました。