ひぐらしのなく頃に業 祟騙し編 其の弐 雑感

時系列関係の変更点が目立った、祟騙し編 其の弐の感想です。 

 

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

『業』を考察するに辺り、対応する旧作シナリオとの変更点に注目するのは一般的な方法だと思うんですが、
そこで厄介になってくるのが、物語的意味のあるカットなのか尺の都合によるカットなのかの区別。
特に祟騙しの派生元である祟殺しは、旧作出題編の中でも一際ボリュームのあるお話なので、
尺の都合で普通に省略されていてもおかしくない。
ただまぁ、その辺から何かしらの意味を考えるのが楽しいので、
基本的には意味のある変更だというスタンスで行きます。

 

 

 

まずはいつもの通り、祟殺しとの変更点をざっと列挙。
・6/12-13 にかけての夢で、圭一が祟殺しのフラッシュバック(鉄平襲撃シーン)。
・沙都子周辺の時系列が大幅に変更(全体的に早まっている)。
・沙都子登校一回目、魅音との議論の後のレナの激昂がカット(「聞いてんの、前原圭一!!」)。
・登校一回目の日に、北条家で圭一と入江が遭遇するくだりのカット。
・その日の放課後に、今年の「祟り」の標的を鉄平にして欲しいと魅音に頼み込むくだりのカット。
・6/14 の知恵の行動が皆殺し編のものに(梨花との会話 家庭訪問)。
・児相への 2 回目の通報を、沙都子本人ではなく魅音がしている。
・登校二回目の前に、圭一と富竹鷹野が遭遇するくだりのカット。
・沙都子登校二回目、圭一の手を撫でられる前に振り払っている(祟殺しでは撫でられた直後)。
・沙都子登校二回目、号泣してる沙都子をレナがあやすくだりカット(「黙ってろって言ってんの!」)。

とにかく時間軸に対する圧縮が強い。

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©2006竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会・創通

まず、全体で言えば沙都子の不登校期間が短くなっている。それに伴い、富竹鷹野との遭遇が起きていない。また、圭一が北条家に行くくだりも失くなっており、当然これらの場面でされるはずだった会話もカット。

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

代わりに追加された要素としては、知恵の家庭訪問がある。これはその前後のやりとりと合わせて皆殺し編からの引用と思われる(違いとしては詩音が雛見沢にいるかいないかくらい)。

そしてレナの見せ場である 2 つのセリフのカット。旧作アニメでもカットされてたので、正直寂しい。

 

 

圭一の発症に繋がる要素の排除

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

鬼騙しに引き続いて、圭一に旧作のフラッシュバックが起きた。こうなると綿騙しでは単に描かれてなかっただけで、詩音にもソレが起きていたと考える方が自然だろう。ネット上にはフラッシュバックを『業』に於ける発症のトリガーとする仮説も見受けられるが、これまでの描写を観る限りだと、寧ろ発症を抑える方向性に働いてそうな気がする。まぁ、どっちにも関係なくただのファンサ演出ってことも考えられるが(他のカケラの記憶を思い出すこと自体は旧作でもあったわけだし)。

逆にフラッシュバック以外の変更点は、旧作からの省略の嵐。(前書きの通り尺の都合とも考えられるが)これらの省略の影響で、沙都子登校二回目時点での圭一の心理状況が大分変わってきてるような気がする。

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©2006竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会・創通

祟殺しに於ける沙都子の一回目登校から二回目までの間は、圭一を凶行に至らしめる為の期間である。即ち、魅音やレナとの言い合いで無力感を抱き、鉄平との邂逅や入江との会話で思いを強め、鷹野から余計なことを吹き込まれ、魅音に懇願を一蹴されることで一層無力感を抱いてしまう等。沙都子の「強くないといけない」というスタンスを知ること、正攻法も「祟り」もダメ、という感じで圭一が次々と無力感に襲われた結果としての「シンプルな解決法」なので、この前段階の描写が省略されたというのは存外大きな影響があると思う。

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

皆殺し編はこれと似たような状況であった。今回の知恵の行動等を見ても、祟騙しは祟殺しだけでなく皆殺しも意識してそうである。が、それならやっぱり梨花ちゃんの無能ムーブメントが目につく。(前原家が引越してこない以外だと)鉄平襲来シナリオが一番絶望的というのは旧作で梨花自身が言ってたことであり、それを乗り越えるのは鬼・綿以上の自主的な行動が必要になる というのは皆殺しの経験から知ってるはずなのに、現状は何もしてなさそうに見えるのは、一体どういうからくりがあるのか。

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©2007竜騎士07/雛見沢御三家

圭一が発症しないなら誰が殺るのかということだが、単純に考えれば現状最も可能性が高いのは詩音だろう。圭一が発症しなさそうだったり、知恵が家庭訪問したり、詩音が約束を覚えていたりといった様に、皆殺し編っぽい要素は随所に観られる。その為、「圭一が覚醒して詩音を止める」というくだりを経ずに詩音が凶行に及ぶ というのは容易に想像しうる。……だからこそそんな単純なシナリオじゃないんだろうなぁ、とも思う。今回の詩音は知恵からの報告や沙都子の嘔吐といったシーンに立ち会っていない というのもあるし。

 

2 回目の通報が魅音から
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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

北条家に関する児相への相談・通報は、1 回目が沙都子による義父からの虐待について・2 回目が沙都子による鉄平夫妻からの虐待について・3 回目以降は鉄平からの虐待について色んな人がやる という形であった。
それが祟騙し編では、2 回目の通報を行ったのが魅音ということになっている。通報の結果、虐待がより陰湿な方向へ向かった・沙都子に対する児相の信頼度が落ちた という部分は変わってないので、あんまし影響は大きくなさそう。ただ、「魅音が通報した結果兄妹への虐待が酷くなった」と解釈するなら、詩音からの魅音に対する印象は幾らか悪くなってそうではある。ひょっとしたら綿騙しの「許せないこと」がこれを指しているのかもしれない。詩音目線からしたら、そのまま悟史の失踪に繋がるわけだし。

 

沙都子に関する描写

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

旧作と違ってハイライトがあるので幾らかマシに見えるが、ぶっちゃけそこはただの演出の違いな気がする。

とはいえ沙都子に対する描写に違和感がなかったわけではない。

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

一番の違いは嘔吐前の描写。祟殺しでは圭一に撫でられた後に彼の手を振り払い、吹き飛ばし、号泣しながら嘔吐という流れであったが、今回は撫でられる前に沙都子が勘付き、その直後に手を払っている様に見えた。これも単なるコンテの違いってだけかもしれないが、わざわざ頭の上をアップで映している為、何かしら意味があるように思えてくる。

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

その直後の圭一が吹き飛ばされる所も、やや違和感。沙都子が発症しているなら、その怪力でもっと激しくふっ飛ばされてそうだが……。 

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©2006竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会・創通

旧作祟殺しはギャグかってくらい吹き飛ばされてるが、相手が L5 だとこのくらいの方が説得力はある。

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

今回は新聞 + 字幕表示。綿騙しの時に「梨花宅の日めくりが描かれた日から周回が始まってるのでは?」という考察があったが、今回は如何に。

ひぐらしのなく頃に業 祟騙し編 其の壱 雑感 - アニメ雑感記

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

これらを踏まえるとより意味深に見えるのが、6/14 の日付描写が "なかった" こと。
6/13 に魅音と議論をした所で A パートが終わり、CM 明けには校舎が描かれ、知恵の「おはようございます」という声から B パートが始まる = CM 前後で日を跨いでいる。これまでの様な新聞 + 字幕はなく、また綿騙し 6/19 の様に他のカレンダーが描かれたというわけでもない。これがコンテミスでないなら、何か意味があると考えるのが普通だろう。ワンチャン、沙都子が鉄平を殺している可能性だってありそう(その場合翌日普通に登校した理由がわからないが)。まぁこういうこと言ってると、先行カットに鉄平が描かれてて即否定されるとかいうオチが見えるんですが。

 

 

 

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

ということで、祟騙し編 其の弐の雑感でした。

特に大きな流れの変更があったとかではなく、とにかく全体的に旧作からのカットが目立った印象でした。
これらの省略に意味があるなら、圭一の発症はかなり遠のきそうだけど、さてはて……。
前回ねーねー発言というデカい爆弾だけ残して、今回は全く出番のなかった詩音の動きも気になります。
悟史との関係性はどうなっているのか。
そして沙都子と鉄平の運命や如何に。

 

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

梨花ちゃんの意味深表情も、鬼・綿以上に多かった印象。
そろそろ一つの章のみならず、『業』全体の謎に対する描写も増えると嬉しいけども。

 

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©2020竜騎士07ひぐらしのなく頃に製作委員会

沙都子がいなくなるカケラは今までもあったが、羽入不在も合わせると、今まで以上に寂しいだろうなぁ。