アイカツフレンズ! 27 話『フルムーンの輝き』感想

27 話 Reflect Moon

©BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO

アイカツフレンズ! 27 話。

魂を分かち合った双子が、一つの満月へとなって聖なる輝きをもたらす―――……。
Reflect Moon の 2 人の、白百合姉妹の魂に刻まれた記憶が描かれ、彼女らの絆が光り輝く回。

前回の 26 話では、 "岩戸" に引きこもるさくやちゃんを引きずり出す為、かぐやちゃんが "踊って" いた。でもかぐやちゃんの "踊り" でも、さくやちゃんは "岩戸" を開けはしない。それは当然、占いの影響 = かぐやちゃんを災いから守るため なんだが、何がさくやちゃんをそこまでさせるのか。それは幼少期の、(思い出というには厳しすぎるので)一つのトラウマからくる思いだ。

27 話 さくや 幼少期のトラウマ

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大好きなかぐやちゃんが高熱で生死を彷徨うのを目の当たりにした経験、それも占いに基づき引き止めることが出来たのにしなかった自分自身の体験、それらの "傷" は深く深くさくやちゃんの心を傷つけた。だからこそ、今回こそは、という思い。もう二度と経験したくない、或いはそれ以上が起きるかもしれない可能性を排除するために、自らの夢も一緒に "岩戸" に封印する道を選んだ。そんなさくやちゃんの魂に縛られた "岩戸" を開くには、かぐやちゃんの "踊り" では足りない。だから彼女もまた、自らの心の "岩戸" を開け放って、その思いをぶつける。やっぱり「 2 人の感情のぶつけ合い」というのは "2 人" で描くことを決めた『フレンズ!』ならではの魅力だ。

27 話 かぐや告白

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かぐやちゃんの "岩戸" に秘められていたのは「シスターコンプレックス」。大好きな姉、偉大な姉、何でも出来る姉、自分と姿形が一緒の姉、自分が出来ないことが出来る姉。姉に関する複雑な思い・様々な感情が埋めく中で、ずっしりと鎮座している「かつては大嫌いだった」という記憶。凄いと思いつつも、劣等感を抱き、「大嫌い」と思っていた自分に対して、姉はつきっきりで看病をしてくれた、大きな温もりをくれた。同時に、その温もりを「二度と失いたくない」と思った。その思いは、トラウマがさくやちゃんの心にやったのと同様に、かぐやちゃんの心の中に深く深く刻み込まれた。だからこその「姉のため」。そして、さらにその奥に潜んでいた、「ずっとお姉さまの隣にいられるような存在でありたい」という夢。ずっと「姉のため」しか言ってこなかったかぐやちゃんが、ずっと胸の奥に潜めていた、初めて自分の口からいった「エゴ」だ。「姉を輝かせるため」と「姉の隣りにいたい」は、全く違う意味だと私は思う。そしてこういう「エゴ」こそが、表現者たるアイドルがステージに立つ上で最も重要なものなんじゃないだろうか。思いの対象が他者であっても別にいい、でも思いの主体は自己であって欲しいというか。

27 話 RMの岩戸

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とまれ、この「エゴ」を表に出したことで、かぐやちゃんのキャラクターに一本しっかりとした芯が通った。とはいえ彼女は片割れ月であり、その輝きは十分ではなく、"岩戸" を開けるには至らない。だからさくやちゃんの思いも必要だったのだ。"岩戸" の内と外で、かぐやちゃんの思いとさくやちゃんのトラウマが合わさることで、姉妹はようやくお互いの "岩戸" を開け放つことができ、満月になることができた。

27 話 かぐやちゃん

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姉の占いを絶対的に信じてきた妹が、姉の為に「恐れることなどありません!」というのは、ぐっと来る。

そして、今回の着陸点としての『絆 ~シンクロハーモニー~』がエピソード全体に響き渡る。

27 話 絆 ~シンクロハーモニー~

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「天地揺るがす意志」で「未来」を決めるというのは、まさしく前回と今回のかぐやちゃんだ。『藤堂ユリカ』からのゴシックの系譜を正しく受け継ぎ、そこに RM の物語を織り交ぜて、それを「フレンズ」のステージに見事昇華してみせた。
お互いにお互いの感情をぶつけ合った RM に、それが出来なかった(しなかった) PP が負けるのは必然だ。"岩戸の踊り手" であるかぐやちゃんの思いが強く描かれていたが、優勝の喜びよりも妹の無事を喜んでる辺りにさくやちゃんの思いの強さも伝わってくる。

名もなきモブ・舞台に上がることすら出来なかった敗者達の代表として、HC に「私達はチャレンジャー」と言わせていたのは、苦いながらも良い描写だった。

27 話 舞花ちゃん
27 話 エマちゃん
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敗者がいるから勝者が輝くというのは勝負事の厳然たる事実だが、その尊さを保つには勝者の輝きだけでなく足場を固める敗者達の尊厳も必要だ。ただ轢かれるだけ、潰されるだけの存在ではなく、一個の生命体として立ち上がろうとする姿あってこそだ。とはいえ、辛い役割で苦さが伴うポジションであることは変わりないので、その辺りをどう扱っていくかというのは HC のみならず作品全体にとっても重要な話だろう。少なくとも、今回かっこよく言ってのけた舞花ちゃんとエマちゃんの描写は、私は大好きだ。

そして最後の最後にデカイ一発。正直「言葉キツすぎね!?」と思わなくもないのだが、「フレンズ」の大切さ・尊さを誰よりも知っている LMT だからこそなのだろう。

27 話 LMTとみおちゃん

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彼女らの言葉(或いは 15 話のたまきさんの言葉)を踏まえれば、今回の PP がフレンズとして破綻していたのは明白なわけだし。てか改めて台詞を聴いてると、「アイカツゾーン」をそのものはぶっちゃけそこまで重視してないんだよな、この時の 2 人。お冠なのは、みおちゃんがあいねちゃんを信じきれなかったところだ。嘗て「あいねの可能性を信じている」とみおちゃん自身が言ってたことを思い出すと、悲しい。

全体のお話の折返しを迎え、起承転結でいえば承と転・序破急でいえば序と破の間に位置するような今回の話。「アイドルとしての欠陥」とかいっちゃってごめんなさい、かぐやちゃん。RM の 2 人それぞれの思いと、絆の強さがしっかりと描かれたエピソードでした。これから『フレンズ!』が、Pure Palette がどんな道を歩んでいくのか、楽しみです。